沖縄離島探訪【3】(2006/11/20)
石垣への空路:
宮古島から石垣島へ向かう航路は便によってプロペラ機かジェット機のいずれかで運行される。自分はまだプロペラ機に乗ったことがないので、あえてプロペラ機で運行される便を選んだ。
チェックインの際に渡されたチケットは磁気テープがないものだった。磁気テープがないので手続きはすべて手作業。何ともアナログだがこうした小道具(小道具じゃないな)が離島を旅している雰囲気を倍増させてくれる。何時までこのような光景を見ることが出来るのだろうか。
飛行機への搭乗はエプロンから行うということで、駐機している飛行機のすぐ近くまで地面を歩いていく。これまた珍しい。
この飛行機が我々を石垣に運んでくれる飛行機だ。流石に小ぢんまりとしている。
機体の位置がそれほど高くないので、こんなかわいらしいタラップで搭乗する。
乗り込むと機内は2席の座席が両側に並び、真ん中に通路と言うレイアウト。自分は窓側の席に座らせてもらったのだが、壁が機体の曲面に合わせて強くカーブしていて足元が少し窮屈な感じだった。
着席したら程なく離陸時刻となり、滑走路へ移動したあとプロペラが回転の速度を上げた。なかなか盛大な音である。
回転が安定したらいよいよテイクオフだが、ジェット機のように座席に押し付けられるような急加速でもなく、ゆるゆると加速してほどほどの速度で離陸。飛行機に乗るのが怖いという人でも、もしかしたらこれならそんなに怖くないかもな、と思った。
写真のとおり自分の席は主翼の近くだった。だがプロペラ機の主翼は屋根上に固定されているので、窓からの景色は下方を遮るものがなく見晴らしがよかった。
そして目の前でぶんぶん回るプロペラを眺めているのもなんか面白かった。
離陸して数分後、伊良部島・下地島の上空を通過。
既に外は日が落ちて夕闇迫る時間帯だったので、目視は出来るものの写真は上手に写せなかった。何度か試行錯誤して比較的まともに撮影できたのが上の写真だ。
右側が伊良部島、左側が下地島で、下地島にはジャンボ機がタッチアンドゴーの練習をする下地島空港が見える。
そして両島が向かい合っている部分に小刻みに蛇行しつつ島を隔てる海峡の様子が良く見える。伊良部も下地も対面している部分の陸地の長さがほとんど同じである。中央の水路がなければひとつの島だったとしても全く違和感のない海岸線の形状をしている。
特段の高低差があるわけでもなく、ここに海峡が形作らなければならない理由が全く思い浮かばないが、どうしてこうなったのであろう。
そんな伊良部・下地島を通過すると、この先石垣島までの間に多良間島や水納島があるということなのだが、その頃には完全に闇夜となってしまいそれらの島の姿は目視できなかった。
なんとものどかで優雅なプロペラ機の旅だが、宮古から石垣までの間はわずか35分のフライトである。安定飛行に切り替わったと思ったらほどなく降下開始、あっという間の空の旅だった。
あっという間と言えば、大東諸島の北大東島と南大東島を結ぶ空路はわずか10分のフライトだそうだ。10分で離陸から着陸までを行うフライトがどのようなものなのかとても興味がある。だが、大東諸島は沖縄本島からかなり離れたところにあるので気軽に行けないのが悩み。いずれにしても死ぬまでに一度は訪問してみたい島のひとつだ。
(この空路は残念ながら2024年に廃止となったため、体験は叶わぬ望みとなった)
石垣島の夜(ぐるくん亭):
さてそんな訳で石垣空港に着陸し、石垣島に初上陸を果たした。島旅37番目の島となった。
石垣島は沖縄本島から南西に400キロ余りの位置にあり、あらゆる面で八重山諸島の中心となっている島だ。所属する自治体は石垣市で、石垣島一島で構成されている。なお周辺には多くの離島が散在しており、これらは全て竹富町に属している。ただ、離島の集合体なのでどこに役場を置いても不便ということで、町役場は石垣島に設置されている。
空港から外に出ようとしたら丁度夕立に見舞われた。なかなかの土砂降りで外に出るに出られない。
まぁ、夕立なのだからそのうち止むだろう、と雨宿りしていたら15分ほどで上がったので宿に移動。
石垣島で手配したのはハイパーホテル石垣島というビジネスホテル(2024年現在はアパホテルに変わっている)。1泊朝食付きで一室6000円と格安。ネットの評判では新しくて綺麗と言うことだったので選んだホテルだ。
石垣市街の中心地にほど近い所にあり、明日西表島へ渡る際に乗船するフェリーのターミナルが目の前、と言う便利な場所に位置している。前評判どおり建物も新しく室内も清潔。ウチらの場合ホテルは寝るためだけの場所なのでこれで充分。
カミさんが出発前に西表島行くならトレッキングとかカヌーとか、自然を満喫するアクティビティをやってみたいと言っていた。
旅行前に購入したガイドブックを見るとそうしたツアーを催行している業者が数社掲載されていて、そのツアーの内容も書かれていたが、それによると西表島でのそうしたツアーは大きく2パターンのコースとなっているようだ。
ひとつが仲間川という川を船で遡ってマリュドゥの滝を見に行くもの、もうひとつがピナイサーラの滝を中心としてカヌーやトレッキングをやるもの。
仲間川の方が起伏が少なく散策しやすいのでツアーとしては人気があるようだが、ウチらはどうせ行くなら思いっきり秘境を堪能したいと考えた。そうなるとピナイサーラの滝を巡るツアーになるのだが、ガイドブックやネットに出ているツアーは自分らが島へ訪問する時間に余り合わず、どうしようかと思っているうちに時間切れになってしまい、結局申し込みをしないまま出発してきてしまった。
これで現地手配ができないとなったら、西表島に行って何をするつもりなのか?と言う話になるのだが、空港で貰ったタウン誌をパラパラとめくっていたら自分らの行程に丁度良い内容のツアーをやっている業者が載っていた。
チェックイン後にその業者に連絡してみたところ無事予約することが出来た。これで明日、西表島の秘境を堪能することが出来る。といっても自分は今までそういうアクティビティには手を出したことがなかったのでどうなることか。ワクワクするような不安なような。。。
それから夕食を食べに出かけた。ホテルのフロントにおススメの店を聞いてみたら、近所のぐるくん亭という店を紹介してもらうことが出来たのでそこへ行ってみることに。
店はフェリーターミナルに面した場所にあった。席についてメニューを眺めたら、東京では聞いたことがない名前の料理が沢山書かれている。
そのどれを頼んでも今まで食べたことの無いものが出てくるのだと思うと、全部食べてみたくなるが胃袋のキャパがそれを許さない。すべてが一期一会なので、何を選ぶかカミさんと2人大いに迷った。。。
悩んだ末にいくつかの料理を注文。暫くして次々料理が運ばれてきた。
最初に出てきたのがクブシミの炒め物。クブシミとは何か?と思ったらイカだった。身が肉厚で食べ応えがあったが、味付けがしっかりしていたせいか、クブシミそのものの味がどういうものなのかまではよく分からなかった。
帰宅後で調べてみたら、本土ではもっぱらコブシメと呼ばれるそうだ。丸々とした体つきが特徴のイカで、割と高値で取引されているらしい。
次に出てきたのがイカスミチャーハン。イカが連チャンしてしまった。流石にこれは知っている。ご当地ならではの料理ではないが今まで食べたことがなかったので注文してみた次第。
見事なまでに真っ黒である。イカスミって本当に黒いんだなぁと感心してしまった。わずかにワタの生臭さを感じたが、コクがあって見た目の尖り具合の割には普通においしかった。というかこの味はクセになりそうだ。
で、その次が沖縄に来たらとりあえず押さえておきたいミミガーの炒め物。
ミミガーとは豚の耳の事。ド定番なので説明は不要と思うが、コリコリした食感がいい酒のアテになりそうな料理だった。
量が少ないのは写真を撮るのを忘れたままうっかり食べ始めてしまったためだ。
さぁお次は。。。見ただけでこれが何であるか分かったら相当な食通だと思う。
正解はカメ刺し。ピンときませんか?
カメとはウミガメのことである。それの刺身だ。これぞまさしくここでしか食べられないものだろう。メニューを見た瞬間注文することを決めた。
刺身の部分に寄って撮ってみた。赤身が強めの肉はハマチあたりの刺身のようにも見えるし、クジラベーコンのような物にも見えなくもないが、肉の質感は少なくとも魚のそれではない。今まで目にしたことがないテクスチャだと感じた。
そもそも爬虫類の肉なんて日常生活でまず口にすることがないのはもちろん、お目にかかることすらほとんどない。ましてウミガメである。昔ウミガメを食べたことがあると言う知り合いがいるので、食べられる肉であることは承知しているが、それでも本当に食べちゃっていいのだろうか、という疑惑は解消されない。
その知り合いによるとカメ肉は臭くて食えたもんじゃない、と言う話だった。興味本位で注文してしまったが、もしマズかったらどうしよう。食いしん坊万歳!で微妙な料理が出た時の、「ん-、何とも言えない味ですねェ」というセリフを自分が口にする日がついに来るのか。
貴重なウミガメの命を頂いておいて、それを残すなんて許されない事のような気がするだけに余計にプレッシャーである。
まぁ、、、とりあえず食べてみよう。肉は半解凍状態で箸でつまんだらシャリっとした手ごたえを感じた。薬味はネギ、しょうが、紅葉おろしなど香りが強めのものが並んでいる。やはり臭み消しだろうか。
適宜薬味を絡めて食べてみると・・・、想像よりは臭みがない。歯ごたえは鶏肉に近い感じか。思ったよりは全然普通に食べられる肉だと思った。ただし強めの薬味と半解凍状態によって臭みが抑えられているせいかもしれない。
オススメとまでは言えないが出されたら安心して食べてみてほしい、とは言える。
最後に追加でオーダーしたのはグルクンのてんぷらのおにぎり。ぐるくん亭に来たのだからグルクンは食べておかないと、と言うことで頼んでみた。てんぷらにされたグルクンはしっかり火が通っていて骨ごとバリバリと食べられた。
なんか沖縄グルメと言って想像するソーキそばとか島豆腐といった料理とはかけ離れた所からのアプローチとなったが、こういったものが美味しく食べられるなんて沖縄グルメの世界は奥が深い。アタリの店でよかった。
食事を済ませて店を出たら夜も更けていい時間なっていて、メインストリートの店は多くがシャッターを下ろしていた。そんな商店街を腹ごなしがてらあてどなくブラブラと歩いていたら、まだ開いている雑貨屋を見つけた。
どんなものを売っているのだろうかと店内をブラついたら、カミさんが帽子売り場で帽子を品定めし始めた。旅行中にかぶる帽子を忘れてしまったらしい。いいのがあったら買おうかなと言うので、一頻りあーでもないこーでもないと言いながら試着。
普段だとそう言いながら結局買わずに済ませることが多いカミさんだが、今回は気に入った帽子があったらしくひとつ購入することになった。
後はホテルに戻って旅行初日が終了。なんか忙しかったな。