沖縄離島探訪【5】(2006/11/21)
ピナイサーラの滝上部:
ピナイサーラの滝のてっぺんまで登るための山道はどこまで行っても急な登り道で、ちょっとずつ息を整えながら登っていくとやがて平坦なところに出た。
平坦になった場所から小川が流れているのが見えた。この川はヒナイ川というそうだ。ささやかな小川で水に足を浸しても膝くらいの水深しかない。だが下流方向に進んでいけば程なくあのピナイサーラの滝となって一気に50m下まで落下する運命である。
到着したらそこで小休止の時間となった。ガイド氏からギリギリのところまで行ってみるとスリルありますよ、なんて唆されて物は試しに見に行ってみた。
崖に手すりなんてないので行き過ぎると奈落の底だ。恐る恐るその先端部へと近づく。
注意一秒即座死亡である場所なので、和歌山の三段壁よりも強い恐怖を感じた。ここでうっかり突風なんかが吹いたら真っ逆さまだと思うと、安全が確保できる場所以上へはなかなか足が進まない。
出来るだけギリギリまで前に出て両手だけ伸ばして撮影したのが上の写真。腰が引けて滝下がほとんど見えてないが、これ以上は自分には無理。見たい人は各自お試しいただきたい。
前方に視線を向けると麓は密林に覆われていた。原始時代の日本はこんな風景だったのだろうかと思いながらその光景を眺めた。
その中を一筋流れている川はさっきカヌーで遡ってきた川だ。
八重山そばで昼食:
スリルと絶景を堪能し安全な場所まで引き返してホッと一息。ふとガイド氏を見ると川岸の岩場で何やらごそごそやっている。
聞くとここで昼食がいただけるらしい。昼食付きのツアーだと思わなかったのでなんか嬉しかった。
こんな景色のよい所で昼休憩なんて、美味いことプラン組んでますなぁ。
食事が出来上がるまでの間、我々は景色を眺めたり川の水に足を付けてひと時の涼を楽しんだりして過ごした。
暫くしたら出来上がったと声がかかったので、一旦集合。
メニューは赤米のおにぎりとソーキそば。こんなところでソーキそばを食べられるとは思わなかった。しかも写真のとおり簡易的な道具で拵えたものとは思えないほど本格的なものだ。
カヌーと山登りの疲れが調味料、そして絶景がスパイスである。こんなにうまい沖縄そばは食べたことがないと思った。
今まで沖縄そばはあまり好きじゃない、と言っていたカミさんまでもが美味い美味いと唸りながらほおばっている。
ガイド氏に感想を述べると同時にその話しをしたら、実はこの美味さは疲れや絶景によるものだけではなく、ちゃんとした理由があるのだそうだ。
沖縄そばと言われている物には大きく2種類あって、今回作ってもらったものは八重山そばという種類であるとのこと。その名のとおり石垣や宮古の辺りで好まれているもので、そばにかんすいが使われているところが本島辺りで食べられている沖縄そばとは異なっているのだとか。
確かに改めて見てみると麺が黄色みがかっていてもっちりしている。かんすいを入れることによりラーメンに近い歯ごたえ、風味となり本土の人も食べやすい味になるという。言われてみれば。
ちなみに八重山の人たちの間でも好みが分かれるらしく、地元のスーパーに行くと大抵両方置かれているそうだ。
ちなみに赤米のおにぎりもまた物珍しいものだ。だが、八重山そばのうまさに霞んでしまったのが残念なところ。でも美味しかったです。
空腹に染み渡る麺とつゆ、なんて美味いんだ。あっという間に胃袋に納まってしまった。
ピナイサーラの滝つぼ:
その後食後の一服を済ませたらぼちぼち休憩終了となり、再び登ってきた道を下った。後は来た道を戻ればおしまいなのかと思ったら、麓まで降りた後、上陸地点をそのまま通り過ぎて先に続く道の方へと進んでいった。
今度はどこへ行くの?と思ったら、ピナイサーラの滝の滝つぼへ案内してもらえるそうだ。おお、それはそれで見てみたい。
だが、滝つぼの場所は実はここから少し登ったところにある。なのでまた登り道。。。
歩いて行くうちに滝の音が聞こえてくるようになった。最初のうちは音が聞こえるだけだったが、やがて視界の先に滝が見えてくるようになり、もう一頻り歩いたら滝つぼに到着。
間近に見るピナイサーラの滝は物凄い迫力があった。50mもの高さから一筋の水流になって落ちる滝は沖縄では珍しいらしい。
さっきはあの上ギリギリのところからこちらの方を覗いていたのだ。腰が引ける気持ち、わかるでしょ?
滝を見上げてほー、とかへぇ、とか言って感心していたら、ガイド氏がここはマイナスイオンにあふれているので、ゆっくり休憩しながらおやつでも食べましょう、と言って再びリュックから調理器具を取り出した。おやつまで付いているのか。なんと至れり尽くせりなツアーだ。
その間、再び滝を見上げて歓心の声を上げたり、滝の真正面にある岩の上で記念撮影をしたりしていたら、できあがりの声がかかった。
おやつはクバ餅とコーヒーだった。ほんの30分くらい前にご飯を食べたばかりなので、おやつと言うよりは食後のデザートと言った風情だったが、これもまた絶景と一緒にいただくのは絶品だった。
おやつが終わったらあとは事務所まで戻ってツアーは終了となった。いやはや、なんとも興奮したアクティビティだった。機会があったらもう一度来たいところだが、次はマリュドゥの滝も見に行ってみたい気もする。悩む所だw
民宿まるま荘:
我々の今晩の宿泊先となる宿は、ネットで調べて評判のよかったまるま荘という民宿だ。宿まではかざぐるまのスタッフに送って貰った。
チェックインをした後に通された部屋は4畳半の和室だった。民宿だけあって部屋の中は民家のそれだった。部屋の入口が引き戸なのでカギはかけられないし、風呂やトイレは共同。民宿なのだからこんなものだろう。広さについては寝るだけだから特段の不満はないが、部屋の中が微妙に汗臭かった。それだけが残念。
さて、西表島に着いて半日が経とうとしているが島の滞在は明日の朝までだ。流石にちょっと慌ただしいな。。。
残りの時間でやりたいことがいくつかあるのだが、それよりまず最初に明日の船のことを考えなければならない。
前回、上原への航路は外海を通るため波で欠航しやすいと書いた。それはつまり明日の便もそうなる可能性があるということだ。我々は石垣に戻った後すぐに空港へ移動して与那国に向けて飛び立つ算段になっている。なのでもし欠航となったら急遽大原まで行ってそちらの便に飛び乗らなければならない。だが上原から大原までは車で軽く1時間はかかるらしい。
となると、上原からの便の欠航を確認してから大原に向かったのでは与那国行きの飛行機に間に合わない。なのでどうするのがベストの選択となるのか部屋の中でしばし考えた。天気予報では明日は曇り一時雨と言う予報が出ている。今も少し風が吹いているので欠航となる可能性は半々くらいか。だとしたら一番確実なのは最初から大原へ行くことだ。
と言うことで、明日は大原からの船に乗ることにした。大原からの便で飛行機に間に合うのは8:55発になるようだ。逆算すると7時半には宿を出発しなけばならない。
そうなると朝食をとる時間はあるのだろうか。宿の女将に確認すると7時半からとのことだった。間に合わないじゃん。。。仕方ない、朝食は諦めるか。
女将にそういう事情なので朝食は不要である旨を伝えたところ、それなら7時くらいに出しますよ。と申し出てくれた。なんて有難い。
わがまま言ってすみません、とお詫びしてお願いすることにした。
舟浮集落に行ってみたいが。。。:
明日朝の段取りが無事まとまり、時計を見たら15時半だった。もう日が傾き始めている。。。
当初の計画では、このあと時間見合いで舟浮集落という所を訪ねてみたいと思っていた。舟浮集落は西表島の北西に位置する人口50人ほどの小集落なのだが、この集落へと続く道がないのだ。集落への交通手段が船しかないという、現代日本にあって非常に珍しい集落なのである。かつてはその先にも網取(あんとぅる)、崎山(さきゃん)、南岸沿いの鹿川と言った船でしか通えない集落があったのだが、今ではいずれも廃村となっており、この舟浮が唯一残っている集落だそうだ。
余談になるが、30年ほど前にこの集落で久々に生まれた子供が初節句を迎えたということで、新聞の記事になったことがある。その時の子供が現在沖縄を中心に音楽活動をされている池田卓氏である。この人、情感のこもったいい歌を歌うんだよなぁ。
舟浮集落は定期船が通じていないので部外者は集落を案内してくれるツアーを利用することになる。そのツアーは上原集落の中を通っている県道をどん詰まりまで進んだところにある白浜と言う集落から出ているのだが、そこへ行くためには車が必要になる。バスなどもないのでレンタカーでも借りるしかないのだが、今から車を借りたとして急いで行ってもそのツアーの時間には間に合わなさそうだった。
結局舟浮集落への訪問は見送らざるをえなかった。
レンタカーの手配:
舟浮へ行かないとなれば逆に時間が余る。上原集落の周辺にはこれと言った見どころがなさそうだった。散歩しても良いがどうせなら少し車で近隣のドライブでもするか。という訳で車を借りることにした。
女将さんに近隣のレンタカー屋を訪ねたところ、ここから徒歩5分くらいの所にある店を紹介してもらった。早速店に出向いて話を伺ったのだが、返車時間の話になってはたと困ってしまった。店は9時開店18時閉店となっており、時間外の返却は不可とのこと。料金は半日単位なのだが、明日の船の時間を考えると今日の閉店までに返却せざるを得ず、3時間程度しか借りられないことになる。それだとちょっともったいない。借りるかどうかの回答を保留にして一旦宿に戻った。
女将に他の店がないか聞いてみたらもう一軒教えてくれた。ただしそこはここから少し離れているらしい。とりあえず電話で条件を確認したら、その店は大原にも営業所があって乗り捨てが可能であるうえ、開店が8時なので大原からのフェリーに乗るための移動手段としても使えることが判明した。もちろん今晩の散策に利用しても良い。
ということで圧倒的に使い勝手の良いそのレンタカー屋で借りることにした。電話口の人は今から迎えに行きます、と言っていたので待機。とりあえず宿の前にある広い庭に出てみた。芝生が敷かれて向こうには海が見える絶好のロケーション。しかも木にハンモックが架けられたりしていて、否応なくリゾート気分を盛り上げてくれる。こんな慌ただしい滞在じゃなくて、島で3日間くらい過ごしてみたかったなと思った。
ハンモックなんてテレビか映画かアウトドア用品店でしか見たことがない。折角なので物は試し寝っ転がってみることにしたのだが、腰が一番沈み込むので体がくの字になってしまい全然寝心地が良くない。体の乗せ方が悪いのか何なのか知らないが、こんなので昼寝したら悪夢にうなされそうだ。
もういいや、と思ってハンモックから降りようと思ったらそれも上手く行かない。足を網のサイドから外に投げ出しても地面に付かないので、どこに体重をかけて起き上がればいいのかが全然わからず暫くもがいてしまった。もう使わない。
ハンモックに四苦八苦していたらレンタカー屋の名前が書かれたマイクロバスが敷地に入ってきた。自分が連絡者であることを告げて事務所まで送り届けてもらう。
手続きを済ませて暫くすると声がかかったので外に出てみたら、そこにあったのはパジェロミニ。こんなに島の雰囲気にピッタリな車を出してくるか。実際レンタカーとしてはかなり珍しい車種である。お店の方、分かってらっしゃる。
そんな訳でようやくレンタカーの手配が出来たのだが、宿に戻ったら既に16時半だった。手配に手間取りすぎた。もうあと1時間くらいで夕食の時間である。そう考えるともうどこかへ出かける時間がない。なんだか何をしているのかよく分からなくなってきた。。。とりあえず夕方までの散策は諦めて夕食の時間までゆっくりすることに。
とはいえ折角車を借りたのだから使いたい。島の中をドライブしたい。しばし思案していたら西表島温泉のことを思い出した。
確か結構遅い時間までやっていた筈なので、夕食を済ませた後、夜のドライブを兼ねて西表島温泉まで行ってみることにした。
晩御飯の時間になったと女将から声がかかったので食堂へ移動。
これがまるま荘の夕食である。八重山そばをメインに魚の素揚げやチャンプルーなどが並ぶ、民宿らしいシンプルなメニュー。見た目の派手さはないが一品一品の味付け絶妙で2人とも大絶賛の夕食だった。
西表島温泉:
食後、少し腹が落ち着くのを待ってから温泉に向けて出発。西表島のナイトドライブはどんな感じだろう?
宿を出て数百mばかりの集落を抜けると、その先は道に街灯すらない県道が続いていた。ヘッドライトを点灯しないと真っ暗闇である。街灯のない道の運転は久々なので、パジェロミニで移動しているということも相まって冒険心を掻き立てられまくった。
そんな道を進んで暫く行った辺りでカニが道を横切るようになった。踏んだらかわいそうなので、最初のうちは踏まないよう避けながら進んでいたのだが、程なく道路を覆い尽くさんばかりの大量のカニが道を埋め尽くしていた。これは無理ゲー。
前に別の車に踏まれてしまったカニがそこかしこで力尽きている。できるだけ踏まないように気を使ったが、それでも自分も何匹かに引導を渡す羽目になってしまった。
西表島といえばイリオモテヤマネコである。言わずと知れた天然記念物。天然記念物になるくらいの生き物だから容易に見られるとは思っていなかったが、案の定全くその姿を見かけることはなかった。
道がそんな状態なので優雅に流すことも出来ず、ハンドルを右に左に回しながらカニを避けて進むドライブとなってしまい、勢い速度も乗らない。結局温泉まで1時間弱かかってしまった。もし明日の朝も道がこんな状態だったら船に間に合わなくなるかもしれない。その時は心を鬼にして進むしかないだろうか。
西表島温泉は島で唯一の温泉施設である。入浴料金は1200円、日帰り温泉の値段としてはやや割高だがここは日本最南西端の温泉である。是が非でも入っておきたいところ。迷わず料金を支払った。
ちなみにこの温泉は露天風呂が混浴になっている。流石に水着着用だが運が良ければ目の保養になるかもしれない。内湯は男女別で一旦男湯と女湯に分かれるため、とりあえずカミさんには適当なタイミングで水着を着て出ておいで、と伝えてそれぞれの浴室に移動。
内湯はいくつかの湯舟があるのだがこちらは水着は脱ぐ必要がある。入っておきたい気もしたが一旦体を濡らすと海パンを履く時に苦労しそうだったので内湯はスルーした。
脱衣所で海パンを履いたあと、内湯を素通りして奥にあるもう一つの扉から外に出る。外は広い庭園のようになっていて、プールと露天風呂が点在していた。露天風呂としては大きな湯舟がひとつと、その周辺に2,3人くらいで入れそうな湯舟が点々と置かれているレイアウト。
カミさんの姿を探すが見当たらなかったので、内湯にでも入っているのだろうとその辺の空いている湯舟に浸かった。
・・・なんだかぬるい。39℃くらいだろうか。沖縄では元々湯船につかる習慣があまりないため、熱めのお湯は好まれないらしい。まぁ、あちこち巡ったら温まるかな。
湯船に浸かりながらカミさんの姿を探しつつ周りを見回わす。残念ながらいるのは殆ど家族連れだった。西表島はそもそもリゾート地ではないから、そう言う趣向で訪れる人が少ないのかもしれない。
やがてカミさんが露天風呂エリアに出てきて合流。それから一頻り日本最南西端の温泉を楽しませてもらった。1時間ほど他愛もない会話をしつつのんびりしたが、いい加減のぼせてきたので終了。休憩所で少しのんびりしてから宿への帰路に就いた。
(註:2024年現在、西表島温泉は閉館してしまったとのこと)
相変わらずそこいらじゅうにカニがウロチョロしている。難儀なものだ。。。と、道の片隅に何か大きな影が見えた。
ウミガメかなんかが迷い込んでいるのだろうか、と思いつつ車を寄せたら、
ヤシガニだった!ヤシガニは食べると絶品だと聞く。市場でもかなりの高値で取引されている生き物なので、きっと希少なのだろうと思っていただけにこの遭遇はちょっと嬉しかった。
なんなら捕まえて宿に持って帰って調理してもらおうか、とすら思ったが、この時間に女将を働かすわけにもいかないし、何より生け捕りにするための道具が何もない。ヤシガニのハサミはかなり強力で、本気を出したら人間の指くらいなら軽く折るほどだというのだから迂闊に触れない。
ということなので写真を撮るだけにしておいた。でもいいものが見れた。
更に真っ暗な道路を進んでいくと目の前を何かが素早く横切った。慌てて車を停めてその生き物が突っ込んでいった藪の方を見たらネズミっぽいシルエットの生き物の姿が一瞬見えた。だがネズミにしては妙にデカ過ぎる。30cmくらいはあっただろうか。もしかしてヤマネコ!?と車内が騒然となったが、横切りる時の走り方がウサギのようなピョンコピョンコとしていたので猫っぽくない。
かといって島にウサギがいるという話は聞かないし、ましてデカいネズミだとなれば既にちょっとした名物になっているはずだ。そう考えるとどちらでもないのか。。。
あの生き物は何だったのだろうか?
前述のとおり西表島温泉の辺りから上原の集落までの間は集落が全くない。真っ暗な道をヘッドライトだけを頼りに進んでいくので景色に抑揚がなくだんだん眠くなってくる。風呂上がりで体が温まっているのもそれに輪をかける。
それは自分だけではない。隣のカミさんはデカいネズミに興奮したかと思ったらもう居眠りをこいている。それを見ていると自分まで眠くなってくる。でもこんなところで力尽きる訳には行かない。お布団でゆっくり寝たい。
必死にあれこれ眠気冷ましをしながら車を走らせたが、集落に入ったらもうすぐだという安心感で気が緩んだのか一瞬落ちてしまった。
次の瞬間目の前にはカーブ。慌ててハンドルを切って事なきを得たがちょっと焦った。すれ違う車も一切ないような場所だったからよかった。
宿に戻ったのは22時過ぎだった。明日のことを考えるとぼちぼち就寝の時間である。
カミさんと布団の上でごろ寝しながら暫し旅の思い出を整理。隣の部屋から3,4人くらいのおじさんが談笑している声が聞こえてくる。
この民宿は工事関係者なども利用しているのだろう。
まぁ、そういう賑やかさも民宿の醍醐味。