沖縄離島探訪【13】(2006/11/24)

はての浜:


オーハ島でのおばあとのゆんたくは全く想定外だった。島を離れた後も暫くのあいだ、さっきの出来事は夢だったのではないかという浮ついたような気分が続いた。だが、これから向かうはての浜のことも忘れてはいけない。主従逆転したような感じがしなくもないが、オーハ島は本来おまけの位置づけである。メインディッシュはこれから。


クルーザーはオーハ島とはての浜の間の海をまっすぐ進んでいく。視界の先には白い砂浜だけが海から盛り上がったような陸地が見えている。
手前にはメーヌ浜、ナカノ浜も見えているが、目的地はあくまではての浜。
砂浜だけの島に船着き場なんて無粋なものはない。全てが自然のままである。砂浜に船の先端を付けてそこから飛び移るようにして上陸。

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この当時はパノラマ写真を撮るという概念がなかったので一部分しか切り取れていないが、これが果ての浜である。凄い景色だろ。
島は貸し切りかと思うほど閑散としていた。そんなはての浜が自分の島旅42番目の島となった。

見渡す限り白い砂浜が広がっているのみで、海の家もなければ植物すらもない。だがここもオンシーズンになれば大層な賑わいを見せるらしい。この砂浜が湘南海岸顔負けの海水浴客で埋まっている写真を見たことがあるが、砂の地面が見えなくなるほどの芋洗い場の様相を呈していた。そんなタイミングでは絶対に上陸したくない。

でもシーズンオフともなればこんなものだ。ここでの唯一の楽しみを封じられているのだからそれも仕方なかろう。
とはいえこれだけ閑散としたはての浜と言うのもまた珍しい光景だと思う。惜しむらくは空模様、薄曇りなので空に抜けるような青さがない。写真も何とも言えないコントラストになっている。まぁ雨が降っていないだけマシではあるのだが。

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久米島の方へと目を向けると、ナカノ浜が見えた。

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オーハ島のイベントも現実感のないものだったが、この景色もまた現実感がない。ここは本当に日本か。
こうして文章を書いていてもあの日の出来事は夢だったのではないか、と言う思いが度々湧き上がってくる。


透明度の高い海:


あちこちキョロキョロ見回して物珍しい光景をカメラに収めた。その脇で一刻も早く海に入りたいカミさんがさっさと着替えを始めた。
久米島を出発する時は登山ルックだったが、あれでも一応海に入れるように中は水着着用で来ている。

着替えたはいいが水温はどうだろうか。地元の人が無理じゃないかなぁと言っているくらいだからあまり期待はできない。
とはいえ今日は半袖でも汗ばむくらいの陽気だからギリギリで入れそうな気もする。

足を入れてみた感じはちょっとした冷たさを感じたが、海ってこんなもんかなと思うくらいのもので、入って入れないこともなさそうだ。この辺りはリーフの内側で水深が浅いので水温がその分上がっているのかもしれない。じゃあ入ってみようか、と言うことでまずは準備体操を念入りに。

自分は埼玉と言う海なし県で育った人間なのでこれまで海で遊んだことが殆どない。それでも何年かに一度くらい家族で海に行ったことがないでもないが、それとてもう15年以上前の話である。なので海はあまり得意ではない。

一気に入ったら冷たさで死んでしまいそうなので、水をかけながら体を慣らして静々と体を沈めていくと案外何とか入ることが出来た。入れないものだとばかり思っていた海に入ることが出来てよかった。これでカミさんも今回の旅行を良い思い出にすることが出来るだろう。


カミさんはスノーケルと水中メガネのいでたちで早速海の中を覗きながらその辺を泳いで回っていた。

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自分は地面に足が付く範囲限定。泳げない訳ではないのだが久々すぎて足のつかないところまで行くのはちょっと不安だった。
しかし恐るべき透明度だ。顔をつけると何十mか先の方までくっきり見えている。こんな透明度の高い海初めてだ。地味に感動。
浦島太郎が見た竜宮城はこうしたものだったか、と思うほどあちこちに魚が泳いでいる。

西表島でも使った水中対応の使い捨てカメラを持ってきたので何枚か撮影してみた。

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水中で好き好きに泳ぎ回っている魚を体のバランスを維持しながら撮影するのはかなり難しいものだと知った。しかもデジカメではないので、写真の出来栄えは現像してみないと分からない。

そうして現像して出来上がって来たのが上の写真だが、他に撮影した写真は見れたものじゃなかった。


気が付いたら沖の方に流されてた、なんてことにならないよう時々顔を上げて現在地を確認する。
水中に慣れてくると寒さは全く感じなかくなったが、体を起こしたら外気が冷たく感じた。小学校のプールの時も思ったが、なぜ外気の方が高いのに寒く感じるのだろう。

周りを見ると10mほど離れたところでカミさんもぷかぷか浮かんでいた。海に入るまでシュノーケリングで沖の方まで行って魚を見たいと息巻いていたのだが、自分はカミさんがどれほど泳ぎがうまいのかは知らないので、思わずやめときなよ、と口にしてしまった。
それを聞いてなんか不服そうな顔をしていたので、ガン無視で沖合の方に行ってしまうのではないかと思ったが、陸のすぐ近くでも透明度があって魚が沢山泳いでいるせいか、沖に行かなくても満足できたようだ。


休憩時間:


1時間ほど浮遊して一旦陸に上がった。ぼちぼち腹も減ったので昼食にしよう。

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ちょっと手を付けた後に撮ったものなので見栄えが悪いが、出された弁当はおかずがたっぷり入ってボリューム満点だった。
しかも野菜系が多めなので海でお腹を冷やして痛くする心配も少ない。よく考えられている。


インプットしたら次はアウトプット。これまたビロウでごめんなさい。ちょっとトイレに行きたくなった。さっき島には海の家もないと書いたがトイレはある、ただし仮設トイレ。お世辞にも快適とは言い難かったが、なきゃないで困るものだ。

そしてアウトプットが済んだらリラックスタイム。食後の一服である。カバンから煙草を取り出す。だがライターが見当たらない。どこ行った?
久米島を出港する前に一服してるので持ってきてはいる筈なんだけど、どっかで落としたか?・・・とそこまで思いをめぐらした時にハッとした。恐る恐る海パンのポケットを探ると。。。あった。びしょびしょに濡れたやつが。。。

海に入っていた1時間そこそこの間でもう金属部分にサビが浮き始めていた。なるほど海岸沿いの設備がどんどんサビる訳だ。

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食後の一服は喫煙におけるもっとも美味いタバコの時間だ。がっつり水没したライターなど着火しないだろうな。と思いつつ悪あがき。もちろんダメだった。それでも往生際悪く何回もカチカチやっていたら、後ろで見ていたカミさんから呆れた顔で諦めなさい、とたしなめられた。ぐうの音も出ない。


島内散策:


食事の後は船が迎えに来る時間まで島の中を散策してみることにした。と言っても砂場しかない訳だが。

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とはいえ全く変化がない訳ではない。島の南岸側にはビーチロックが形成されていた。白い砂浜ばかりと思っていただけに意外。

こうしたビーチロックがやがてこの砂が吹きだまっているだけの砂嘴を島へと成長させていくのだろう。何万年と言うスパンで考えたら、はての浜もやがて宮古島のように隆起サンゴの島になっていくのだろうか。

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散策と言っても、この島は東西1.5キロほどあるので端から端まで歩き回るような時間はない。あっても見渡す限り砂浜なのでどこまで行っても見えるものは一緒の筈。なのでちょっとビーチロックを見学したらもうおしまい。ただ船の時間までもうちょっとあったので、戻り道でビーチロックの隙間に転がる貝殻を集めた。きれいな貝殻も沢山落ちているが、ものによっては中からヤドカリが顔を出すので、そう言うのはリリース。貝殻を手にして暫く様子を見て住民が出て来なかった物だけを収集。


散策から戻ってきたら丁度帰りの船が迎えに来たところだった。もうお時間ですか。
もう少しのんびりできたらよかったが、オーハ島にも立ち寄っているのでこちらの滞在時間が少なくなってしまうのは致し方ない所。
荷物をまとめて船に乗りこむ。行きの時に一緒に乗っていたカップルの姿はなく、帰りは適度にばらけるようだ。

船は行きとは違いグラスボードが迎えに来ていた。途中ウミガメを探しながら戻るそうだ。やめてー。。。
グラスボートは船底部分がガラス張りになっている船だ。ガラス張りなので海の中の様子が良く見える。が、ウミガメがいそうなエリアに近づくと当然ながらスピードを落とす。すると船は波に揺られてグラングランと揺れ始める。

その揺れは自分が一番苦手とする揺れなのだ。案の定あっという間に船酔いしてしまった。。。
それでも海中の方に目を向けると綺麗なアクアブルーの海にサンゴが点在しているのが見える。こんな所でウミガメが泳いでいるのが見られたらさぞかし絵になるだろうと思うと、ついつい目線が行ってしまう。だが、下なんか見たら船酔いに追い打ちをかける結果になるのは火を見るより明らか。

ほどなくグロッキーと化した自分は、ベンチに腰掛けて遠くの方を見ながら呼吸を整えることに集中し、早く陸に戻れるよう祈ることしかできなくなっていた。

そういう時に限ってウミガメがなかなか見つからない。船長も申し訳ないと思ったのかあちこち移動しながらしきりに探して回っているので一向に陸地に近づかない。カミさんはどうにか遭遇できることを楽しみにしているようだったが、こちとら余計なことするなー!である。。。

結局30分くらいかけてようやく港に戻って来た。ウミガメが見られたかどうかはもはや覚えていない。ようやく足が地に着いたというのに膝がガクガクする。


バーデハウス:


ホテルまで送り届けてもらって解散。部屋に戻って少し休憩しながら酔いを落ち着かせた。
なんか今日は色々ある日だった。もうイベント盛りだくさんで後はゆっくり・・・という訳には行かない。今回の久米島ツアーに付属しているバーデハウスへの訪問が出来ていない。

と、その前に夕食の買い出しだ。当初はどこかで外食をするつもりだったのだが、オーハ島のおばあから貝を沢山頂いてしまったのでそれを片付けなければならない。だったらどこかのスーパーで買い込んで部屋でのんびり頂くか、となった。

車を出して少し走るとすぐにスーパーがあった。総菜コーナーをチェックするとお弁当に半額シールが貼られていたのでこれで決まりである。
めいめい食べたいものを購入してホテルに戻り、弁当を置いて今度はバーデハウスへ向かう。


バーデハウスはオー島(奥武島)にあり、イーフビーチから車で5分もかからない所にある。
バーデハウスと言うのは、海洋深層水を用いたプールで健康増進やリラクゼーションを行う施設だとパンフレットに書かれているが、正直どういう施設なのかよく分かっていない。広い風呂みたいなのがあって、その一部がプールのようになっているものだろうか。
カミさんはこういうの好きそうだなと思って選んだものだが、自分はぶっちゃけあまり興味がなかった。広いお風呂で足が伸ばせればそれで充分である。

オー島へは橋が架かっているので一跨ぎで上陸。新たな島に上陸した感じはあまりないが、とりあえず島旅カウントが43になった。

建物はいかにも公営施設っぽいオシャレなんだけどあか抜けない雰囲気だった。受付を済ませて脱衣所で水着に着替えてからプールのエリアに進む。そこは屋内の大きな空間で真ん中に大きなプールがあり、所々にマッサージバスだったり温浴の施設だったりと言ったものが設置されていた。

とりあえず一通り試してみようということで、一旦ばらけてそれぞれ体験して回った。ジェットバス的なものは噴き出す水流によって体の凝りがほぐされるのが分かる。がその辺の健康ランドにもあるものだから特別感はない。別の場所には液晶モニターが設置されているブースがある、これは何かの体の状態をチェックしてくれるようなものだろうか。

画面を見ると開始のボタンがあってそれを押す。程なく映像が流れ始めた。暫く見ていたが、このブースでのストレッチのやり方を解説するビデオが流れただけだった。そこ看板でよくない?そんな液晶モニター付きのブースが点々とある。

見るだけかよ、とツッコミを入れつつ他の所も見て回ったが、まだストレッチなんかしなくても全然平気なのであまり面白くなかった。こういう所は中年以降になってから来た方が楽しめそうな気がした。

暫くして合流してきたカミさんも同じような感想を述べていた。ぼちぼち風呂の方に行きますかと言ってスパエリアの方へ移動。
こちらはのんびりじんわり、あったまるー。ただしお湯は温泉ではなく海水を温めたものだった。切り傷にちょっと染みる。あくまで個人的な感想だが、なんか思ったのと違ってあまり楽しめなかった。
(2024年註:残念ながらこの施設も2020年をもって閉館となってしまった。町は一時閉館と言っているが、今の所再開の話は聞こえてこない)


夕食:


満足感が得られないまま適当に切り上げてホテルに戻って来た。気が付けばもう21時を回っていた。早く夕食を食べなければ。さっき買った弁当とオリオンビールで晩酌。アテはオーハ島のおばあから貰った貝。

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貝であるのは見ればわかるのだが、似たような貝を見たことがなくなんと言う名前の貝か分からない。名前は分からないが相変わらずコリコリとした食感とあふれ出すうまみがたまらない。ただやっぱり量が多くてあっという間に腹が膨れてしまった。ビニール袋いっぱいの量(恐らく300gくらい)は流石に多かった。

明日はホテルをチェックアウトするので冷蔵庫に仕舞っておくわけにいかず、もちろん持ち歩きなんかできないのでここで食べきるか処分するしかない。出来るだけ頑張って食べたが3分の1ほどは処分せざるを得なかった。おばあ、ゴメン。。。

ちなみに帰宅後にネットで調べてみたらマガキ貝、あるいはテラザと呼ばれる貝だそうだ。実は上のはての浜で見つけた貝の写真に写っている貝こそがこのマガキ貝だった。この会は沖縄の海辺ではよく目にしていた。あれだったのか。
貝そのものは潮だまりなどに転がっているので採集は容易だが、殻から身を取り出すのが大変なこともあってほとんど流通しておらず、地元でも結構高値で取引されているらしい。宿で処分したのが返す返すも惜しい。もう少し日持ちする物だったらなぁ。。。


久しぶりにテレビを見ながらダラダラと過ごす。リゾートホテルは防音がしっかりしているので声を潜めなくてよいのが嬉しい。広めの部屋なのでベッドスペースとは別に寛げるスペースがあることもありがたい。今日一泊だけなので自宅の様にくつろげるほどではないが、旅の最後にそれっぽい優雅さを味わえるホテルに泊ることが出来てよかった。


寝る前に歯磨きをするために洗面所に行ったら、洗面器に浸して塩抜きをしていたはての浜の貝殻のいくつかからヤドカリが顔を出していた。あちゃー、連れて帰ってきてしまったか。さっき様子見た時にちょっとくらい顔を出しとけよな。ヤドカリが居た貝だけとりわけて明日海に返すことにした。

Posted by gen_charly