渡良瀬のトロッコと鉱山見学【5】(2021/07/23)
この駅から乗る人は数組程度で、駅前にいた人だかりの数を考えると少なかった。列車を見に来た人が多かったのだろうか。
列車に乗り込むとテーブルと椅子が並んでいる。トロッコと言うよりはオープンデッキと称した方が相応しい感じだ。
席は自由席とのことだが、思ったより人が乗っててあらかた埋まっている。
混雑はしているがオープンデッキなので、換気の事は気にしなくてもよいだろう。
空いているテーブルに陣取って一息つくと、列車は静かに発車した。走り始めてほどなく、この先のトンネルについてのアナウンスが流れる。
トンネルは通過に10分ほどかかるそうだ。その間強い風が吹くので、物を飛ばされないように注意してほしいとのこと。
そして程なくトンネルに入る。視界が一瞬暗くなり、強い風が顔にあたる。
と、次の瞬間、前の乗客のテーブルに置かれていたパンフレットが風に舞い上がって飛ばされた。気を付けろ、ってさっき言われたばかりだろう。
舞い上がったパンフレットは、広がった状態で自分めがけて飛んでくる。対策をとる間もなく自分の顔にかぶさる。そんな漫画みたいな展開ありか!?
チビとカミさんから大笑いされた。オイシいが嬉しくないw
唐突なハプニングにちょっと面食らったが、雑誌をどかしてみると、車両の天井にはLEDで彩られた電飾がきらめいていた。
些細なことだがニクい演出である。
今通過中のトンネルは草木トンネルという。旧国鉄足尾線時代に草木ダム建設に伴う付け替え路線として建設されてものだ。
延長は5242mあり、第三セクター鉄道の中では一番長いトンネルとのこと。
反対側の出口までひたすら上り坂になっているため、列車は遅い速度で登っていく。
トンネルの中は轟音で包まれ会話もままならないが、トンネルを風を感じながら通り抜けるのはなかなかない経験なので、思いのほか楽しめる。
事前のアナウンスどおり、通り抜けるまで10分ほどかかった。1分500mだから相当ゆっくりだ。
トンネルを抜けるとすぐに渡良瀬川を鉄橋で渡り川の反対側に移動する。それからちょっと走ると沢入(そうり)駅に到着。それまでひたすら轟音に包まれていた車内に、いっときの静寂が訪れる。
再び発車すると、ディーゼル機関車はエンジンをうならせ、煙を吐きながら坂道を進んでいく。思わずがんばれー!と応援したくなる姿だ。
沢入から先は渡良瀬川の川岸に沿って進むようになる。
水量はさほど多くないが、河原におびただしい数の岩がゴロゴロと転がっている。場所によっては家一軒がすっぽり収まるような巨大な岩も見かける。
これらの岩は御影石で、かつてはこの辺りで盛んに採石を行っていたそうだ。
採りきれないほどの量があるのか、あるいは常に上流側から供給が続いているのか、とにかく夥しい量の岩が河原をくまなく埋め尽くしていた。
そして、このカーブは通称坂東カーブと呼ばれ、わたらせ渓谷鉄道きっての急カーブなんだそうだ。
列車はスピードを落として通過する。スピードを落とすのは景色を堪能してもらうためでもあるが。
カーブを抜けてもう少し進むと、県境を越えて栃木県に入る。次の原向(はらむかい)駅は栃木県側に位置する。
原向駅のあたりからようやく穏やかな景色が戻ってくる。それと同時に沿線に工場施設が目につくようになる。
こんなのとか、
こんなの。
鉱員住宅のようなものも建ち並んでいた。
今では足尾銅山は操業を止めているはずだが、まだ住人が暮らしているようだ。どういう人が住んでいるのだろうか。
そして程なく、列車は通洞(つうどう)駅に到着。
足尾銅山の観光坑道はこの駅が最寄りなので、ここで下車する。が、降りたとたん雨が降り出してきた。。。
列車はこの先足尾駅まで行くので、小雨の中発車していく列車を見送る。チビはしきりに手を振っていた。
さて、丁度昼時である。駅付近には数軒の飲食店もあるようなので、歩きながら店を探すことにした。
駅前通りから県道に出たところに足尾町分庁舎と書かれた建物がある。
観光案内・むらおこしセンターという看板が出ていたので、あわよくばお薦めのお店の情報が得られないかと思い、中に入ったらおばあがゆんたく、、、じゃなかった、おばさんたちが井戸端会議に興じていた。
おばさんたちに声をかけて、この辺の食事処について情報収集をする。
この辺なら裏手のすし屋がおいしい、という情報をゲットした。ただし、今日開いているか分からないそうだ。
そんな話を聞いているうちに外の雨脚が強くなってきた。
雨具を持ってきていないので、暫くここで雨宿りかなぁ、とカミさんと話していたら、おばさんが傘を貸してくれた。
ただし、1本だけ。3人で1本はちと辛いが、ないよりは万倍マシ。ありがたくお借りした。
この施設は15時で閉まってしまうので、それまでに返却することが条件であった。