名古屋出張2023【2】(2023/04/16)

根尾谷断層


根尾谷断層は、明治24(1891) 年に発生した濃尾地震の際に動いた断層である。濃尾地震の規模はマグニチュード8.0であり、記録に残る内陸型地震としては日本最大の規模の地震であった。岐阜県本巣市にこの地震によって生じた高さ6mもある断層崖の露頭があり、天然記念物に指定されている。

その断層崖もこの後見に行くが、先に中という地区にある横ずれ断層の痕跡から見ることにする。
中集落は樽見鉄道の本巣駅から車で数分の所にある集落である。

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前回訪問の際に看板が分かりづらいという話を書いたが、その看板はこれである。交通量の少ない道路沿いにあるので、快適にドライブしていると気づかずに通り過ぎてしまいそうだ。

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前回と同じ位置からの写真だが、再び撮影。

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こちらは上の写真と同じものを別のアングルから撮った写真。分かりづらいが、画面中央の新緑が美しい立木の手前に手作り感あふれる木の柵があるのが分かるだろうか。この柵も手前の生け垣と並行するように曲がっている。ここにある生け垣や柵はこの土地の所有者が敷地の境界線を示すために設けたものだが、地震の前までこの境界線はまっすぐに引かれていた。

ところがこの生け垣が曲がっている辺りに断層があり、地震の際に手前と奥がすれ違うようにずれてしまった。
100年以上前に発生した地震のため、断層そのものは既にその痕跡を失っているが、敷地の所有者は地震後に新たな区割りをせず、ずれたままとしたため、境界線となる生け垣もずれた敷地に沿って曲がったままで今日に至る。このことが当時の地震の痕跡を残すものとして貴重であるということで天然記念物に指定されている。

今回は農作業のおばあさんに遭遇することもなく、淡々と見学。

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それから戻り道で樽見鉄道の終点、樽見駅にも立ち寄ってみた。時刻表を見たらあと20分ほどで列車が到着するようなので、待ち時間で昼食を済ませることに。

麓のコンビニで買っておいたおにぎりを食べていたら、すぐに列車がやってきた。

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樽見鉄道ハイモ295形。
弊ブログでも鉄道の形式について何度か蘊蓄を垂れたことがあるが、ハイモという聞き慣れない形式、これは「ハイスピードモーターカー」の略だそうだ。それに続く295はエンジンの出力を表しているとのこと。つまり295馬力。
きょうび乗用車でも300馬力越えは割と普通になってきた。そう考えると、その程度の出力でこれだけの図体に人を満載して走らせることが出来る鉄道はエコだな、と改めて思う。

で、それから根尾谷断層へ。

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今回はパノラマ写真にしてみた。
この断層はまたの名を水鳥(みどり)地区の断層崖と呼ばれ、その変位量は上下方向に最大6mある。地表に6mもの段差を作った断層は、日本広しと言えどここだけだ。
それだけ巨大な地震だった、ということが言えるわけだが、その後色々資料に当たっていたら、そうなった要因は単純に地震の規模によるものだけではないらしいことが分かってきた。

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根尾谷断層は、根尾川に沿って延びる長さ数十kmに及ぶ大断層だが、この水鳥の断層崖はその根尾谷断層から数百mほど西側に並行するように延びている。

濃尾地震による根尾谷断層自体の活動は、ほぼ横ずれで縦ずれは殆ど生じなかったそうだ。さっき見てきた中地区の横ずれ断層も根尾谷断層本体の活動により生じたものなので、縦ずれの痕跡はない。

一方で水鳥地区の断層崖だけは6mも隆起している。この断層は1キロ余りに渡って続いているが、濃尾地震によってこれだけの隆起をした場所はここだけらしい。

水鳥地区の断層崖の北数百mの所に根尾谷断層と水鳥地区の断層崖を結ぶような形直交する断層がもう一つある。これを水鳥大将軍断層と呼ぶが、それぞれに囲まれたこの辺りだけが隆起したのだという。

そうしたことから恐らく、根尾谷断層が大きく動いたことにより、この辺りだけその力の逃げ場がなく、あるいは水鳥地区の断層があることによって力がそこ逃げる形になって、隆起する方向に動いてしまったのではないか、ということである。

つまり、巨大地震の震源はあくまで根尾谷断層であり、水鳥の断層崖は巨大地震の副産物的に生じたものらしいのだ。

断層の上に位置する根尾谷断層観察館の方に歩いて行ってみると、道向かいの斜面の上に展望台のようなものが見えた。前回は見落としていたようだ。折角なのでそちらも見てみることに。

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観察館の駐車場から50mばかり進んでいくと、展望台に上る階段があった。それを登って展望台に出ると、根尾谷断層を上から一望することが出来た。

この構図は、地震直後に小藤文次郎氏が撮影した写真の構図とよく似ている。氏もここから撮影したのかもしれない。

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さて、この辺で地震断層観察館を訪ねてみたいと思う。
料金は500円。前回と変わっていなかった。

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展示物も基本的に前回と変わっていなかったが、細かい部分でちょこちょこブラッシュアップされていた。

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例えばこの地図。中央に書かれている根尾谷のイラストは前回と同じだが、写真は全面刷新されて、だいぶわかりやすい写真に変わっていた。

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断層のトレンチ。前回は北西側断層面の写真しか撮影していなかったが、今回はいくつかのアングルの写真を撮ってきた。

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まずは南東側に立って断層を真横から見た写真である。
岩盤に着色等を施しているのだろうか、断層の上に積もった土の色が随分と異なっている。そのおかげで断層面がより強調されて見える。

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続いて北西側から見た南東面の断層写真。断層の上に土が乗っているのは、地震の前に畑だった場所の土が崩れたり、地震後に改めて耕作地として利用されたりしていたためだそうだ。

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傍らの立て看板に衝撃的なことが書かれていた。
この観察館は平成14年7月の大雨で氾濫した根尾川の水により、浸水被害を受けていたらしい。

浸水時の館内の写真などはとても痛ましい。この冠水によって貴重な資料の散逸などもいくつかあったそうだ。
被災後、再開させるかの議論もあったらしいが、休館中に訪問する人もいて、少なからず根尾谷断層に興味を抱く人がいるのだから再開させるべき、という結論に至り再開にこぎつけたとのことだ。
もし、その時に閉鎖やむなし、ということになっていたら再訪も適わなかったわけで、再開の決断を下した人に感謝したい。

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ちなみにこの観察館には地震体験館という施設がある。その名のとおり3D映画を見つつ、そのストーリー内で発生する地震に合わせて座席が振動する、という仕掛けがあるホールなのだが、前回は時間が合わず見ることが出来なかった。
今回は見られるかなと思ったが、券売機の上に掲載された公演時間を見たら、次の公演は13:30でちょっと待ち時間が長い。この先に見たいものもあるので、結局またしても見送りとなってしまった。。。

 

谷汲駅


ということで次に向かったのが、これも前回も訪問している旧名鉄谷汲線の谷汲駅
前回の訪問記でも書いているが、既に廃止になった路線の駅である。廃線後に当線の車両をここで保存することになり、現在2両が保存展示されている。

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前回は駅舎の写真を撮影していなかったので撮影。駅前広場に繋がれていたヤギはいなくなっていた。

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車両は相変わらず前回と同じ物が展示されていた。大切に保管されていて、10年の歳月を感じさせられなかった。

そして前回同様車内への立ち入りが出来たのはモ755の方だけであった。
一度くらいモ514の車内も見てみたいものである。

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ここは撮影だけ。続けてすぐ近所にある谷汲あられの里へ向かった。

出張などで1人で外出した際には、家族にお土産を買って帰ることにしているのだが、カミさんから、地元のスーパーでも売られているような名物や、類似品があちこちで売られているようなもの(萩の月みたいなものとか、ゴーフレット的な物とか、プリッツとか)、ありきたりな物(クッキー類など)はいらないと釘を刺されている。

要は、旅先でしか買えないようなものを買ってこい、と言われている訳である。流通の発達したこんにちにおいて、なかなかハードルの高いことをいう。地元で売られているからと言ってそれを買う訳ではないのだから、それはそれでいいじゃん、とも思うのだが、カミさんにはカミさんなりのセンチメントがあるようだ。

そういう訳でいつも何を買うか悩んでしまうのだが、その点、このあられの里で売られているものは関東には流通していないので、お土産に最適。

 

ちなみに、買い方にも注意が必要である。いくら珍しいからと言って多種多様に買って帰ると、それはそれで嫌な顔をされる。1日か2日で食べ終える量ぐらいにするのがベストのようなので、その点も考慮して購入する必要がある。面倒だ。。。

購入したのは、あられの小袋とどら焼きである。どら焼きは前回購入した乳酸発酵餡の物とかぼちゃ餡の物が美味しかったので、今回もそれがいいかなと思ったのだが、今回は売られていなかった。どうももう作っていないらしい。

ということで、今回は子供ウケを狙ってパンダの焼き印がされている中に餅が入った物にしてみた。

最低限のお土産を確保したところで、いよいよ徳山ダムへ移動だ。

Posted by gen_charly