八ツ山橋に行った話(1999/06/06・06/12・07/02)
この頃、父が保有していたエプソンのCP600というデジカメをもらい受けて、これが自分にとって初めて所有するデジカメとなった。
父が要らないというようなものだけに、性能的には当時の主力級デジカメと比べたらかなり時代遅れなシロモノだったが、そんな物でも自分のお金では買えないものだったので、貰ってからは嬉しくて頻繁に撮影に持ち出していた。
始めのうちは近所を散歩している時に見かけた日常とかそういうものをぽつぽつと写していたのだが、やがて鉄道の写真が撮りたくなってくるのは自然な流れ。とは言っても、自分は高校入学をもって鉄道ファン属性を封印しており、もちろん今でもその気恥ずかしさは解消されておらず、撮りに行く勇気はなかった。
ところが、このところのインターネットの普及で、日記サイトに日々の出来事を掲載する人が増えてきて、時々その人がどこかへ出かける折に「これから、これに乗ってどこそこへ向かいます」なんて感じでライトに鉄道写真を掲載しているのを見かけるようになって来た。それを読んで自分の中で風向きが変わった。
そうか、鉄道写真を撮りに来ました、という雰囲気を出さなければいいのか。鉄道ファン属性は前に出さず、単に日記の1ページとしての撮影ですよ、という体ならそれほど恥ずかしくもない。それに、デジカメという当時まだあまり一般的でなかったガジェットでの撮影なら、鉄道はたまたま選んだ被写体で、カメラの性能を試しているかのような体を装うこともできる。
いや、それは単に自分の中での折り合いの付け方の話をしているだけで、周りで見ている人がそう都合よく理解してくれるとは限らないことは分かっている。ただ、自分の中で言い訳が立てばいいのだ。
そんな風に自分の中で折り合いが付いたら、すぐに写真を撮りに行きたくなった。とはいえ、気恥ずかしさが完全に払拭できたわではない。そこで、人目につきにくい駅以外の場所で撮影してみようと考えた。
その撮影ポイントとして一か所心当たりの場所がある。品川駅の南方にある京浜急行線の八ツ山橋という鉄橋である。正しくは八ツ山跨線線路橋といい、京浜急行線がJRの線路をまたぐための鉄橋だ。この鉄橋は京浜急行線の車両を撮影するための有名な撮影ポイントとして知られている。
当時、自分は天王洲アイルで勤務していて、通勤中に時々天王洲アイルから品川まで散歩することがあった。その散歩の折に場所は確認していて、既にロケハンも済ませてある。この鉄橋は京浜急行線の線路に対して斜めに架橋されているので、カーブを通過する際の編成美が狙える。そのうえ、カーブなので列車の速度が遅く、まだ使い慣れていないデジカメの操作の習熟にも丁度よさそうなポイントだ。
という訳で、時間と折り合いを付けながら、都合3回ほど撮影に行ったときの記録である。
なお、今回撮影した画像のサイズは全てVGAだ。当時はメモリカードのサイズはせいぜい64MB辺りが上限で、32MBの物ですらかなり高額なものだったので、自分が所持しているものはわずか8MBの物だった。カメラ自体はXGAでの撮影も可能だったが、XGAで撮影すると10枚も撮影したらメモリが一杯になってしまうので、VGAで撮影せざるを得なかったのだ。
当Webで公開している写真は全てVGAにリサイズしているが、この当時に撮影した写真は元々がVGAなので、一切加工をしていない。
1999/06/06
この日は確か休日出勤だったのかな。業務を終えて帰宅の道すがらで八ツ山に行ってみることにした。その前にまずは天王洲アイル駅近くで、東京モノレールの写真を撮影してみた。
東京モノレール1000形。しょっぱなにしては割とうまく撮れた気がする。デジカメ処理のせいか空の色がやや微妙な色合いになってしまっている。
もう一つこんなアングルで。
その後、八ツ山に移動。最初に撮影したのは京浜急行1000形(初代)だった。シャッターが遅れて車両が小さくなってしまったが、初手はこんな所か。ご覧のように車体がS字にくねるように進む編成美が見られるのはここならではである。
ちなみに、京浜急行線は直通する都営、京成、北総、公団の列車も通過するので、手っ取り早く数が稼げそうな気がして選んだ場所でもある。
続けて2100形。
京成3700形。こちらは鉄橋に背を向けて撮影している。鉄橋の先もずっとカーブになっているので、こちらも迫力ある写真が撮影できる。ただ、こちらの方が比較的速度が出ているせいか、デジカメのシャッタースピードが追い付かず、ちょっとブレ気味になってしまう。
住宅都市整備公団9100形。この車両はなかなか意欲的な車両である。見た目もそうだが車内の両端にクロスシートが設けられており、地下鉄線内の様子をクロスシートの視線で眺めることができる非常にレアな車両だった。とはいえ、たまに乗っても大抵埋まってて、なかなかその席にありつけないのだが。。。
というわけで、この日はこんなもんで撤収。時間にしたら20分もいなかったと思うが、試し撮りのつもりで来たので、元からあまり長居するつもりがなかった。
構図としてはやはりバッチリだった。あとはデジカメでシャッタータイミングを適切に合わせることが出来ればいい写真が撮れそうである。
ちなみに撮影中に気恥ずかしさが先行してしまうのではないかと懸念していたが、撮影し始めたら熱中してしまってどうでもよくなってしまった。
帰りがけ、新宿駅で中央線の201系を撮影。当時の中央線はこればっかりだったので、撮影も適当だ。だが、今となってはこの車両も過去帳入りである。
1999/06/12
翌週、仕事が遅番の日に少し早めに自宅を出て、再び八ツ山にやってきた。
都営5300形。下り線側は流石に線路が近すぎて特徴的な編成美が見られない。
北総7000形。先頭部の中央部を凹ませた特徴的なスタイルの車両である。ふつう、そこは前に出すだろう、という所を凹ませている辺り、へそ曲がりなデザイナーの手によるものなのかもしれない。
出勤前の立ち寄りなので、この辺で撤収。
1999/07/02
そして三度この地にやってきた。
まずは600形(3代目)。かなりベストに近いタイミングでシャッターが切れた。
コンパクト系のデジカメは動いているものを写すのがあまり得意ではない。特に自分のCP600はマニュアルフォーカスが搭載されておらず、シャッターを半押ししてオートフォーカスでフォーカスしてから更にシャッターを押し込んで撮影する、という仕組みになっていたので、そのオートフォーカス分を見越して少し早めにシャッターを押し始める必要があった。そのタイミングを見誤ると、
こんな写真になってしまう。
これもまぁまぁうまく撮影できた。冒頭の1000形と比べてもらうと違いが分かるかと思う。
京急800形と2100形。すれ違いタイミングでの撮影は更に難易度が高かった。
北総7000形。列車の位置はドンピシャだったが、シャッターを押す時にカメラがやや下を向いてしまい、上ずった写真になってしまった。惜しい。
京急600形。物は試しに踏切の反対側で撮影してみた。編成美、という点ではイマイチだが、これはこれで味のある写真が撮れるかもしれない。
京成3400形。元の方に戻って、道路の反対側から北品川駅方向を向いて撮影。これはこれでいい感じである。
北総7350形。これはちょいレアな電車だが、ややピントが合ってない。。。
という訳で、八ツ山鉄橋での撮影会はこれにて終了。そこそこの撮れ高があったので、満足してしまった。
そして、再び暫くの間撮り鉄趣味は封印するのであった。
(おわり)