紀伊半島と浜松のドライブ【3】(2023/07/24)
イルカのショー:
見学するうちに今度は11:30のイルカショーの時間になったので再び会場へ移動。イルカショーはクジラのショーとは別のプールで開催される。
このプールにいるのはカマイルカ、スジイルカ、バンドウイルカの3種。そういえばバンドウイルカは最近はもっぱらこのように呼ばれているが、以前はハ(濁点が付かない)ンドウイルカと呼ばれていたような気がする。どちらが正しいのか気になって調べたら、どちらも正解らしい。それでいいのか?
イルカはクジラと比べると圧倒的にスピーディーで芸達者だ。
イルカにとっては大して広くないであろうプールを全速力で泳いでも壁にぶつからない運動能力を持っている。ジャンプをすれば容易に10m近くまで跳ねるし、陸に上がって気を付けをしたり、尾びれだけを水面に出してパタパタ振って見せたりする。
しかし動物のトレーナーというのはどのようにして芸を仕込んでいるのだろうか。言葉は通じないしトレーナーがやって見せるわけにもいかない。どうしてやりたいことが伝わるのか不思議でしょうがない。
ショーが終わるとイルカのふれあい体験コーナーとなる。事前にアナウンスのあったとおりショーの終了と同時にチビをその列に並ばせた。この体験はショーごとに30人までという人数制限が設けられているのだが、チビのはるか手前でその定員に達したと言われ結局体験できなかった。
というのも、あくまで30人なので4人とか5人とかの家族連れがいると1家族が終わるごとにあっという間にカウントが増えてしまい、結果並んだ人のほとんどが触れられずじまいになってしまうのだ。並んでいる人の数を見て少しでも多くの人に体験して貰えるように1家族1人までとか子供だけに限定するとかしても良いのではないだろうか。というか30人が触り終わった後に終了宣言をするのではなく、並んだ人の人数が30人を超えた時点で終了のアナウンスをしてほしかった。
体験コーナー:
ともあれショーを見終わったのでクジラの時に約束した体験コーナーへ移動することにした。
受付の列に並んでいる間に何の体験がしたいのかもう一度チビにヒアリングしたら、なぜか希望が変わって餌やり体験がしたいと言い出した。どういう心境の変化があったのか不明だが、再確認しても答えが変わらなかったので希望どおり餌やり体験を申し込んだ。
料金を支払うとエサとなる魚が5~6匹入れられたバケツを渡された。桟橋を歩きながら好きなイルカやクジラに餌をあげてくださいね、とのこと。
桟橋に入るや否や一番手前側にいるイルカがすごい勢いで餌くれアピールをし始めた。イルカほどの頭脳を持っていればこの場所で待っているだけで餌を与えてくれる人がひっきりなしに通りかかることくらいは知っていることだろう。
案の定チビは早速その子に餌をあげていた。イルカは魚を丸呑みしてすぐさま次のおねだり。そのおねだりに気を良くしたチビが2匹目をあげようとしたのですかさず静止。こいつはバケツ一杯分の魚などあっという間に食べてしまうはずだ。だが、奥には他のイルカたちもいるのでここで終わらせてしまっては勿体ない。
チビに奥にも沢山いるよと伝えると、そっか、と言って奥の方へ歩き出した。がこの子にとっては急にお預けを食らった格好になる。ずっと口開けながら我々の傍らを並走しておねだりを続けていた。
奥の方にいたのはアルビノの個体。出漁中に捕獲された個体がアルビノだったりすると、ここに寄付されることがあるそうだ。
こちらの列にも沢山の子がいるのだが、全員にあげられるだけの量は持ち合わせていない。遭遇した順にエサを与えていたらあっという間にバケツが空になった。もっとやりたい、っていうかなと思ったのだが特に何も言わなかった。流石に炎天下過ぎてどうでもよくなったか。
このエサやりが料金的には一番リーズナブルではあるが、時間的なCPまで考えるとカヤックでのエサやりの方がより長く楽しめたかもしれない。
マリナリュウム:
続けてその道沿いにあるマリナリュウムへと入ってみた。ウムと書かれると金属みたいだが、それはさておき。
ここは水槽を泳ぐイルカが展示されている水族館的な場所である。もちろん入館に個別のお金はかからない。流石町営の施設だけある。
近隣(というほど近くないが)には鳥羽水族館や白浜のアドベンチャーワールドといった施設がある。展示物は圧倒的にそちらの方が充実しているが入園料も倍以上する。その点、このくじらの博物館くらいの規模の方がひとつひとつをじっくり見学できるうえ、所要時間も半日強で済むので、我々のような旅行者にとっては案外ジャストフィットな施設だったりする。
館内に入るとまず水槽の下に通されたトンネルをくぐるようになっていた。外の光が差し込んでキラキラと青く光る水の中をイルカが数頭優雅に泳ぎまわっていた。なかなかどうして展示にも工夫が凝らされている。
ただしそのほかの展示については控えめで、小さい水槽に数匹程度の近海で見ることのできる魚や甲殻類などが展示されているのみだった。だがこうしてイルカが泳ぎ回る姿を見られるだけでも充分だと思う。
この建物も順路に沿って進んでいくと屋上に出られるようになっていた。出てみるとさっきトンネルを潜り抜けてきた水槽を上から眺めることができるようになっている。
そのほか、写真には撮り忘れてしまったが資料館の建物もある。クジラショーが開催されていた場所のすぐ隣である。ここはかつて捕獲された腹びれのあるイルカ「はるか」に関する展示がなされていた。
イルカは通常腹びれ(いわゆる後ろ足)が退化しているのだが、はるかにはその腹びれが付いていた。イルカやクジラはかつては陸上で4足歩行をしていたが進化の過程で海中で暮らすようになり、それに最適化される形でひれが形成されたり足が退化したりしてきたらしい。つまり、はるかの腹びれは突然変異というよりは先祖返りのようなものなのではないか、と考えられているそうだ。
くじらの竜田揚げ:
さて、頃合いは昼を回ったところだ。ぼちぼち昼食にしよう。
この博物館には食事ができる場所がないので持参していなければ館外で食べるしかないのだが、館外に出ても入場券を持っていれば再入場が可能なので一旦外に出て昼食を取りに行くことにした。
車で数分の所に道の駅たいじがある。ここのレストランでクジラ料理が食べられるということで行ってみることにした。というかこの周辺ではここ以外に食事ができる場所が殆どない。
自分はこれまで一度だけクジラ肉を食べたことがある。子供の頃には既に商業捕鯨が中断していたのでクジラ料理が食卓に上がったことは基本なかったのだが、一度父が買って来たことがあった。それを焼いて食べたのだが肉が臭くておいしいとは思えなかった記憶がある。父が雑に焼いただけのものだったので調理法が悪かった可能性もあるが、それがクジラ肉の味である可能性もある。もしあの味だったらちょっと食べきる自信がないが、一度くらいちゃんと確かめておきたいと考えてやってきた次第。
昼時を少し外してやってきたのだが、恐らく博物館から流れてきたであろう人々で店内はごった返していた。暫く待っていたら席が空いたのでどうにか席は確保。
注文したのはクジラの竜田揚げとコロッケの定食である。カミさんは太地町のもう一つの名産品であるマグロの料理が食べたかったようだが、売り切れだったのでクジラの唐揚げ定食、チビはお子様ランチとなった。
期待と不安が入り交じった気持ちで竜田揚げを食べてみた、ら、肉の味がほとんどしない、というか殆どしょうが醤油の味だ。
臭みはしっかりと消されているが、何の肉を食べているのかはよく分からなかった。それはカミさんの唐揚げも同様だった。物は試しチビにも少し食べさせてみたのだが、チビはしょうが醤油の濃い味付けに馴染まなかったらしく一口食べただけでもういらない、と言っていた。。。
まぁこれだったら安心して食べられると言えば食べられるが、これをもってしてクジラ肉の味を知っていると胸を張って良い物かはちょっと悩ましい感じである。今度は長崎でくじらベーコンを食べてみるか。
食後、カミさんが館内の物産館を見たいというのでチビを連れて裏手の河原を散策してみた。うだるような熱気で立っているだけでボーっとしてしまうほどの昼下がりだが、チビは全く気にする様子がない。チビが熱中症にならないよう気を付けないとなと思ったが、その前に大人がバテてしまいそうだ。。。
川に沿った道から河原に降りられるところがないか探してみたがどこにも降りられるところがない。道から水面を覗いてみたら魚が泳いでいるのが見えた。それを見てチビがすかさず魚とり網持ってきて!と言った。海沿いに出る時には網や水槽代わりの虫かごを車に積み込むのだが、以前大洗に出かけた時に持参したやつが驚くほど何の役にも立たなかった、という苦い経験があったので、今回は万全を期して魚とり網を買い直した。どこかで魚が捕まえられそうな場所が有ったら持ち出そうとは思っていたのだが、ここは高さがあるので網が届かない。
そうチビに伝えるがチビは諦めない。実際にやらせてみないと納得しなさそうだったので、結局一旦車に取りに行くことになった。
車に戻った時に辺りを見回したら、道の向こうに干潟のようになった海が見えた。そっちの方が海辺に降りやすそうだし干潟の生き物を観察できると思ったので、チビに向こうに行ってみようよ、と促した。
海岸に降りてきた。この辺りは入り江の奥の方になっているらしく水面には波紋ひとつ立っていない。その割に水が澄んでいるのが素晴らしい。ただ、肝心な生き物の気配が感じられない。。。
時折砂地の海底近くを泳ぐ小魚の姿を見かけるものの、狙いを定めようとする前にこちらの気配に気づかれてしまい、すぐにどこかへいなくなってしまう。
近くに砕石を金網で巻いて作られた突堤のようなものがあったので、そこの上に上がってみた。突堤の周りには波消しを兼ねた採石が沈められていてちょっとした潮間帯のような環境になっていた。こういう所ならきっと生き物が見つかりそうだ。
だが、その捕獲は想像以上に難航した。こちらもすばしっこくてチビが近づく気配を感じた瞬間にどこかに隠れてしまう。
直射日光がきつ過ぎる。気温も40度近くまで上がっていそうな感じでこのままでは暑さで倒れてしまいそうだ。諦めずに1時間ばかりチャレンジしてみたところで終了。捕まえられたのはヤドカリだけだった。チビはあの手この手で何とか魚を捕まえようと四苦八苦していたが、魚の方が一枚上手だった。
食事が済んだら博物館に戻ってもう一度ゆっくり展示物を見たりするつもりだったのだが、午前中でざっと一通り見学は済ませたせいか、食事をして一息ついたらなんかもう良くなってしまったので、博物館へは戻らず先に進むことにした。
今日のマストタスクはくじら博物館だけなのだが、折角ここまで来たのだからと少し先にある橋杭岩を見に行くことにした。