金沢へ【3】(2006/02/25)

東尋坊:


なんか全体的にユルい雰囲気の吉崎御坊を後にし、次に向かったのが東尋坊だった。
サスペンスドラマに登場する数多の人物を海の藻屑にしてきたあの東尋坊である。福井にそういう景勝地があるのは知っていたが行ったことはなかった。

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こちらが東尋坊。遊歩道が張り巡らされていたので連れてきた犬と一緒に散策した。
東尋坊は落ちたらまず助からないような荒々しい絶壁が続く海岸として知られている。故に犯罪の証拠隠滅や犯人の贖罪のための身投げなどの舞台として度々登場する場所となっている。

確かに落ちたら助からなさそうだなと思わせる場所ではあるのだが、昨年訪問した和歌山の三段壁の方が遥かにシャレになっていない度が高おい。もちろんどちらも危険が危ない場所であることには違いないが、ここは三段壁と比べるとなんか穏やかな雰囲気をまとっているようにさえ見える。多分陽気のせいもあるのだと思うが。大したことがなさそうに見えてしまいがちだが危ない場所だからな。

 

そう言えば、なぜサスペンスドラマは和歌山の三段壁ではなく東尋坊で人を殺したくなるのだろうか。三段壁の方がより確実に目的を果たせそうな気がするのだが。・・・いや、別に確実に目的が果たせるかどうかが重要ではないのだろう。落ちました→死にましたの印象を視聴者に説明せずとも共有できるのであれば、プールの飛び込み台だって良い訳だ。

やっぱりそれは東尋坊が北陸にあるが故なのだろう。北陸の冬のどんよりとした空模様は陰鬱としたストーリーの舞台アイテムとして欠かせない。三段壁の方が致死率は高そうだが南紀と聞いただけで楽天的なムードが漂ってしまい、ストーリーの舞台設定を壊してしまう気がする。

ちなみにドラマの中で人を殺害する場合、その凶器としてスポンサーからクレームの入りそうなものは使うことが出来ないので消去法で誰からも文句のでないこういう死に方になってしまう、という話をどこかで聞いた。だがクレームは入らないかもしれないが、こうしたドラマの存在が東尋坊も三段壁も自殺の名所という汚名を着せられる遠因にはなっていると思う。ニワトリと卵の話かもしれないが。そう考えたらとんだとばっちりである。。。

 

越前ガニ:


ぐるりと周遊し終えて帰りがけ、駐車場の近くに露店を広げてカニを売っている老婆がいた。お父さんはこういう人たちに気軽に声をかけるタイプの人なのですかさず近寄って美味いの?と話しかけた。その老婆は、美味いからこうて(買って)って~と満面の笑みで売り込んできた。だがカニである、しかも福井名産の越前ガニ。露店なのでそこいらの市場で買うよりはお買い得だがそれでも購入を躊躇うような値札が付いていた。

発泡スチロールのトロ箱の中には3~4杯のカニが納められていた。どれも大きく立派なもので露店といっても物はいい加減なものではない。

お父さんはそれから少しの間それらのカニたちを吟味して、ほんならそれ1ケースちょうだいと言い放った。え、1ケース?
冷やかしているだけなのかと思ったので買うと宣言したことも意外だったが、仮に買うとしてもせいぜい1杯か2杯買って今晩の食卓に上がるのだろうなくらいに思っていたので、ケース買いすると聞いて動揺した。
2杯くらいまでなら来客へのもてなしとしてあり得る買い方だし、ウチらもカニにあり付けて嬉しー!、となるのだが1ケースも買われてしまうとなんか無理させているのではないかと心配になって手放しで喜べなかったのだ。

まぁ、そんな風に思ってしまう所が貧乏性なのかもしれないが。お父さんは目を白黒させながら事の成り行きを見守る我々の視線に気づいていないかのように、カニの入ったトロ箱を抱えて悠然と車のほうへ戻って行った。

 

その後、今度はお袋のリクエストで水仙の里公園へ水仙を見に行くことになった。
越前海岸沿いの国道は険しい海岸線が続く難所だが、今日は天気も晴れ渡っていて日差しを浴びながらの快適なドライブだった。
そう言えば今回は金沢に着いてから一度も雪を見ていない。これだったらマイカーで来てもよかったか。いや、いいのだ。1度くらい寝台特急北陸に乗ってみたかったのだから。

水仙は1月中旬位が見ごろらしい。見ごろをひと月ばかり過ぎているのでもしかしたらもう遅いかもしれないけど、まだ見られるかもしれないから見に行きたいと言うお袋のたってのリクエストだったが、残念ながらお袋の見立てどおり見頃を過ぎてしまっていて園内の水仙はまばらな状態だった。

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気が付くと時間は13時を回っていた。そろそろ昼ごはんにしようかと言うことで、水仙の里からいったん引き返して樽海という店に入った。

この店は海岸沿いにあって海鮮がお薦めの店だった。めいめい刺身やら焼き魚やらを注文したが、どれも美味かった。

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店の敷地の道向かいには滝が流れ落ちていた。
この滝は足見滝といい、雪解けの季節だからか豊富な水量で豪快に流れ落ちて周囲に滝の音を響き渡らせていた。

 

永平寺:


昼食を済ませたら本日最後の観光へ。向かった先は福井随一の名刹である永平寺。再び車を福井方面へと走らせ日が少し傾き始めた頃に到着。

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この当時、自分は写真を撮る人を撮るのがマイブームだった。記念撮影でポーズを決めている人とそれを撮影する人を客観的に見ているとなんかほのぼのして好きだったのだ。

 

それはさておきようやく雪が見えた。と言っても除雪された後のだいぶ汚れた雪だが。誰が言ったかは知らないが永平寺に行くなら冬なのだそうだ。今は綺麗に除雪されているが、ここが雪に覆われている姿を想像してみると、それは確かに見ごたえのある風景となりそうだ。そういうタイミングでも訪問してみたいものだ。

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除雪された雪であってもこうしてみるとなかなかの趣がある。この景色を見ていると寒い早朝に修行に励むお坊さんの姿が想起される。
構図も何も考えずに撮影した写真なので、その風情が伝わりにくいと思うが。。。

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永平寺は本堂の中も見学できる。順路に沿って建物の中を歩いていたら、通路の向こうから沢山のお坊さんが列をなしてこちらに向かって歩いてくるのが見えた。彼らはまっすぐ一列に連なり誰1人として列を崩すような人はいない。

その隊列美に感心しつつ会釈をしてすれ違う。それから更に順路を歩いていくとロの字型の建物を一周したらしく、元の場所に戻って来た。するとさきほどすれ違ったお坊さんたちが広間に集合してお経を唱えているところだった。
その直後に別の集団がその部屋へぞろぞろと入って行った。お袋が見学してもいいですか?とそのお坊さんの中の1人に質問する。声をかけられたお坊さんは一瞬戸惑ったような表情をしたが、いいですよと言ってくれたので、部屋の外からしばし見学させてもらった。

部屋の中には4~50人くらいの坊主の卵が声を揃え一糸乱れぬ調子で読経をしていた。その光景は気迫に満ちていて圧倒されそうになった。

Posted by gen_charly