小笠原上陸【19】(2008/09/14)
母島散策 - 前田商店:
宿から港へメインストリートを進んで行くと最初に見えてくるのが前田商店。島で唯一の民間経営によるよろづ屋さんだ。母島の住民はこの店にのど元を押さえられていると言っても過言ではないw
店内には観光客向けのお土産の取り揃えもあった。とはいってもどこにでもあるようなクッキーとか饅頭と言った類のものはない。この島にわざわざやってくる観光客は、そのほぼ全てが自分の意思でここを目指してきた人たちであるはず。母島の月とか母島の玉子なんか売っていたら興ざめするに違いない。そういう商業主義から一歩引いているところがこの島の最大の魅力なのだ。
そうした中見つけたのがラム酒とパッションリキュールである。現在母島の特産品にしようと絶賛売り出し中のお酒だそうだ。ラム酒とパッションリキュールなんていかにも南国の島らしいじゃないか。そういう狙いがあるのかと思ったらそういうことではないらしい。
日本でお酒を製造するには許可がいるわけだが、製造できるものは地域によって指定されているのだそうだ。例えば沖縄では泡盛、奄美では黒糖焼酎、鹿児島では芋焼酎、と言った具合。
で、母島でも島の特産品として地物の焼酎を造ろうとしたのだが、許可が下りなかったので仕方なくスピリッツにあたるラム酒にしたらしい。と言ってもどちらも蒸留酒にあたり大きな違いはないのだそうだ。自分はお酒を飲まないのでその辺りの事情にはとんと疎いのでただの受け売りだが。。。
折角母島の特産品だというのだから買って帰ろうと思った・・・のだが、考えてみれば父島でも売っているのを見たような気がするし、何なら竹芝桟橋の東京愛らんどでも売られていた。ここで買うと荷物になるのが目に見えているのでやめといた。
島ならではのお土産があることは個人的には大変喜ばしいことなので、これからもその調子で頑張ってくださいと応援したくなるが、小分けになっていなかったり好き嫌いが分かれたりするものも多いので、職場など無難な関係者に渡す無難なお土産としては殊の外チョイスが難しかったりする。
母島で買ってきたお土産なんてもはや貴重品だが、それを配って喜ばれるとも限らないので職場へのお土産も後回しにした。
代わりにという訳ではないが船に乗っている間に食べる昼食を入手することにした。最初はお弁当を買おうと思っていたのだが、菓子パン売り場に行ってみたら殊のほか品数が多かった。しかも関東では見かけないパッケージの物ばかりで大手のメーカーのものではなかった。
手に取ってみるとなんか冷たい。普通の陳列棚に並べられているのにもかかわらずだ。しかもよく見ると袋の中で汗をかいている。どうやら島へは冷凍されて運ばれてきているようだ。陳列しているうちに解凍されて食べごろを迎えるという寸法である。
裏面をチェックすると賞味期限の日付が過去の日付になっている。賞味期限切れてるじゃんw
直前までカチンコチンに冷凍されていたのだから賞味期限なんかあってないようなものだが、ちょっと面食らう。
面白そうなのでそれらのパンをいくつか購入した。惜しむらくはそのパンの写真を撮っておらず、製造元を失念してしまったことだ。物珍しいパッケージのパンがどこで作られたものなのか今となっては不明である。
母島散策 - JA小笠原島 母島支店:
さらに港の方へ歩いていくと海岸沿いを通る都道にぶつかる。その角にあるのがJAの売店。ここも覗いてみた。中で店番をしていたお兄ちゃんは、ははじま丸から下船する時にチケット回収をしていた人だった。離島ではマンパワーが足りないので1人がひとつの仕事、という訳にはいかないのだろう。
ここはJAだけに農産物の取り扱いがある。主だったものは本土で売られているものと違いがなかったが、その中でシカクマメに目に留まった。この豆はその名のとおり鞘が4方向に広がった形状をしている。沖縄ではウリズンと呼ばれているもので恐らくそちらの名前の方が耳馴染みが良いと思う。
南国の野菜ということで興味を惹かれたが、まだ3日ほど行程が残っているので日持ちが心配。ということで店員に日持ちを聞いてみたら常温で1週間くらい保存可能らしい。それならと言うことで1袋買ってみた。これは帰宅後に調理したのでエントリ終盤で紹介したい。
前述のとおり母島には物が買える店が3軒しかない。さっきの前田商店とこのJAとあとは漁協だ。その3軒だけで島の消費生活が捌けるというのだからやはり小さな島である。と言ってもこれらの店で全てが賄えている訳ではないと思うが。
他の小離島では自給自足や隣近所との助け合いによって不足する部分を補い合ったりするものだが、収穫や漁獲が少ない母島の場合はどうなのだろう。小笠原は元が無人島なので住民の全てが移住者である。代々土地を守ってきたという人がいないので血縁はそれほど濃いものではないだろう。住民同士の結びつきもそれほど強固な物ではない気がする。そこへ来て第一次産業が脆弱なのだ。不足しているものをどうやって補うのだろうか(まぁ近年では通販でお取り寄せも可能となってはいるが)。
では移住してきた人は何を目的にこの島に来たのだろう。他の島は大抵島で何らかの作物を育てるためとか、グアノ(鳥やコウモリの糞から作られた肥料および燃料)の採集のため、と言った理由で移住が進むが、この島の場合それらがないのである。
思うに都会のごみごみした環境に嫌気がさしたり、濃い人間関係に辟易としたような人がこの島に新天地を求めて移住してきたのではないだろうか。となれば農業や漁業が盛んでないことも合点がいく。ただそういった一次産業が立ちゆかない島は移住しても生活が成り立たず、やがて無人島に戻っていくのが通常だ。
ところがここは東京都である。これまで見てきたとおり島のインフラ整備に並々ならぬ税金が投入されている。ここまでインフラ整備に力を入れていると島に滞在する人の数も多くなる。するとその人たちを相手にした商売が盛んになる。この島の場合そうした第三次産業に携わる人の比率が他の島と比べるとだいぶ多い。
これと言った生産性がないこれらの島になぜ東京都は過大な投資を行うのだろうか。それはやはり本土防衛上重要な島々であるからではないだろうか。
・・・なんか話があらぬ方向に進んでしまった気がする。ともかく思うのは東京都がこれらの島々のインフラ整備をひととおり終わらせたあとだとか、国土保全の点で重要さを失って関心がなくなった時に島で暮らす人たちがどうなるのだろうかということだ。
他の離島と異なり小笠原の島々は比較的若い世代が多く暮らしているので、すぐにどうこうなることはないとは思うが50年後、100年後はどうだろう。
それはさておき、3軒のうち最後の漁協は今日は休業日なので立ち寄れなかった。ギョサンという小笠原名物のサンダルがそこで売られているという話を聞いていたのでちょっと見てみたい気もしたのだが結局見れずじまい。ちなみにギョサンというのは「漁業(従事者が重宝して使っている)サンダル」の略。見た目健康サンダルなのだがハードワークに対応できるように鼻緒が取れにくいように加工されていたり、靴底の滑り止め加工があったりして漁業関係者以外が履いても履き心地がいいらしい。
ここ最近の小笠原の隠れた名物となっていて、実は通販でも購入できたりする。