小笠原上陸【31】(2008/09/15)

南島散策 - 扇池:


さて、1エントリ分勿体ぶったのでそろそろ本題に行きますかw

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これが南島を訪れる人を魅了してやまない扇池の姿だ。海蝕洞となっていた場所がやがて尾根を貫通し、内側の盆地まで海水が入り込むようになった場所である。まぁ、下地島にある通り池の変形バージョンみたいなものだがともかく風光明媚である。ここは本当に日本の地なのだろうかと思わずため息が出る。

この奇跡の絶景は新東京100景にも選ばれている。自分的には今回の小笠原の旅行において一番見てみたいと思っていた場所である。

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少しズームで寄ってみた。なんて美しい場所なのだろう。真っ白な砂浜しかり、外から波打ち際にかけての海の色のグラデーション具合しかり。

こちらの高台へ行くと言われた時、折角先陣切って扇池を見るチャンスだったのになぜそう言うのだろうかとちょっと腑に落ちなかったのだが、この景色を見てその意味が分かった。我々があそこに一番乗りしてもすぐ彼らに追いつかれてしまうから独り占めできるのはほんの一瞬しかない。あるいは彼らは先にこちらを見ることにしたかもしれない。この場所は前述のとおり数人しか立てないので間違いなく順番待ちになる。だったら先に見てしまおうと判断した訳だ。

5分くらい記念写真を撮りあったり景色を撮影したりしていたら、農協さんたちが次に進むような雰囲気になった。それを見て照一さんからそろそろ行こうかと声がかかった。

一行は再びぞろぞろと斜面を降りて、砂浜の方へと向かった。

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途中の砂地に木の枝が3本立てられていた。これはまだ孵化していないウミガメの卵があることを知らせる目印だそうだ。この島にもウミガメが産卵しに来ているのでうっかり踏みつけたりしないようにこのようにして目印にしているという訳だ。

時期的には既にあちこちで孵化が進んでいて、赤ちゃんガメたちは大海原へと長い旅に出発している。

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だが全てがそうならないのが世の常である。何らかの事情で浜辺までたどり着けずに命を落とした赤ちゃんの死骸が点々と落ちていた。これも現実である。なぜ神様はこういう無駄をするのだろう。充分に強靱な赤ちゃんをもっと少数生むだけでも同じ結果になるのではないか、などと愚にも付かないことを考えてしまった。

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そこから少し歩いて砂浜に出てきた。それにしてもあのトンネルは奇跡的だ。

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砂浜の際の方には何やら白い物体が点々と落ちている。最初は石ころか何かだと思ったが、近くで見たら全部カタツムリの殻だった。

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この殻はヒラベソカタマイマイという数千年ほど前に絶滅したカタツムリの殻が半化石になったものだそうだ。カタツムリってもっとじめじめとしたところにいる印象があるが、どうしてこんなカラッとした砂浜に大量発生しているのだろうか。ここが熱帯雨林のようなじめっとした場所だった時代があったのかもしれない。

もちろん持ち出し禁止である。これだけ大量に散らばっているのでひとつくらい持ち帰っても分からないくらいいっぱいありますねーなんて話を照一さんに振ったら、

「持って帰ってもねー、それ持って帰ってどうするのかっていう話もあるしねー。」

 

とのこと。そりゃそうだ、よっぽどのカタツムリマニアや研究者でもない限り自宅に持ち帰ってもただのゴミになってしまう。

 

実はこの半化石、かつて規制がなかった頃に上陸した観光客によって次々と持ち帰られてしまい一時は砂浜からほぼなくなってしまっていたのだという。ところが数年前にやって来た台風が砂浜の砂をごっそり持って行ってしまって、そしたら砂の下に埋もれていた化石がまた表面に出てきたのだという。

風化せずにそのまま化石になってしまったのだから恐らく大きな災害などによって一気に埋もれてしまったのだろう。にしてもどんだけいるんだって話だが。ヒラベソカタマイマイがまだ絶滅する前の時代にもしここに立つことが出来たとしたら、夥しい数のカタツムリが足の踏み場もないほどに埋め尽くしていたわけで、その様子を想像するとちょっとゾッとする。

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シーカヤックでこの島へ来た時や沖合のボートから泳いで来た時はこのトンネルを通り抜けて島に上陸したりするらしい。なにそれ絶対面白い奴じゃん。まぁご覧のとおりの波なので今日みたいな日は上陸不可らしいが。

「昔は、あの上から飛び込んで遊んだりしたんだけどねー。」

と照一さんが目を細めて語った。あの上?駄目でしょう。危険すぎる。高いってだけでも恐怖なのに下は岩礁だらけ。下手したらただのスーサイドになってしまう。

でもそういう遊びをキャッキャ言いながらやるのが子供なんだよなー。

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カミさんが波打ち際の方へ歩いて行ったら茶色くなった部分ですっころんだ。そりゃもうステーン、と。チャップリンばりの完璧な転倒だった。茶色の辺りは砂ではなくビーチロックという硬い岩盤がむき出しになっている。自分も近くに行ってみたが滑りやすいなんてものじゃなかった。

 

その姿を見て笑っていたら後ろから別のツアーのガイドがやってきて自分の横にいた照一さんに話しかけた。

「○○さんのとこ、またやってるよ」

 

「あーやっぱり。さっきうちらの後に上陸してきた時に30人くらいいてさ、ガイド1人しかいないから1人なの?って聞いたら、すまなそうな顔していたよ。」

 

「あそこはいつもそうだよね。。。」

 

例の農協ツアーを主催している業者はどうもルール違反をしているらしい。本来15人に1人ガイドをつけなければならないというルールがあるので30人いたらガイドが2人必要になる。だが今回1人のガイドが引率をしているのだという。しかも「また」と言っているのだから常習犯らしい。

30人からの集団を引き連れていたらそれらの中にはコースを逸脱したり島の物を持ち帰ったりするような人が混じっていてもおかしくない。それを監視するためにガイドが必要だという話なのだから島の環境を守ろうという意識が低い業者ということになる。

他の業者も集まる場所でそれをやるのだから確信犯だ。やっぱりどこにでもいるんだねそういう業者。

 

そのとき農協さんツアーの一行が陰陽池の方からぞろぞろと戻ってきた。先頭にいたガイドが子供と一緒に歩いていて手に何かを持っている。なんだろうと思って見ていたらその子の手の中から出てきたのはウミガメの赤ちゃん。

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南島で孵化した赤ちゃんは扇池をめざして大海原へと旅立たなければならない。ところがうっかり陰陽池の方へ行ってしまうおっちょこちょいが少なからずいるらしい。そっちは海ではないしエサもないので残念な結果しか待っていない。で、参加者の1人が陰陽池の方に行ってしまった赤ちゃんを見つけたのでこうして連れてきたのだという。

そうして海に放流される姿を眺めていたら照一さんが、

「これは意見分かれちゃうけど、自然に逆らって助けちゃうのもねー」

 

とつぶやいた。自分も同意見である。まぁ神の手により奇跡が起きたという考え方も出来るのかもしれないが、さっき砂浜で朽ち果てていた赤ちゃんを見るまでもなく、そうした前提をひっくるめた産卵数なのだ。

 

ほどなく、そろそろ戻るよーと声が掛かった。
もうおしまいか。まだまだ堪能し足りない。できれば陰陽池の方とかその向こうの丘の上とかにも行ってみたかったがやむを得ない。キャプテンの指示は絶対である。

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一行は再び鮫池のボートに乗り込み島を離れた。

 

南島上陸ツアーが終わったのでこの後はドルフィンスイムの時間である。自分以外のメンバーはそっちがメインなので、お、いよいよだね、なんて話している。

が、自分的には不安な時間の始まりであるる。なにがって、船酔いですよ、船酔い。一応酔い止めの薬は出港前に飲んできているが、フェリーとは勝手が違うのでどうなるか分からない。折角行くのだから景色なんかも堪能したいところだが、もし酔ったらもう横になって嵐が過ぎるのを待つより他なくなってしまう。

それはさておきイルカなんてそう簡単に遭遇できるものなのだろうか。結局イルカに巡り合えず沖合をウロウロして終わったなんてことにならないだろうか。

もう自分は海には入らないと決めているので正直どちらでもよいのだが、見れるものなら間近で見てみたい気もする。

果たしてどうなることやら。乞うご期待!

Posted by gen_charly