小笠原上陸【35】(2008/09/15)

トラブル発生 その3:


さて、ツアー代金受け渡しの目処がついたので夕食後の時間が暇になった。当初は母島の宿で会ったおじさんと飲みに行ってもいいかなと思ったのだが、連絡先を交換していないので直接連絡を取ることが出来ない。一応宿泊先は伝えてあるのでもし宿まで来てくれるなら、とは考えていたのだが来てくれる様子はなかった。向こうも疲れているのかもしれない。じゃあ無理に会わなくてもいいかという結論に落ち着いた。

島に来てからずっとバタバタ予定を詰め込んでいたので最後くらいまったりと過ごしてもいいかな、とも思ったのだが、ふと境浦の沈船を夜に撮影したらどうなるだろうと思い立ってちょっと行ってみたくなった。カミさんに話したら一緒に行くということだったのでちょっと夜のドライブに繰り出すことにした。

 

宿の前に停めてあるスクーターにまたがった時、ヘルメットがないことに気が付いた。
あれ、ヘルメット盗まれた?いやまさかこんな島でしかもヘルメットなんか盗むやつなんかいる訳がない。だとしたらどこかで落とした??かぶっているものを落として気づかないなんてことあるだろうか。

今日朝からの記憶を辿っていったら、午後に郵便局に立ち寄った時にヘルメットを脱いだことを思い出した。郵便局でお金を下ろす時にヘルメットをかぶったままだと店員に怪しまれそうな気がしたので、店に入った時点で脱いだのだった。そのままどこかに置き忘れてきたらしい。ということは今日夕方前からずっとノーヘルか。

回収するために郵便局まで歩いて行って窓越しにATMを覗いたら、機械の脇に見覚えのあるヘルメットが主人のお迎えを静かに待っていた。。。

おお今すぐ助けに行くからな、と思ったがこの時間に郵便局が開いている訳がない。もちろん建物内はすべて消灯されて人の気配もない。長閑な島だからと言ってヘルメット回収のために店を開けてくれとは流石にお願いできない。この分では明日にならないと回収は無理そうだ。ごめんな・・・明日の朝までそこでじっとしていてくれ。

 

ヘルメットがないのだから諦めて宿で大人しくしていればいいのに、沈潜の夜景を見たいという思いを収めることが出来なかった。カミさんのヘルメットを借りて見に行ってくるか。カミさんに宿で待っててくれないかと相談したら、それなら自分も行くのをやめときなよと言われた。まぁ自分だけ見に行くなんて虫が良すぎるか。ちょっと思案して宿でヘルメットが借りられないか聞いてみることにした。

宿に戻って女将さんに相談してみた。背景の説明がややこしい。ならやめときゃ良いのだが、もうこれまで何度も面倒をかけてしまっている。ここまで来たら旅の恥は掻き捨てだ!(間違った考え。。。)

ダメ元のつもりで聞いてみたのだが幸いヘルメットを貸してもらえることになった。言ってみるものだ。明日中山峠から戻ってくるまで使ってていいですよ、というお言葉までいただけた。

それだけでもありがたいのに、明日朝に郵便局に電話までしておいて貰えることになった。なんか何から何まで面倒かけっぱなしで旅の恥は、なんて思った自分が恥ずかしくなった。

 

夜の沈船:


という訳でヘルメットを借りることが出来たのでカミさんと2人、境浦にやってきた。

普通に考えれば暗い所で写真なんか撮っても何も写らない。だが今日も見事な満月が闇夜を照らし出しているのだ。その月明かりを使った撮影をしたら面白い雰囲気になるのではないかと思ったのだ。

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で、撮影したのがこれである。30秒露光で撮影。自分でも予想しなかった意外な写真が撮れた。
時刻は20時を過ぎている。にもかかわらず夜明け前のような青い空と透明度のある青い海、そして沈船の姿がくっきり写った。

長時間露光して光を多く集めると暗い場所はこんな風に映るのか。いい写真が撮れた。もうこの写真が撮れただけで大満足である。

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ついでに賓江橋も長時間露光で撮影してみた。街灯が恒星のようなまぶしさで写っている。カーブした橋の姿と共にこれまた幻想的な雰囲気の写真が撮れた。

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それから宿に戻って隣の聖ジョージ教会も撮影してみた。これまた独特な雰囲気だ。父島の道路の街灯はオレンジ色をしているので暖かい色味の写真になった。なぜか島に行くと街灯がオレンジ色っぽいことが多い。何か理由があるのか知らないがオレンジの街灯を見ると南国っぽいなと思う。

実は月明かりに頼ったホラー映画のような青白い写真を撮影したかったのだが、これはこれで味があるからいいか。

 

洗濯場で:


という訳で30分ほど夜間撮影を堪能して宿に戻って来た。残りの時間で洗濯を済ませることにした。
洗濯場に行くと1人先客がいた。こんばんわと挨拶をして自分の洗濯物を洗濯機に放り込んでいたらその人が話しかけてきた。

「今日はどんな事をされていたのですか?」

「南島とイルカを見てきました。楽しかったですよ。でも明日はもう帰らなければならないんで・・・、寂しいですね。」

「私どもは小笠原に来るのは2度目なんです。前回は硫黄島を見に行くツアーで父島に寄ったんですが、殆ど時間がなくてどこも見れなかったので、今回はゆっくり回ってみようと思って2航海で来たんです。」

「2航海!それはうらやましい。社会人になるとなかなか2航海で来れないですよね。」

「そうなんです。何とか会社に頼み込んで来たんです。明日は母島に行ってみようと思います。」

「そうなんですか。母島は一昨日行きました。凄くのんびりしてていい所でしたよ。」

「それ聞いて楽しみになってきました。明日は出港を見送りに行きますね。」

「本当ですか?じゃあ、探してみますね。」

こうした情報交換が旅先での醍醐味だ。折角の2航海である。存分に楽しんでほしい。

 

洗濯が終わったら部屋の中でそれを干して、そうしたらもうぼちぼち寝る時間だ。明日はジョンジニがなくなったのでちょっと気が楽になった。もちろん心残りではあるのだが。。。

そして泣いても笑っても明日の昼には島を離れてしまう。何とも言えない寂しい気分になる。

Posted by gen_charly