岡山出張2nd.【8】(2023/11/12)

長島:


市街地を抜け半島の方へと進んでいくと、視界の先に集合住宅が見えた。複数建っているところを見ると団地だろうか。この規模の町にしてはちょっと意外な感じがする。

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そんなことを考えつつ道なりに進んでいくと、やがて大きな煙突と橋が見えてきた。この橋は長島大橋といい、渡った先にあるのが長島である。

前回の岡山探訪の際に立ち寄った愛生園がある島の名前も長島であったがもちろん別の島である。こちらの長島は島の半分以上を大きな工場のようなものが占めている。ここは中国電力大崎発電所という火力発電の発電所であるらしい。地図にそう明記されていなかったので訪問時は知らずに散策していたのだが、どうも開設以来トラブルが頻発し所定の稼働率を達成できなかったことから現在は休止状態にあるという。なるほど、だから地図に表記されていなかったのか。

島にかかる橋も中国電力によって建設されたものだそうだ。大崎上島側の集合住宅を見かけたあたりは全体的に埋立地のような広々と整備された区画になっていた。恐らくその辺も中国電力によって一体的に開発されたのだろう。ということはあの建物は従業員の社宅。それであればこんな所に建っていることにも合点がいく。

ただ、肝心の発電所が現在休止してしまっているのでもしかしたらあのアパートも半ばゴーストタウンのようになっているのかもしれない。

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島に上陸すると真っ先に巨大なプラントのようなものが見えてくる。これが発電所だった建物である。まだ建造されてから20年ほどなので建物も真新しい感じだが、すでに稼働を終えた施設だとは思わなかった。

それはさておき115島目は長島となった。

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この長島は発電所の裏手にあたる場所に小集落があり30人ほどが暮らしている。また島の北西には長島ビーチと呼ばれる海岸と、それに隣接してアイランドホテルというホテルがある。ちょっと調べてみたら個室、ツイン、和室の3種類があり1人で利用の場合5000円、2名で利用の場合10000円で2食付きとなかなかリーズナブルな宿であるようだ。

ただ、離島の離島にある宿なので弓削豊島のコミュニティセンターみたいに、他の宿泊者がいないから予約できませんなんて言われるかもしれない。

 

木江の木造五階建て:


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さて、ここから次の見どころへ移動する。次の見どころは島の南に位置する木江(きのえ)の集落だ。と、その前に昼時を過ぎて腹が減ってきたので大崎の町内にあるスーパーで昼食を買った。昼食といっても菓子パンだが。それを運転しながらかじる。

木江の集落には5階建ての木造家屋があるという。木造で5階建て?それが、この島に??

ということでやって来た。

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木江の集落を貫く目抜き通りを抜けて、港に出たら左折するとすぐの場所にその建物はあった。5階建てというだけあって、遠くからでもすぐアレだ!と分かった。

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・・・凄いな、本当に5階建てだ。普通の民家然とした建物が5層になっているというのが凄く意外な感じがする。
なんと日本一の木造高層建築物であるそうだ(※最近は住宅メーカーが木造5階建ての建物を販売するようになったので、既に同じ階層を持つ木造建築物は他にも存在しているかもしれない)。

5階建てというだけでも凄いのだが、なんと大正6年築という。つまり2023年現在で築106年。軍艦島の30号棟にも驚いたが、それとは別のベクトルの驚きがある。元々はクラブと料理屋を兼ねた店舗だったらしく、今の鄙びた集落からは全く想像が出来ないが、当時はこんな建物が建てられてしまうくらいの賑わいがあったということだ。

しかも、元々4階建てだったのが大風によって倒壊したため、4の数字が縁起が悪いとかいう理由で5階建てにしたのだという。発想が無茶苦茶だ。建て直すだけの余裕があったことも驚きだが、こんな誰も建てたことのないような建築物を建てた大工も凄い。

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ことと次第によっては重要文化財に指定されてもおかしくないような建物だが、現在民家として使われており内部などを見ることは出来ない。いや、こんな民家に住んだら、家の掃除やメンテナンスだけでも大仕事だろう。どうしているのだろう。見た目は築100年を越えるような建物には見えない。恐らくマメに手入れが為されているのだと思うが維持の苦労たるやいかばかりか。

それにしても凄いなぁ。この建物を目にしてから凄いしか言ってない。木造建築というとせいぜい3階建てという先入観があるのでなんか景色がバグってるんじゃないかという気すらしてくる。

 

木江 古い町並み保存地区:


さて、この木江地区にはもう1か所、古い町並み保存地区という見所がある。今回の旅でそうしたところを全く見られていないのでついでに見に行ってみることにした。

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海岸沿いの道を今度は反対方向に進む。と細い路地の片隅に古い町並み保存地区と書かれた小さな看板が建てられているのが見えた。見えたのはいいが、どこにも車を停められそうな場所がない。仕方ないので海沿いに少し進んでいくと、1分ばかり走ったところにちょっとした路肩が広まった場所があったのでそこに車を置かせてもらった。

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と、車を停めたところの道向かいにちょっとした集合住宅が見えた。手前のバス停の名前によると柿の浦団地というらしい。見るからに年季の入った佇まいにグッと来た。この造りは相当に古そうだ。町営住宅だろうか。多分これは古い町並み保存地区には含まれていないよな。。。

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その古い町並み保存地区だが、地図で見ると先ほど見かけた細い路地がずーっと伸びて、この近くで合流している。

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なので、こちら側からのその路地に入り込んでみたのだが、初めのうちは何のこともない民家が建ち並ぶ小道に過ぎなかった。まさかこれのことを言っているんじゃないよな、と思いつつ奥の方へ進んでいく。船の時間が近づいているのであまりのんびりできない。ここから遠かったらいやだなと思いつつ足早に進んだ。

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すると、お、これか?という感じの古い木造建築が建ち並ぶ一角があった。建ち並ぶといっても数棟の建物が並んでいるだけで、街並みというよりは再開発に取り残された建物、といった風情である。

近づくにつれなんか妙なオーラを感じた。よく見ると建物が軒並み廃墟っぽい。

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角の建物は2階の雨戸が既に半分くらい壊れて撤去されており、中の障子が開け広げになっている。この縁側のようになっている場所から想像するに、恐らく遊郭のようなものだったようだ。

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その道向かいには昭和中期を強く感じさせる、カフェルミという店の廃墟。

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その隣は棟続きで玉屋という名の菓子店と旅館。こちらも廃墟。

でもってその隣が三島家という旅館。。。なんだ全部廃墟じゃないか。古い街並みというからさっきの5階建ての木造建築のように、そういう建築物に暮らす人たちがいる街並みだと思っていたのだが、どうもそうではないらしい。

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手入れされている感じではないので、これでは保存ではなく放置ではないかと思った。なんか天気が相変わらずどんよりとしているので、うら寂しさを強調している気がする。

廃墟廃墟と連呼したが、最近建てられた建物もそこそこあるようだ。ただ、そちらはそれなり最近に建て替えられているようで、古い町並みという言葉が指す建物には当てはまらなさそうだ。そうだとしたらこの古い町並み保存地区はこれらの主を失って風化するに任せた建物を指していることになる。

この通りはグーグルのストリートビューで閲覧することができる。撮影されたのが2014年ということで10年近く前だが、今は空き地になっているところに建物が残っていたり、廃墟の店がまだ八百屋をやっていたりと、当時はまだ辛うじて保存地区の名目を保っていたことが伺われる。

いずれにしてもこのままでは、早晩これらの廃墟が次々と力尽きて倒壊することになるだろう。この辺りが大いに栄えていた当時の記憶を今に留める貴重な建物であることは論を俟たないと思うので、保存の機運が高まればと思うが、船でしか来られない離島なうえ、過疎化、産業の空洞化で財政事情も厳しい昨今では、なかなかそうも言っていられないのかもしれない。

さて、木江の見学はこの辺にしてぼちぼち白水港へ向かおう。

Posted by gen_charly