信州ドライブ【11】(2010/09/20)
象山地下壕:
何の収穫もないまま再び松代の町に戻ると8時半過ぎだった。まだ少し早いが長時間の待ちにはならないはずなので、再び象山地下壕へと向かった。
現地に到着したのは9時少し前だったが、既に職員は到着していて入口が開いていた。中にいた人に声をかけると、見学の許可をもらうことができたので待たずに済んだ。ノートに自宅の住所(都道府県レベルでOK)と人数を記入したら、ヘルメットをかぶるよう案内され、それをかぶったらいよいよ地下壕へ進入である。ちなみに入場は無料。

この地下壕は500mほどが公開されている。無料で見学できる施設にしてはボリューミーだ。壕内は素掘りになっていて特に巻き立てなどは行われていない。その割に崩れているところは少なく確かに安定した地盤であることが分かる。ここが本当に完成して政治中枢が移転してきていたとしたら今どのような景色になっているのだろうか。
もし戦勝という結果で戦争が終われば、いつまでもこんな穴倉にこもったままとは考えにくいので、程なく東京に復帰してここは皇居跡となったのだろう。残された厳かな設えを見学するような施設になっていたかもしれない。逆に籠城のうえ敗戦を迎えていたら、ここは戦闘の跡も生々しい悲惨な施設となったかもしれない。
が、結局未成に終わった施設なので今は単なるトンネルが続いているだけである。何ならコウモリも飛び回っている。

なぜか知らないが、わざわざこちらの方に向けて飛んでくるので時々ドキリとする。
トンネルと直角に交わる通路が10mほどの間隔で左右に延びていて、トンネルが碁盤の目状に張り巡らされていることが分かる。それらの通路は軒並み入口が閉鎖されているので立ち入ることはできないが、格子状のフェンスで仕切られているだけなので、仕切りの向こうの様子は見ることができる。といっても照明などはないので一寸先は闇。これがどこまで続いているのかと考えるだけでなんだか空恐ろしい。

これは削岩機のロッド部分が地盤に突き刺さったままになった物。恐らく掘削中に抜けなくなって放棄されたものと思うが、場合によっては削岩中に玉音放送が流れたとかで、途中で作業が中断されてしまったものかもしれない。
こちらはトロッコの線路跡。例によって内部は非公開となっているのでフェンス越しに見学。
炭鉱などと同様、排出されたズリは敷設されたトロッコによって運び出されていた。路面が凸凹しているのは運搬時にトロッコから崩れたずりが線路敷きに積もったものだとされる。
堅固な地盤とはいってもそれは一様ではないらしく、一部落盤している通路もあった。すぐにどうこうなる崩壊ではなさそうだが、こんなものが頭上から落下したらと思うと背中がムズムズする・・・。
上述のとおりこの建設にあたっては、強制連行された(とされる)朝鮮人労働者が投入されている。軍にまつわる話なので多くは秘匿され、あるいは戦後焼却されてしまったこともあり、実数は不明であるものの多くの犠牲者が出たらしい。通路の一番奥にはそうした犠牲者を慰霊するためか沢山の千羽鶴が下げられていた。
千羽鶴のところまで行くとフェンスで封鎖されて、そこが見学ルートの突き当たりとなる。戻りは同じルートを引き返す形だった。時間的なものもあるとは思うが、自分らが見学している間にすれ違った見学者はほとんどおらず、壕内は終始閑散として寂しい限りだった。

敷地の一角には朝鮮人の犠牲者を追悼する慰霊碑が建てられていた。日本人の徴用者にももちろん犠牲者がいるはずだが、彼らに対する慰霊碑は見当たらなかった。ヘルメットを返却して受付の職員にお礼をいって見学を終えた。
地下壕入口のすぐ近くに「もうひとつの歴史館・松代」という施設があった。まだ開館していなかったので中の見学はできなかったが、外壁に沢山のパネルが貼られていた。それらは朝鮮人労働者の悲惨な境遇を訴えるものだった。恐らく館内も同じような温度感の展示がされているものと思われる。
竹山隋護稲荷神社:
象山地下壕へ行くときに、山の斜面にへばりつくように建つ神社の建物と、夥しい数の鳥居が並んでいるのを見かけた。戻る道すがらでちょっと立ち寄ってみることにした。
この神社は竹山隋護稲荷神社というそうだ。稲荷だけに狐が祀られている。参道は本殿へ向かうため斜面に沿った階段になっていて、それを登っていくと上に見える本殿に至る。
少し階段を上ったところからの眺め。随時奉納されたのか高さもその年季の入り具合もまちまちな、不揃いな鳥居が連なっていた。
拝殿は懸造りになっていて、広縁にあたる部分が舞台のように広々としていた。
その舞台から松代の町が一望できる。そしてその背後には特徴的なシルエットを持つ皆神山が聳えていた。
山頂部分は比較的平坦になっていて、その頂上部には皆神神社が鎮座しているそうだ。皆神山もまた前述の大本営の建設地となったところで、その地中には縦横無尽に地下壕が掘られている。