都内の東日本大震災【7】

3月12日~13日 原発の水素爆発:


昨日はお祭り騒ぎのような半日だった。極度の緊張が続いたうえに、余震で何度も起こされたせいか体が猛烈にダルい。週末なので今日明日は職場もお休み。これ幸いとだらけて過ごすことにした。

昨晩点けたままにしておいたテレビからは、相変わらず続々と新情報が流れてくる。一夜明けて被災地入りを果たしたテレビ局の取材チームが、現地の惨状や避難所などの窮状について喧しく報道を繰り返している。ただし阪神淡路の教訓があるからか、被災者への接し方は抑制的だと感じた。

それと同時に、徐々に視聴者が撮影した映像なども集まり始めて、被害の全貌が少しずつ明らかになっていった。昨晩の時点では、ごく一部の地域から集まった情報を繰り返すだけだったが、だんだんとその範囲が広まって、各地からの現況報告のような感じに変化してきた。総じて言えるのは、昨晩見た限られたエリアと同じような状況が、東北地方沿岸のあまねく集落で発生しているらしいということだった。

地震の規模はその後再修正され、マグニチュード9.0になったと報じられた。現在は地震が発生した時に、その規模をできるだけ速やかに発表できるように、計算方法がチューニングされているのだが、大きな地震の場合はその計算方法だと値がブレてしまうらしく、時間をおいて集まった詳細なデータを用いて再計算を行い、暫くしてから修正値として発表されるのだそうだ。それにしても9.0か。とうとう大台に乗ってしまった感じである。いうまでもなく日本の観測史上最大の規模の地震であり、世界でも上から4番目の規模の超巨大地震だったそうだ。そんな地震を我が身で経験する日がくることになろうとは。

そういうニュースを見ながら、モタモタと朝食を済ませ、自室でネットをチェックしたりしていたら、ニュース速報の音が聞こえた。テロップには福島の原発が水素爆発を起こしたと書かれている。爆発って、それはもう駄目なやつでは・・・。東日本一帯がチェルノブイリみたいになって、自分らはこの街を捨ててどこか新天地を探さなければならなくなるのだろうか。それはいつ?明日から?それとも今から?

ただ、意外にもその速報を冷静に受け止めている自分がいた。とにかくここで動揺してもしょうがない。この状況下で最善を尽くすにはどうするのが良いのだろうか、みたいなことを考えた。

それからほどなく内閣官房長官が記者会見を行った。水素爆発が何であるかについての説明があり、直ちに影響があるものではないと繰り返し訴えていた。原発の建屋の中には圧力容器というものがあり、その中に核燃料が収められていて、通常は常時水で冷やされているのだが、その冷却用の水が停電により送り込めなくなったので、容器の水の温度が上がってしまっているのだという。その時に発生した水素ガスが建屋の中に充満し、何らかのきっかけでそれが爆発したのだそうだ。つまり、圧力容器が破壊されたわけではないので、核燃料から放出される放射性物質の飛散には至っておらず、今のところ速やかな避難が必要な状況にはないということだ。

・・・言いたいことは分かるが、我々はそれをどこまで信じれば良いのだろうか。色々なことが頭をよぎる。真実がちゃんと報じられている、あるいは現場から官房長官までの間に報告内容に齟齬が生じ、微妙に真実からずれたことを言っている、あるいは特定の誰かの思惑によって真実がゆがめられてしまっている、あるいはありのままを伝えることによるパニックを避けるために論点をすり替えている・・・正解はどれだ?


何しろ相手は放射性物質である。当たり前だが目には見えないし、味もしなけりゃ臭いもない。前に軽く触れたが、その昔ウクライナ(当時はソビエト連邦の一部)にあるチェルノブイリ原子力発電所が爆発して、放射性物質を周囲に飛散させた事故があった。アメリカによる戦時中の原子爆弾の投下や、戦後の太平洋での水爆実験による被ばくの経験を持つ日本人にとって、これは遠い国のできごとでありながらも、深く記憶に刻まれた事故だった。

原発の周囲で暮らしていた人は、遠く離れた場所への避難を余儀なくされ、放出された放射性物質は大気圏を漂って、やがて雨に紛れて世界各地に降り注いだ。その記憶が残っているから、チェルノブイリに匹敵するような事故が(技術的により進んでいるはずの)日本で発生してしまったことに、少なからずショックを受けた。

日本人は特に放射能汚染に対してヒステリックに反応する傾向が強いらしい。なぜそれほどまでにヒステリックなのかといえば、過去の苦い記憶があるのはもちろんのこと、放射性物質の性質が非常に厄介であるからだ。放射性物質に被爆したとしても、かなり濃密に接しない限り急性症状が現れない、そのうえ前述のとおり物質を五感で感じることもできない。だが知らぬ間に被爆するといつの間にか体が蝕まれ、どこかのタイミングで甲状腺機能障害や白血病を発症する可能性がある。広島や長崎の原爆被害に遭った人が、そういう経過を辿ってやがて力尽きていくのを目の当たりにしているからこそ、つかみどころのない恐怖心ばかりが先走ってしまう。

この事故の報道を受け、ネットでも動揺が広まっていた。とにかく早く避難しろという煽り要素の強い論調と、日本も終わりだという悲観的な論調が多かったが、中には海外企業において帰国の指示が出ているという具体的な話もあった。


要するに見えるものではないし、すぐに健康被害が出るものでもないので、この事故をどう受け止めて良いか分からなければ、どう行動するのが正解かも分からないのだ。官房長官が発言した「直ちに影響はない」というキーワードも、そりゃそうだろう(後で被害が出るんだから)、と解釈した人が多かったから、ネットでも騒ぎになっているわけだ。

もちろん、国民に真実を伏せたまま、高官だけ高飛びなんていうのは映画の世界だけだろうから、伝えられていることは概ね真実なのだろうけど、後でホントはもうダメなんですなんて言われたら詰みである。そうなる前に行動が取れるように、できるだけ情報を集めておきたい。ただ、どれだけしがらみを断ち切れるかは未知数である。

なお、原発周辺に暮らす人たちは既に離れた場所に用意された避難場所への避難が概ね終わっていて、原発の周辺にいるのは原発関係者のみという状態らしい。着の身着のままでの避難を余儀なくされたとインタビューに答えている人がいて、気の毒だなと思う一方、その場から逃げ出したくて仕方ないはずの原発関係者たちが、自分らの状況をカミングアウトすることもできずに、踏みとどまって沈静化に尽力している筈だ。そのことを考えると、頭が下がる思いだ。

計画停電:


日曜日の夜、福島第一原発の事故や、各地の発電所への地震被害などの影響で、電力供給がひっ迫しているという理由で、東京電力管内で計画停電が実施されると発表された。

我が家は果たしてそのエリアに含まれるのだろうか、含まれる場合、停電する日はいつになるのだろうか。その情報は東京電力のサイトに掲載されているということだったので、アクセスして入手してみた。だがそれを見てもよく分からなかった。自宅のある住所自体は記載がなかったのだが、末尾にそれ以外の一部地域みたいな表記がある。我が家はそこに含まれているのか、それとも含まれていないのか。

自宅の住所は記載がなかったが、近隣の地区は記載されている。自分らのエリアだけ範囲外というのは考えにくいので、それ以外の一部地域に含まれているような気がする。いやいや、郵便番号簿じゃないんだから、そんな曖昧な表現をされては困る。我々は共働きなので日中帯は家を空けている。その間にもし停電となったら冷蔵庫の中身がダメになってしまう。特に冷凍食品は致命的だ。

とはいえ、本当に停電になると致命的なのは冷蔵庫ぐらいである。しばし思案した末、クーラーボックスの中に保冷剤を入れて、その中に冷凍食品を詰め込んだ状態で、冷凍庫にしまっておくことにした。もし停電して冷蔵庫の電源が落ちても、冷凍庫およびクーラーボックスが持つ保冷効果と保冷剤の冷却力で、ある程度の時間は持ちこたえることができるだろうと考えたからである。

そしてその計画停電の影響が思わぬところに噴出した。鉄道路線である。当たり前だが電車は電気がなければ走れないし、駅業務や信号なども電気が不可欠である。沿線に停電エリアがある路線について、念のため朝から運休する旨発表があった。だが困ったことに、自分が通勤に利用している路線の記載がない。こっちもか。書かれていないのなら多分対象外なのだと思うが、万が一運休だったら、駅まで行っても骨折り損になるだけだ。ともかく停電するのかしないのかがはっきりないのがもどかしい。

そのうえ、東京電力が当初発表した停電エリアに含まれる、沿岸の被災地を抱える自治体や、医療機関など停電が致命的になるような業種を中心に異議が噴出した。結果、停電エリアが再三変更されて、どの情報が最新情報なのかもよく分からない状態になってしまった。

鉄道が突然停電となれば影響が大きくなる。その辺を考慮して、直前で運休の決定がなされる可能性もありそうだ。というわけで明日から当面の間、職場への通勤は自転車を利用することにした。

Posted by gen_charly