— 登れるか、般若山 —
さて、次の目的地は小鹿野にある「般若山」 という山なのですが、アド街では、見晴らしのよいとても気分のよさそうな場所として紹介されていて、カミさんがぜひ登りたいと希望していた山です。
朝から雨降りだったので「これじゃ流石に登れないなぁ。。。」と一旦は中止になったのですが、上述の通り秩父市内に入ったら雨が上がったので、それなら雨が再び降り出す前に思い切って登ってしまおうと、急遽チャレンジしてみる事になったわけです。
そんな訳で、秩父市内から30分ほどで般若山への登山道の登り口にある「法性(ほうしょう)寺」 前に到着。
般若山の頂上も法性寺の境内の一部、という位置づけだそうで、頂上は「奥の院」と呼ばれています。
念のため持参したレインコートを羽織って歩いていくと、寺の前に居たおばあさんに、
「山登るんかい?」
と声をかけられました。
で、はい、と答えると、
「雨降って危ないから行かないほうが良いよ。」
と忠告されました。
もちろん、雨の状況や登山道の険しさ次第では危険な場合もあるので、
「行ける所まで行って戻ってきます。」
と返事すると、「その方がいーやいね。」 と、強く止める風でもない感じの返事だったので、多分何とかなりそうだと判断しました。
おばあさんはまだ何か話したそうにしていましたが、まごまごしてまた雨に降られると堪らないので会話もそこそこに先を急ぐことにしました。
趣のある山門をくぐると、いきなり寺の本堂のある所まで一直線に登る階段の洗礼を受けます。
脇に置かれていた杖を拝借してちんたらと登り始めました。
本堂の前でご挨拶を済ませて、更に登ると観音堂が岩場に張り付くように建っていました。
そこから横に目を向けると、岩が重なり合って出来た沖縄の斎場御嶽 (せーふぁーうたき)のような通路があり、そこをくぐるといよいよ本格的な山道が始まります。
登山道はところどころ狭いところや段差の急なところが存在するものの、割と歩きやすく踏み固められた道がメインで思ったよりちゃんと整備されていますが、気を抜いているとところどころに点在する苔生した木の根や岩場などに足を取られそうになる事があります。
途中「龍虎岩 胎内観音」と看板が出ているところがありました。
上部の穴に続く岩場に鎖が掛けられていて、どうやらあの穴の中に胎内観音があるようです。
行けるなら行かないともったいないということで、まずはカミさんがチャレンジし、続いて原付があがってみました。
しかし、穴の中には「胎内観音」を祀っていたと思われるやぐらがあるだけで、肝心な観音像はありませんでした。
その他に別段見るものもなかったので降りる事にしたのですが、登りと違って鎖場の降りは結構怖いものがあります。
それほどの高さではないものの、鎖をつかみながら、足場を探して下の方を見ると目がくらみそうになります。。。
とりあえず無事降りきって、登山を再開。
登り続けていると、今度は「月光坂」と書かれた標識が出ていました。
確かに月明かりに照らされたら幻想的な感じになりそうな場所です。
・・・もっとも夜中になんて怖くて登る気にはなりませんが。。。w
月光坂を登り切ると、今度は大きな岩の斜面が立ちはだかっていました。
その斜面を階段状にくりぬいた足場が一直線に続いています。
それを登り切ると、岩の軒下のような所に石仏が沢山並んでいる場所に出ました。
その脇に建つ小さなお堂に「奥の院まであと一歩」と書かれた札がかけられていて、よし、もうひと頑張り、 と息を整えて最後の登りに取り付こうと思ったとき、先行する二人が、
「あ!着いた~!!」
と、歓声をあげました。
ひと足遅れて原付も登り切ると、切り立った崖の上に出て一気に見晴らしがよくなりました。
雲が多くて必ずしもいい景色とはいいがたいですが、それでも頂上に上り詰めた達成感もあって、感動もひとしお。
せっかくなのでパノラマ写真を作ってみました。
頂上から少し尾根伝いに進んだところに「大日如来」の像があるという事なので行ってみたのですが、これがまた。。。
大日如来の像はこの岩山のてっぺんに安置されており、またしても鎖場です。
なぜかカミさんから、「今度は原付が最初に行ってよ。」といわれたので、先陣を切って登ってみることに。
いや、さっきもそうでしたが、登りは平気なんですよ。。。
というわけで上に登り切ると、大日如来の像が鎮座していました。
しかし、良くこんな所まで持ち上げたものだ。。。
上から下を見ると、こんな感じです。
大日如来からの景色は更に開け、これまた格別な眺めが得られます。
狭いながらも3人くらいなら立てるスペースが有ったので二人を呼ぶと、Yちゃん、カミさんの順に登ってきました。
登ってくる様子を写真で見ると、結構ハードっぽい感じになりますね。
本人は体が安定しているので、さほど恐怖感はないのですが。。。
無事3人登りきり、ひとしきり絶景を楽しんでから、次は反対側にある「お船観音」 へ行ってみることにしました。
で、降りるときがまた怖い訳です。。。
どうにか降り切って、今度は岩尾根に沿って反対側へ歩いていくと、尾根が途切れる所のほぼ先端に、
静かにお船観音が祀られていました。
なぜ「お船」かと言うと、この岩尾根を船に見立てると、この観音様が丁度舳先に立つ水先案内人のように見えることからそう呼ばれている訳です。
お船観音からみたその船。
こうやって見ると結構な崖っぷりが良く分かりますが、先端が切り立っていないので、和歌山の三段壁のような一瞬たりとも気を抜けないような恐怖は余り感じません。
もちろん万が一気を抜いて転落したら死ぬという点では危険さ加減に違いはないのですが。。。
しかし、天気が良ければこの風景を眺めながらコーヒーなんかを淹れたらさぞ美味かろうと思います。
コンロくらい持って来ればよかったかなぁ~。。。
ちなみにこの岩は砂岩か泥岩で出来ていて柔らかいせいか、岩の至る所に登頂した記念に彫ったと思われる名前がありました。
しかしその名前すら判別が難しくなっているものもあり、風化の早さが見て取れます。
まぁ、そんなわけで、無事雨に降られること無く頂上まで登れました。
カミさんも大いに満足出来たようです。
雨が再び降り出す前にぼちぼち山を降りることにしました。
実は登るよりも降りるほうが怖いものなのですが、前述の通り、ここは思ったより足場がしっかりしていたので特に問題もなく無事下山できました。
麓まで降りて、登る時に見かけていた観音堂にも寄ってみることに。
京都の清水寺のような懸造(がけづくり)になっていて、脇の階段から舞台に入れるようになっています。
しかし、背後は岩山、周囲は鬱蒼とした木々に囲まれて見晴らしはあまりよくありません。
建物の背後にはちょっとした洞穴があり、そこに組まれた櫓の中には地蔵が安置されていました。
その背後に見える模様、どこかで見たことがあるなぁ、と思ったら竜串の見残し海岸にあるチェーン岩ですね。
あの岩は風波に揉まれたことで、独特な模様が刻まれたとのことですが、この辺りもかつては浅い海であったと言われているので、同じ理由で付けられた物かもしれませんね。
寺の本堂の前まで降りてきて、カミさんがふと後ろを振り返り、
「さっき、あそこに登ってきたんだねぇ。」
とため息を漏らしました。
つられる様に振り返ると、さっきみたお船観音が向こうの崖の上に小さく見えました。
ここから見ると、上から見た時以上に船の上にいるような雰囲気が出ています。
家に帰ってきてから調べたら、奥の院まで登れない人もここから参拝できるようになっているそうです。
これで、般若山登山も無事終了。
十分に体を動かして、お昼の豚みそ丼もきっちり消化できたようなので、今度は両神の農協に併設されている「こんにゃく村」 に行ってみることにしました。