奇妙な下町散歩 - 1(2012/09/22)

— けったいなハンバーガーショップ —

葛飾区に「立石バーガー」という、とある筋には良く知られたハンバーガー屋があるのですが、10年近く前にネット(多分デイリーポータルZだった気がするのですが検索しても出てこない。。。)の記事でその店のことを知って、何だかケッタイな店が有るものだなぁ、と妙に印象に残ったのですが、当時住んでいた家からは遠くそれ以上調べることも無くすっかり忘れ去っていました。

先日、デイリーポータルZのライターの方(北村ヂンさん)が、立石バーガーを訪れた記事を掲載されて、久々にその名前を思い出したのですが、記事によるとお店のケッタイさ加減は相変わらず、どころか更にパワーアップしているらしく、経費削減のために空調も照明すらも切り、崩れ落ちた店の看板を修復することも無く、廃墟状態になりながらも未だに営業を続けていることを知り衝撃を受けました。

詳しくは、上記リンクの記事を読んでもらった方が早いと思うのですが、この店のケッタイというか異様なところは、草臥れまくった外観もそうなのですが、店の入口に面して設置されている、怪しげな自動販売機です。

この自販機、何より特徴的なのは、自動を謳いながらその挙動は、店内で店長自らが釣り糸をコントロールするという極めてアナログなロジックによるもので、薄暗い店内の至るところに釣り糸が張り巡らされたその光景はちょっとした異世界のようであり、ゆえにこの店を知る人ぞ知る有名物件たらしめているものでもあります。

以前食べに行った「菊や」の店長もそうですが、子供だましのアイディアを真剣に考えて、できるだけお金をかけずに実践しているうちにこんな事になってしまった、というのがこの状況を説明するのに一番適当だと思うのですが、ハイテクに頼ることなく、また途中で立ち止まって振り返る事もなく、曲がりなりにもそのアイディアを完成の域まで高めているところがこの手の店長さんの何より凄い所だと思います。

まぁ、おかげでフツーの大人は近寄りづらい怪しい雰囲気を放つことになってしまうのですが。。。

あの店ってどこにあるのかな、と思って記事に記載された住所から引いてみると、何気に最寄り駅は堀切菖蒲園で、今の家から案外近い場所に所在していることに気付きました。

「立石」を名乗るくらいなので、京成線の立石駅の近くにあるのかとばっかり思っていたのですが。。。
というか、水戸街道に抜ける時の抜け道の途中に有って、実は通るたびに毎回その姿を見ていたことが判明。

言われてみれば、店の前の交差点でたまたま赤信号で停まった時なんかに、ケッタイな建物があるなぁ、と思いながら見ていた建物があったのですが。。。

あれが立石バーガーだったのかぁぁぁ!!!w

9月9日には北村氏がその店の一日店長をされるということで、近所だしその様子を野次馬に行こうかとも思ったのですが、当日は都合がつかず結局行けませんでした。
もっとも、WEBで告知を出していたせいか、当日は開店前に店長が作り置いたバーガーが早々に全て売切れになり、わざわざ某ハンバーガーショップのハンバーガーを購入して販売するほどの大盛況だったようなので、人ごみ苦手な原付としては、行かなくて良かったかな、と思ったりもした訳ですが。。。

北村氏は、一日店長をされた時に落ちたままになっていた店の看板を掲げる権利も買われたそうで、後日その看板も作られたそうなのですが、記事には店に掲げた写真が掲載されていなかったので、どんな風になったのか散歩がてら見に行ってみることにしました。

いつも車で通っている所を歩いて通るのはなかなか新鮮なもので、車で通るとあっという間の堀切橋も歩いてみるとなかなかに骨が折れる距離があることを実感させられます。

— うらばなし —

堀切橋を渡り、そのまままっすぐ行くと、立石バーガーに到着。

20120922_151136

北村氏が描き上げた真新しい看板が掲げられ、場所はすぐに分かりました。
見るからに異様な光景を見せる半ば廃墟と化した建物と真新しい看板のコントラストがまた何とも。。。

相変わらず節電中で、消灯した店内は薄暗く、もちろん空調も切られていました。
先客と言うか屯している女性が一人、イスに腰掛けていました。

店主はすぐに奥から出てきて「いらっしゃいませ」と一言。
ヘンテコなアイディアを具現化しているくらいなので、もっとバイタリティあふれる感じの人なのかと思っていたら、予想外に穏やかそうな雰囲気の方です。

店の中は小さなショーケースとカウンターテーブルに椅子が4客ほどのこじんまりとしたもので、記事にも出ていた電源を切ったままにされた飲み物のクーラーもありました。

9月も半ばを過ぎて朝晩はだいぶ涼しくなってきたというのに、店内はエアコンを切っているせいで未だ蒸し暑く、すぐに汗が噴出してきました。

こんな調子で肝心のハンバーガーは大丈夫なんですかね??

店主の挨拶とほぼ同時に後ろから次の客が入ってきました。
その人は店主と顔見知りのようで、「お、珍しく今日は満員だね!」と軽口を叩いていました。

「いや、こないだ、インターネットの何とかって言う所の人に一日店長やってもらったんだよ。」

「あそうなんだ、売れたの?」

「結構売れたみたいだね。なんか売り切れちゃって追加を買いに行ったみたいよ。」

「へぇ、なんで?沢山作らなかったの?」

「だってさ、売上はその人の儲けになるから沢山作ると赤字になっちゃうのよ。。。」

新しいバンズの生地をこねながら、後ろの男性とそんな会話を交わしていました。
件の記事の中では、そんなに客来ないから、と少な目にしか作られていなかったことに対して、北村氏が葛藤するくだりが出てきますが、アレの種明かしはこんな理由によるものだったようです。

本気か軽口かは分かりませんが。

そんな男性と店主の話に耳を傾けながら、件の記事の中でも触れられていた手動自動販売機(!)の仕組みを初めて目の当たりにして、きょろきょろと見回しているうちに、カミさんが早くも注文するものを決めたようです。

20120922_151017

折角だから自動販売機を使っての購入も体験してみたかったのですが、そこは大人のたしなみとしてやめておきましたw

20120922_150947

カウンターのショーケースには7種類のバーガーが並べられ、そのうち一つは売り切れになっていました。
いっぺんに全部買うのもなんなので、三種類選んで出してもらいました。

料金は三種類とも全て一つ100円とかなり良心的なプライスです。
記事でも触れられていましたが、この金額を頑なに守るための結果としての節電や半廃墟化ということになっているわけで、もちろん続けていくためには並大抵の苦労ではないと思われるのですが、その方向性がややおかしい気がしなくもありません。。。

— ちゃんとウマイ! —

それはさておき、カウンター越しに店主に300円を支払って、ハンバーガー3個が入った袋を持って店を後に。

20120922_152421

で、これをどこで食べようかと、住宅地をさまよい歩いていたら、体の良い公園を見つけました。
そのベンチに腰掛け、袋からごそごそと取り出して早速試食してみることに。

20120922_152145

まず一つ目にあけたのがチキンバーガー
あのとんでもない雰囲気を醸し出す店主の作ったハンバーガーのお味はいかに!

・・・記事を既に読んでいるので、あおってもしょうがないのですが、味は至って普通。
鶏肉のハンバーグとレタスがバンズに挟まり素朴ながらも飽きない味です。

20120922_152454

続けて取り出したのがポークバーガー
これはチキンがポークに変わり、海苔が一枚乗せられたちょっと変わった組み合わせです。
もっとも、味はチキンバーガーと基本的に同じです。

ポークの方が脂が乗っている分、パサパサ感が少なくて幾分食べやすい印象です。

20120922_152830

そして、最後がお店のタイトルチューンとも言うべき立石バーガー
これだけ袋が紙袋に入れられていて、他のものとは一線を画しているという意気込みが伝わってきます。

その味も他二つと異なりケチャップで味付けがされているもので、3つ食べた中では一番二人のウケが良いものでした。

それぞれ半分にして二人で分けたのですが、ご覧のとおりやや小振りなサイズなので、腹に溜まるほどでもなく、おやつ感覚で食べられます。
公園で食べていると流石に蚊にたかられてしょうがなかったので、食べ終わってすぐに退散。

Posted by gen_charly