ほぼ日本一周ツアー【9】(2000/09/20~09/21)
道後温泉:
伊予鉄道は、松山市内で鉄道線と軌道線を運行している鉄道会社である。開業は古く、夏目漱石の坊ちゃんにも登場する由緒ある鉄道だ。
最近は当時の列車を再現した、坊ちゃん列車なるSL風の列車を走らせていることで知られているが、自分的には国内では珍しい、鉄道同士の平面交差がある鉄道会社というイメージが強い。その平面交差の場所は時間があれば見に行きたいと思う。
路面電車に乗ってゆらゆらと揺られていると、終点道後温泉駅に到着。そこから少し歩くと道後温泉がある。道後温泉もまた古くから日本を代表する名湯として知られているが、自分は初訪問なのでどんな場所なのかよくわかっていない。何となく山あいに道後温泉という温泉街があって、その中に「●●の湯」みたいな鄙びた共同浴場があるイメージなのだが・・・。
案内に従って土産物屋が立ち並ぶアーケードの下を歩く。起伏もなく、周囲は店舗や住宅が密集していて山がある感じは全くしない。そして温泉街である感じもあまりしない。道合ってるのかな?

アーケードを抜けた先に趣のある古めかしい建物があり、道後温泉と書かれた看板が掲げられていた。これが道後温泉なのか。山あいの温泉街をイメージしていた自分にとって、それがこんな町中にあることはかなり意外な感じがした。
そもそも目の前の建物が共同浴場のそれである感じがない。なので建物を見て最初に考えたのが、共同浴場はどこか別の場所にあって、ここは観光案内所みたいな施設なのだろう、だった。となればここで、さあ、風呂に入るぞ!なんて雰囲気を発散しながら暖簾をくぐった日には、周囲から怪訝な目を向けられること請け合いである。というわけで、その目指すべき共同浴場の場所を教えてもらいにきたという体で、傍らの窓口を覗いてみた。

こちらが質問を切り出す前に、窓口にいた人から入浴ですか?休憩ですか?と聞かれた。えっ、ここで入浴できるの?それよりも休憩ってなんだ??
自分の頭にクエスチョンマークがたくさん並んだ。なんて返せばよいだろうか。
「休憩、って何ですか?」
とりあえず休憩が何であるかを確認する必要があるだろう。そう返すと窓口の人は、休憩を選ぶと2階の座敷で休憩することができますと答えた。なんか分かった、ここは湯屋なのか。入浴だけではなく中で休憩したりもできるから、建物がただの共同浴場のような趣とは違っていたのか。
正確な値段は失念したが、入浴だけだと400円で、休憩すると2,000円くらいかかるらしい。それならとりあえず入浴でと答えて料金を支払った。浴室の場所を案内され、それに従って進んでいくと、確かに男湯の入口があった。くぐった先は自分がイメージしていたとおりの共同浴場のそれだった。脱衣して浴室に入ると、中央に湯舟があってその周囲にコの字型の洗い場がある。お湯は熱め。長時間浸かることはできないが短いサイクルで出たり入ったりして、徐々に体を温めた。
のぼせる前に風呂から上がったが、15分くらいしか入っていなかった。まぁ熱いお風呂だからそんなもんか。噂に違わぬ名湯であった。休憩所で休憩をしながら風流を楽しむのは、もう少し歳を取ってからかな。

風呂に入っている間にすっかり日が暮れた。相変わらず温いが、昼間よりはマシになった夜風に当たって、緩やかに湯冷まししながら、再び路面電車に乗ってホテルに戻った。
昨日、山口で目的地に設定した松山に辿り着いた。この先の予定はまだ何も決めていない。ホテルの部屋で夕食を食べながら、ひとまず明日以降の計画を考える。この辺りで鉄道といったら高松や広島といった辺りに行けば沢山走っているが、その辺は数年前に既に訪問済みなので、鉄道に重きを置かず、他に行ってみたいところがないか考えた。
その結果、候補が2ヶ所挙がった。ひとつ目は高知、ふたつ目は松江である。高知には土佐電鉄という路面電車を運行している会社があり、そこを走る車両は、路面電車の博物館という異名を持つほどバラエティに富んでいるという。そして松江には一畑電気鉄道というローカル私鉄がある。そこを走る車両は確かかなりクラシカルな車両だった気がする。
どちらもついでで行けるような場所ではなく、東京から行こうと思ったらかなりの覚悟がいる。こんな時でもなければ行く機会もなさそうなのはどちらも一緒。
ひとしきり思案した結果、松江へ向かうことにした。高知も訪問のハードルが高い場所であることには違いないが、それでもそれなりの都市なので、今後も訪問の機会はありそうな気がする。一方、松江も山陰を代表する都市ではあるのだが、高知と比べたら幾分控えめである。どちらより行く機会が少なそうかと考えたら、松江の方がその機会が少なそうな気がする。そして松江に行くと、出雲市駅から出発するサンライズ出雲という寝台電車に乗って東京に帰ってくることができる。これは前から一度乗ってみたいと思っていた列車だ。そういった比較検討により松江を目指すことにした次第。
全国でも数を減らしつつある寝台列車。大抵はブルートレインという客車の列車だが、サンライズ出雲は、寝台「電車」である。しかも最新鋭の電車で運行されているので、その乗り心地含め興味がある。まぁチケットが押さえられなければ、そんなプランも絵に描いた餅になってしまうが、平日だから、仮に個室が満室だったとしても、ノビノビ座席という船の雑魚寝部屋みたいな車両も連結されているので、そっちなら多分空いているだろう。
伊予鉄道:
2000/09/21
昨晩は久々に自転車に乗って体を動かしたので、朝まで熟睡だった。今日は前述のとおり島根県の松江へと向かう。松江への移動を開始する前に、少し伊予鉄道の写真も撮っておきたい。とりあえずまずは程よい時間にホテルをチェックアウトし、歩いて伊予鉄道の大手町駅に行ってみることにした。そこに昨日少し触れた路面電車(松山市内線)と鉄道線 (高浜線)の平面交差があるのだ。
荷物は松山駅のコインロッカーにデポジットしたので、今日は身軽な態勢での散策である。

こちらがその場所である。2本の線路が直角に交差しているのが分かるだろうか。
鉄道車両はその構造上すぐに停まることが難しいので、踏切では通常道路側の交通を遮断して、鉄道が優先で通行できるようになっている。だが、その道路に路面電車が走っていたらどうなるか、というのがこの場所である。どちらも鉄道である。ではどちらが優先なのか。
正解は鉄道線が優先である。軌道線(路面電車)を走る車両は、基本的には自動車など、道路を走る乗り物と同じ扱いを受ける(なので、併用軌道上では、路面電車も自動車用の信号の指示に従って運行される)。つまりここの場合、鉄道線に列車が近づいている時に路面電車がやってきたら、路面電車の方が止まって鉄道線をやり過ごすようになっている。
路面電車が鉄道線車両の通過を待っている絵を撮りたいと思ってやってきたが、そうタイミングよく列車がやってこないのが難しいところ。結局、上の写真のようななんか中途半端な写真しか撮影できなかった。
その後もうひとしきり歩いて、伊予鉄道の松山市駅へと向かった。松山市駅は伊予鉄道の3本の鉄道線が集まるターミナル駅だ。ここから高浜線、横河原線、郡中線の3本がそれぞれ北西、南東、南西の方角へ路線を伸ばしている。
せっかく伊予鉄道の駅に来たのだからどれかの路線に乗ってみたいと思うのだが、行先のアテがないので、とりあえず駅に着いてすぐにやってきた電車に飛び乗った。乗ったのは郡中線の列車だったのでそのまま終点まで行ってみることにした。

終点郡中港駅まで20分ほどのミニトリップ。終点で写真を撮影した。
2つ上の写真もそうだが、伊予鉄道の鉄道線車両は京王線の中古車両が多く使われている。写真は両方とも800系で、元京王線の2010系である。2つ上の写真の方が本来の先頭車だが、運転台を増設した方は京王線の5000系風の前面になっている。ただし5000系は幅広車体で裾が絞られているが、2010系は狭幅なので裾絞りがない。
なので5000系風の伊予鉄道のオリジナルということになるのだが、思った以上に精密に再現されている。なぜそこにこだわったのだろうか。

それはさておき郡中港駅まで来たのはいいが、前述のとおり特段のアテがあって来たわけではないので、駅前を散策するでもなくそのまま折り返しの便で戻ってきてしまった。
松山市駅からさらに市内線に乗ってJRの松山駅へ戻った。実は郡中港駅のすぐ隣にJRの伊予市駅があるのだが、訪問時はそのことを知らなかったので未訪に終わった。最初に知っていればJRの方に乗って戻ったのに惜しいことをした。