富士山リベンジ【3】(2013/08/23)

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宝永火口に到達した。登り始めてからまだ一時間ちょっとである。
富士山を南側から見ると向かって右の山裾に大きく口をあけている火口が宝永火口である。富士山のシルエットの中でも欠かせないアクセントになっているこの火口、本体の偉大さから比べると幾分おとなしい印象がないこともないが、近くで見るとこれが実にダイナミックで、スケールの大きさに息をのむ。

上の写真でも分かるとおり、この先、火口底を抜けて馬の背と呼ばれる火口縁まで、一度の折り返しだけで一気に登っていくルートを描いている。この登山ルートの見どころの一つである。

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火口の中心まで来ると巨大なすり鉢の底にいるような不思議な感覚になる。カミさんも「富士山にこんな景色があったんだ!」としきりに感心している。

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ただし、すり鉢状な場所だけに時折落石が発生するらしく、Youtubeなどでも落石の様子を捉えた動画がアップされている。
登山道の真ん中に一抱えもある溶岩が転がっていた。割と最近落ちてきたものだろうか。こんなのに直撃されたらただでは済まないだろう。

その予兆は音で知ることが出来るらしいので、耳をそばだてながら慎重に歩みを進めてゆく。

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登山道に角度がつき始め、歩幅が徐々に狭まってくる。
この辺りがプリンスルート最大の難所である。いかんせん足場が踏み固められていない砂地なので、足を取られて体が思うように前へ進んでいかない。

そこに見える目的地になかなかたどり着けないもどかしさに、精神的に参ってくる。前を見ると絶望的な気分になるので、ほとんど足元だけを見ながら登って行く。振り返るとそれなりに登ってきたように見えるのに、前を見ると馬の背は全然近づいてこない。。。

まだ、体力が十分に残っている今だから我慢できるが、後半戦にこれが出てきたらギブアップしそうだ。

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牛歩を余儀なくされ、ノロクサと進んでいると、少し後ろを進んでいたグループに抜かされた。
抜き去りざまに、

「同じ筋肉ばかり使っていると疲れるから、足の向きを変えながら登った方が楽ですよ」

と貴重なアドバイスをもらった。そのアイディア、いただきました。
カニ歩きのように進行方向に対して少し斜めに足を出しながら登ってみたら、確かに幾分楽な感じだ。

そんなこんなで、一時間ほど蟻地獄のような登山道と格闘し、ようやく馬の背にたどり着いた。

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馬の背から振り返ったところ。
正面に見えるピークが宝永山の山頂だ。あとほんの少し登れば行けるのだが、ここまでの砂のぼりで体力・精神共にかなり消耗してしまったので行かなかった。

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斜面にはかつての噴火で形作られたと思われる、溶岩流の跡のようなものが斜面を這う竜の如く地中から頭を出していて、その神秘的な造形にちょっとゾクッとした。

ここから眺める火口は実に雄大で、カジュアルに登山客を受け入れているいつもの富士山とは違う一面を見せている。

さっきのグループの先頭を歩いていたおじさんが、後続をおいてきぼりにして一足早く馬の背にたどり着いて休憩中だった。我々も傍らで休息しながら話しかけたところ、おじさんは4度目の登山だが他の人たちはみんな初登山なので、ガイド役を買って出たそうだ。

「富士山は何度も登る山じゃないけど、一度くらいは登ってもらいたいよね。」

というようなことを話していた。一度も登らぬ馬鹿に二度登る馬鹿、という格言もある。何度も登らなくていいけど、確かに一度くらいは登ってみて欲しいとは思う。

息が整う頃、おじさんの後続メンバーが追い付いてきたので、一行が先に行くのを見送って、我々も出発。少しした頃、

「あたしは、10回登っているけどね」

と毒づいていた。そこで張り合ってどうする?と思ったが、口には出さなかった。

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登山道は馬の背をまたいで、10mばかり下の御殿場口の下山道に合流する。
上の写真は下山道から振り返った写真で、左側の道が下山道、正面奥に見えるピークが宝永山山頂となる。

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下山道を逆行するように50mばかり登ると再び分岐が現れる。プリンスルートは右に進む。
案内は小さい看板のみで、しかも右へ進む道は踏み跡があまりはっきりしていないので、一瞬どこを進んで良いのか迷ってしまった。天気が悪いと見逃してしまいそうだ。

ちなみに、ここを見逃すと宝永火口以上に歩きにくい、砂地の下山道を登る羽目になるので要注意である。

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この分岐から先は、踏み跡らしい踏み跡すらない、あまり整備されていない道を進む。ルートは岩に黄色のペンキで矢印が引かれている。ガイドロープすらないワイルドなルートだ。
ほとんど標高は一定なので、歩きづらいといったことはないが、まぁとにかくひと気のない寂しい道である。。。

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そんな心細くなる道も、10分ほどで御殿場口登山道の六合目に合流して終わる。プリンスルートのオリジナルコースはここまで。あとはひたすら御殿場口登山道を辿って頂上を目指す。

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御殿場口登山道は道幅も広く、よく整備されている。プリンスルートとは雲泥の差だ。
一番不人気なルートとはいえ、メインをはる登山道としての意地を感じる。
距離が長いだけで、登りやすさでいえば他のルートとも遜色ないと思うが、冒頭で触れたとおり山小屋が不便なのがネックである。

六合目には山小屋がなく、次の山小屋は七合目の途中にある。
とにもかくにも、七合目の山小屋までは黙々とつづら折れの登山道を登って行くしかない。

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登山道を進んでいくと、時々広い道を横切る。これは、ブル道というブルドーザー専用路だ。ブル道は登山道と二重らせんを描くように何度も交差するのだが、広くて登りやすそうだからと、この道に入り込んでしまうと、道幅いっぱいにやってくるブルドーザーとご対面してしまうので要注意である。

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ブル道を渡ってすぐ、とうとう標高3000mを突破。
距離ベースでは全行程の三分の二弱の距離を進んだ。残り三分の一強あるのでまだまだ先は長いが、距離だけの問題ではない。傾斜も厳しくなってくるし、いよいよ空気も薄くなってくるので、体力的にはむしろここからが本番という感じである。

 

Posted by gen_charly