沖縄離島探訪【4】(2006/11/21)
西表島へ:
2006/11/21
一昨日の完徹による寝不足もあって、布団に入ったらすぐに眠りに落ちて朝までぐっすりだった。
という訳で2日目。今日は8時過ぎの船で西表島へ向かう事になっているので6時に起床。早起きだ。
ホテルは朝食付きプランだったので1Fの飲食スペースに行ってみた。
メニューは焼き立てパン4種類とポテトサラダ。そのほか飲み物など。正直品数は物足りなかったがパンが美味しくて何回かお替りしのでそれなりに満足。
しかし、もう少し美味しそうにレイアウトできなかったものか。。。
チェックアウトを済ませてフェリーターミナルに移動。目と鼻の先なので移動は楽ちん。
この港は石垣島と周辺離島とを結ぶ船が発着する乗り場なので、別名離島桟橋と呼ばれている。
西表島を始め、竹富島、小浜島、黒島、波照間島、鳩間島と周辺離島への多数の航路が発着しているので、なかなか賑やかである。
特に西表島方面は大原と上原への航路があり、八重山観光と安栄観光の2社がしのぎを削っている。それぞれがおよそ30分おきくらいの頻度で出港しているので、なんだかんだ10分おきくらいにどこかしらへ行く船が出港していく。ちょっとした都会の朝のラッシュのような慌ただしさだった。
我々が乗船するのは8:10発の上原行きの安栄観光のフェリーである。今回手配した宿がそこにあるためだ。
上原港は島の北側に位置し、もうひとつの港である大原港は島の東側に位置している。
石垣島と西表島の間に広がる海は全体的に水深が浅くサンゴ礁が広範囲に分布していることから、石西礁湖(せきせいしょうこ)と呼ばれている。大原行きはその石西礁湖の上を通過するので風波の影響を受けにくいのだが、上原行きは外海を経由するので海が荒れると欠航しやすいらしい。
台風時を除けば気候が割と安定する夏場ならまだしも、季節風が強く吹く冬場は海が荒れる日が多く欠航回数も増えるらしい。今日はそのどちらとも言えない11月下旬だが果たしてどうだろうか。念のため、もし欠航した場合どうなりますか?と宿泊先に問い合わせたら、もし大原に行く便があるなら大原からバスで来れるが、両方とも欠航の場合はキャンセルとなります、という回答だった。
昨晩は降雨もあってあまり天気が優れなかったので、今日の出港状況のことがずっと気になっていたのだが、券売所で係員に確認したところ今日は予定どおり出港とのことだった。まずは一安心。
乗船券を購入後程なく乗船開始のアナウンスが流れたので乗船。荒れた海だった場合に備えて船酔いを回避しやすいデッキに陣取る。
デッキにいれば目についた景色の写真も撮りやすいので、自分にとっては一石二鳥。
出港して港内から出ると船はエンジンを唸らせながらどんどん加速していく。高速船というだけあってかなりのスピードが出ている。波をひとつひとつ拾うなんてことはなく、水切りの石みたいに波の上を跳ねながら進んでいくのでなんだか面白い。
しばらく進むと西表島の島影が近づいてくる。手つかずの自然が残る島、と聞いていたが、確かにこうしてみると殆ど人のいそうな気配がない。そんな陸地がどこまでも続いているように見える。
反対側に目を向けると沖合に小さく鳩間島の姿が見えた。鳩間島も行ってみたい島のひとつである。
この島はこれと言った産業がなく過疎化が進行している。産業がないということは働き口がないということである。即ち子供が学校を卒業しても就職先がないので島を離れざるを得なくなる。もちろん高校や大学もないので進学するにしても同様だ。そして一旦島を離れると島外に生活の基盤が作られてしまうのでまず戻ってくることがない。子育て世代が戻ってこなければ次の世代の児童も減少する。やがて島の分校が廃校の危機に直面した。
分校が廃校となってしまうとこの島で義務教育を受けられる場所がなくなり、子育て世代が戻ってくる可能性が絶たれる。残った島民は高齢化していく一方となり、島の緩慢な消滅が確定する。
そのため島民の間で学校だけは何としても残そうと知恵を絞り、その結果編み出された奇策が離島留学制度だった。つまり本土や沖縄本島などの遠方から児童を島に留学させる試みである。運用を開始してみたところ、都会でうまく人間関係を築くことが出来なかった子供などが疎開する先としてのニーズにマッチしたため、小学校の廃校を回避することができたそうだ。
この逸話をモチーフに作られたのが、ドラマ「瑠璃の島」や、漫画「光の島」である。
さらに進むと沖合に何やら真っ白い島が見えた。船の場所からさほど離れていない位置なので、それほど大きなものではない。
船から見ている時にはこれがなんだかさっぱりわからなかったのだが、帰宅後に調べてみたらバラス島と言うらしく、海流によって運ばれたサンゴや砂が吹きだまってできたものだそうだ。
ご覧のとおり人工的なものは何ひとつなく渡船などもないので、上陸したければシーカヤックなどのツアーを利用するほかないとのこと。しかしここは外洋なのでそれなりに波がある。シーカヤックなんかで渡るのはかなりの上級者でないと難しいかもしれない。
西表島上陸:
そしてバラス島を横目に通過していくと、程なく上原の港に到着。
港の建物にデンサターミナルと書かれていた。デンサってなんだ?
自分が知っているデンサは、電サ、即ち日立電子サービス社の略称である。まぁそれじゃないよな。
これも調べてみたら西表島にはデンサー節という島唄があるらしく、そこから命名されたものらしい。
ということで西表島に上陸。島旅38島目となった。もうすぐ40島。
わざわざ言う話でもないかもしれないが、西表島は「いりおもてじま」と読む。天然記念物のイリオモテヤマネコの島として有名なので、まぁほとんどの人はイリオモテと問題なく読めると思うが、そもそもなぜ「西」と書いて「いり」なのか。
それは沖縄の方言がそうなっているからだ。沖縄では方位を表す言葉が東は「アガリ」で西が「イリ」となっている。その言葉から想像できると思うが、日の出日の入りから取られたものである。
ちなみに南は「ハイ」といい、北は「ニシ」という。つまり沖縄で道を聞いて「ニシの方に行って・・・」と言われたら北に向かわなければならない。ややこしい。
それはさておき。
西表島は沖縄県内で沖縄本島に次ぐ大きさを誇る島である。だがその割に人口はわずか2000人ちょっとしかいない。島のほとんどが山地になっていて耕作に適する平地が少なかったことと、古くからマラリアが発生していたので人が定着できなかったせいだという。そのため前述のとおり上原と大原という2つの集落の他は殆どが手つかずの自然となっている。
かざぐるまのピナイサーラの滝とカヌーツアー:
港の待合所を出た所に今回のカヌーツアーの主催者であるかざぐるまの人が待っていて合流。バンに乗り込んで5分ほどで事務所に到着。
ここで参加申込書の記入や道具のレンタルをしてもらって、カヌーの出発地点まで車で移動。
出発前にスタッフから水濡れして困るものは置いて行ってくださいと言われた。操作を誤るとカヌーが転覆するからだ。水濡れの問題ももちろんあるが、うっかり海中に落下させてしまうと回収できなくなる可能性が高い。ということで今回、水中撮影対応の使い捨てカメラを持参したのでデジカメや貴重品は事務所にデポしておいた。
そんな訳でここから先、ツアー中の写真は全て使い捨てカメラで撮影したものをスキャンした物なので画質がざらついている。見づらいものが多いと思うがご容赦願いたい。
今回我々が申し込んだのは、カヌーに乗ってマングローブ林の中の水辺を進んだのち、ジャングルトレッキングをしながらピナイサーラの滝の上まで登るという盛りだくさんのコースである。
昨晩のエントリにも書いたが、自分はこれまでこういう類のツアーに参加したことがない。ツアー中にボッチになりたくないからだ。一人で行けばボッチになりそうだし、そんな参加者がどうにも要領が悪かったら他の参加者の足手まといになって場を白けさせてしまいかねない。そんな立ち位置に甘んじる自分も許せない。なのでもし今回一人旅だったらやっぱりこういうのには参加しなかったと思うのだが、一方のカミさんは逆にこういった体験モノが好きらしい。
やりたいと言っているのに、やめとこうよと言うのも甲斐性がなさすぎるので、今回思い切って申し込んでみたのだが、果たして楽しめるだろうか。とはいえしり込みしていても始まらないので、思い切ってやってみよう。
カヌー初挑戦:
まず最初は陸上でパドルだけを持って漕ぎ方のレクチャーを受ける。基本的には右、左と順番にパドルを水面に入れて後ろにかくことでカヌーが進んでいく。曲がる時は曲がりたい側のパドルを水面に差し込んでおくと、パドルに当たる水が抵抗になって自然と方向を変えるそうだ。なるほど。
バックはパドルを反対回しで漕ぐだけだが、その状態で曲がりたい時は少しややこしい。基本的に曲がりたい側のパドルを水面に差し込んで抵抗を作るという動作自体は一緒なのだが、後ろを向いているのでとっさにどちらのパドルを差し込めばよいか混乱しそうだ。
もっとも車を運転する人ならバックしながら車庫入れとか普通にやると思うので、それと同じ感覚と言えばイメージしやすいだろうか。
で、そこまで話を聞いたらもう乗船だそうだ。脳内でのシミュレーションは出来たが実際にイメージどおりに操作できるのだろうか。
ガイド氏にカヌーを押さえてもらって恐る恐る乗り込む。まずは立ったままカヌーに足を置くのだが、船底が丸いので殊の外フラフラと動く。立っているから余計だ。バランスを崩さないように注意しながらゆっくり腰を降ろし体育座りような体制になるとようやくふらつきが治まった。
ガイド氏の後についてゆっくりとパドルを漕いでみる。力を入れなくても水中にすっと差し込んで、そのまま流れに合わせて軽く後ろに動かしてやるだけでもゆるゆると進む。
最初は緩やかな動きで右に曲がったり、左に曲がったりして、パドルが水を掻く感触とカヌーの挙動に意識を向けて感覚をつかんだ。
この辺りは写真を撮影していない。まだ先の行程が見えないのでフィルムの浪費を懸念したのと、水に濡れてもよいカメラではあるが、万一落下させてしまったら取り返しがつかなくなるので、もう少し慣れてからカメラを出そうと思っていたからだ。
両側には密林と呼んで差し支えないレベルでマングローブが密生している。木々を割るように川の流路があって、我々はその上に浮かんでいる。この辺りはほぼ河口なので水の流れは殆どなく、パドルを軽く掻くだけでカヌーはスルスルと滑るように進んでいく。これは面白い!
操作に慣れてきたので少し余裕が出てきたのでここで写真を撮ってみた。カメラは防水バックに仕舞って足元に置いてある。なのでその袋から取り出そうとした時に軽くふらついた。今思えばそれで転覆するようなふらつきでもなかったのだが、一瞬焦った。
どうにかカメラを取り出して半ばメクラ打ち状態でシャッターを切った。カメラを構えるために腕を上げたらふらつくし、上半身をひねってもふらつく。ふらついても転覆しない範囲がまだ掴めていない状態なので、構図を決めることに集中出来なかった。
カメラを仕舞って改めて周囲を眺める。目に見える範囲の全ての物がのんびりとしていて、ユルユルとした空気感の中をゆったりとした動きで漕ぎ進めていく。こんな時間の流れ方を味わうのは久しぶりな気がする。
再びカメラを取り出して撮影。カメラをいちいち防水バックに仕舞っているので取り出す時に時間がかかる。そうしてモタモタとやっているとシャッターを押すころにはガイドもカミさんもどんどん先に進んでしまう。流石に自分を放置して行ってしまうことはないと思うが、ガイド氏が写真なんか撮ってないで早く来いよ、と苛立っているかもしれないので、なるべくつかず離れず進むことを心がける。
少し広くなったところでガイド氏が自分の元に寄ってきて、写真を撮るからカメラを貸してくれと言って来た。
カメラを貸したらこんな写真を撮ってくれていた。夫婦2人でカヌーに乗っている写真は彼にしか写せない。貴重な写真をありがとう。
よく見ると背後の山の斜面にピナイサーラの滝が見える。このあとあの滝の滝上まで行くらしいが道あるのか?
あまり険しい道でないことを願う。
河口付近の広いところまで出たら今度は別の川筋を登る方向に進路変更。ここからは流れに逆らって進まなければならないのでこれまでよりもいくらか頑張らなければならなかったが、とは言ってもほぼ流れがないのでそれほどキツくもなかった。
暫く進んだ所で接岸して上陸。カヌー体験はここまで。やってみたらカヌーは思いのほか楽しかった。これがシーカヤックとかになったら波に翻弄されて船酔いグロッキーになるのが目に見えているが、こうした緩い水域をのんびり漕ぐのはまたやってみたいなと思った。
ジャングルトレッキング:
さて、ここからジャングルトレッキングである。一応歩く道筋はあるのだが足元の状況はあまり良くなかった。結構な急斜面を登っていくので、普段から運動不足な自分は案の定すぐに息が上がり始めた。
途中ガイド氏が近くの立ち木を指さした。その方向を見るとキノボリトカゲが木に張り付いていた。
それをこともなげに尻尾から掴んでカミさんの顔の近くに寄せる。カミさんはこういうのでビビらないので、興味深そうにトカゲに見入っていた。ガイド氏はちょっと期待外れの顔をした。
というかトカゲの尻尾なんか掴んでちぎれないの?トカゲの尻尾切りなんて有名な慣用句もあるほどよく知られたトカゲの生態である。が、このキノボリトカゲは尻尾がちぎれない種なのだそうだ。そんな種がいるなんて知らなかった。
ジャングルの真っただ中をガイド氏の先導で進んでいく。こんな所1人で歩いたら不安で仕方ないが、3人もいるので周りをのんびり眺める余裕もある。まぁ木しか見えないんだけど。
少し進んだ所で再びガイド氏が立ち止まった。傍らの立ち木を指さしてサシマスオウノキであると教えてくれた。
この木は写真に撮ってないが特徴的な根の形状をしている。木の幹の高さ1.5mくらいの所からロケットの土台部分のような板状の根が張り出している。
この根の部分は板根(ばんこん)と呼び、台風などで強い風に晒されがちな南国の木でよく見られるものだそうだ。確かにこれは安定感がありそうな形状である。