九州めぐりと寝台特急はやぶさ乗り納めツアー【1】(2008/11)

この年の10月ごろ、東京と九州を結ぶ寝台特急「はやぶさ」「富士」が来年3月のダイヤ改正を持って廃止されるというニュースが飛び込んできた。

これらは、はやぶさが東京ー熊本間、富士が東京ー大分間をそれぞれ結んでおり、東京から門司までの間は両列車が併結されて1本の列車として進み、門司で切り離しが行われてそれぞれの目的地へとめざす運用になっている。

かつては東京や大阪などから全国各地へ向かう寝台列車が数多く運行されていたが、近年、新幹線、飛行機、高速バスなどの競合が増えたことにより廃止が相次ぎ、もはや風前の灯火となってしまった。東京から西へ向かう寝台列車はこのはやぶさ・富士が最後の砦で(寝台電車としてはサンライズ号が残っている)、これが廃止となるといよいよ西へ向かうブルートレインが全滅となる。


自分は西に向かうブルートレインとして91年に富士に乗車したことがあるが、その時は広島で下車しているのでブルートレインで九州の地を踏んだことはない。東北や北陸方面へ向かうブルートレインはいくつか乗ったことがあるのだが、東北や北陸方面は東京からそれほど離れていないので、大抵夜遅くに出発して早朝に現地に着く。旅情に実感がこもる前に目的地に着いてしまうのでいつも物足りなさを感じていた。

だが、九州までの移動となればその距離は1000キロを超え、20時間弱の列車の旅を堪能できる。一度そんな列車で旅をして、現地到着の暁に遠くまで来たなぁという思いを噛みしめてみたいと願っていたのだが、廃止となればそれも叶わぬ夢となってしまう。これはぜひとも廃止になる前に一度乗車せねば、ということで小笠原から帰還してからまだそれほど時間が経っていないというのに九州旅行を計画することにした。

寝台列車で九州へ行くとなれば現地での移動手段がもっぱら鉄旅になってしまうので、カミさんがノッてこない気がする。じゃあ今回は1人旅で鉄道の写真を撮り集めに行こうかなと考え、その旨をカミさんに伝えたら自分も行きたいと言い出した。

撮り鉄メインの旅というのは撮影のために列車を数本待ったり、撮影の時間以外はひたすら移動したりするような行程になりがちで観光らしい観光がない。そんな一般人ウケしない旅行についてきても面白くないと思うのだが、そんな旅でも余り行ったことがない九州なのでぜひ一緒に連れて行ってくれと言い、挙句の果てに撮り鉄なんかしないで観光地巡りをしようよとまで言われた。

まぁ確かに九州なんてそうそう行ける場所ではない。そこを観光もせず帰ってくるのはちょっとストイックすぎる気もする。とはいえ九州にはこの機にぜひ撮影しておきたい鉄道もある。だったらカミさんを連れて両者をほどよく織り交ぜて適当に観光、適当に撮り鉄、みたいな旅にするか。


そうと決まれば日程は少しでも早い方が良い、何故かというとこういうニュースが流れると最後にこの列車を乗り納めしようとみんながこぞってチケットを求めるので、後になれば後になるほど入手が難しくなるからである。恐らく来年になったらもうほぼ手配できない気がする。なので乗るとしたら今年中だ。だが12月は年末年始の業務で多忙になるのが目に見えているので行けるとしたら11月しかない。

ということで最初は11月最初の連休となる1日~3日をそのターゲットとしたのだが、もう2週間を切っている状況だったので、みどりの窓口で確認したら既に空席がなかった。いや、一般的なB寝台ならまだ空きはあったのだが、自分は今回是非、B寝台個室ソロという席を確保したかった。だがその部屋は個室である上に部屋数が少ないのでまぁとにかく人気で容易に取れないのだ。


次にターゲットとしたのはその次の連休である11月22日~24日の3連休である。この日程だとまだ1ヶ月以上先なので発売開始日のタイミングで窓口に行けばチケットが取れるのではないかと考えた。で、1ヶ月前となる10月21日の朝にみどりの窓口へ行ってみた。

こういうレアチケットを取るための定石は10時の窓口業務開始とともに申し込みをすることだ。と言っても窓口が開始してからのこのこ窓口で申し込んでいたら遅い。開く前に係員に声をかけて事情を説明して乗車日などの条件を予め機械に入力しておいて貰い、10時のオンライン開始とともに発券して貰ってようやく取れるか取れないか、みたいな世界なのだ。

そんな具合だから窓口に順番待ちの列が出来ていたらその時点でアウトである。この日程がNGだと次の連休は年末になってしまうので、今日確実に抑えることがマストだ。それなら大きな駅の窓口よりは地元駅の小さな窓口の方が空いている可能性が高いのではないかと考え、最寄り駅の窓口に行ってみた。

だが自分が駅に着いた時点で既にひとつしかない窓口で駅員とやり取りをしている人がいた。この駅の窓口は独立しておらず通常の切符の発券や乗り越し精算などの窓口と兼用になっている。なので多分通常の切符手配で訪れている人なのだろう。聞くとはなしに耳を傾けていると周遊券の経路について問い合わせているらしく、次から次に質問を繰り出してなかなか終わる気配がない。

どうにか10時前に立ち去ってくれることを願ったが、願いむなしくその人が窓口に居座ったまま時間は10時を回ってしまった。それから5分くらいしてようやく立ち去って順番が回って来た。ダメ元で窓口の人に要件を伝えて手配してもらったが案の定完売済みだった。。。ちくしょう。

仕方ないので気を取り直して帰りの便で手配することにした。上りのはやぶさは熊本を16:00に出発し、東京には翌9:57着となる。だから土曜日の夕方出発する列車は混雑すると思うが、連休最終日の24日の便だと到着が火曜日となり、流石に平日の朝に着く列車に乗る人はそこまで多くないであろうと予想した。ラッキーなことに自分の職場はシフト勤務なのでその日の業務開始を遅番にすれば業務開始にも間に合わせることができる。

ということで10月24日。前回同様地元の駅の窓口に行ってみた。あんな風に窓口を塞ぐ人はそうそういないだろう。10分前に駅に到着した時点で先客はおらず、これなら充分勝ち目がありそうだ。

だが窓口の前まで来ると仕切り板の所に「ただいま、来月分の定期券を発行しています。しばらくお待ちください。」という立札が置かれていて窓口が使えなくなっていた。なんだよ来月分の定期券って。そんなにまとめて発行するような物だろうか。立札の文字は手書きではなかったのでそういう処理が毎月発生するらしい。知らんが。

どうにか10時までに終わってくれよ、と思いつつ待っていたが、無情にも10時を回ってしまった。今回は10時1分にようやく窓口が開いたが、やはり個室はすべて埋まってしまっていた。

こうなったら万事休すである。やむを得ず開放式のB寝台で手を打つことにした。ついでに行きの新幹線の切符も購入しておく。なんだか釈然としない。こういうのはやはり大きな駅でないとダメなのだろうか。


当初の想定とは大幅に異なってしまったが、ともあれ切符が手配できたので具体的な旅行のプランニングをすることに。カミさんには九州のガイドブックを渡して行きたいところをチェックして貰っている。それによると、

・阿蘇山
・天草
・長崎
・呼子
・大分の温泉(湯布院か別府)

に行ってみたいとのことだった。これに自分が鉄道の撮影を行いたいところを絡めてプランニングした結果、

11月21日(金)・・・ 博多へ向かい、そこからレンタカーで阿蘇山付近へ
11月22日(土)・・・ 阿蘇山観光をした後、通潤橋を見て高千穂へ。その日のうちに天草付近へ
11月23日(日)・・・ 天草の観光をして島原へフェリーで渡り長崎へ。時間が有れば九十九島、呼子辺りを観光し、福岡市内へ
11月24日(月)・・・ 福岡市内の鉄道を撮影してから熊本市内へ。熊本観光をしてからはやぶさ乗車
11月25日(火)・・・ 東京到着。そのまま出社

というコースになった。最後が熊本の観光なのは分かるとして、初日にも同じ熊本の阿蘇を目指しているのはひとえに時間との兼ね合いである。もう秋も終わり冬が始まろうかというこの季節、昼間の時間が著しく短い。その限られた時間の間で行程を組むと、夜の時間を移動時間にして日中に出来るだけ観光と撮影を押し込まざるを得なかった。

なお別府、湯布院は今回のコースで回れそうな範囲から大きく離れてしまうため見送りとした。


今回の旅行の宿泊は全て車中泊とする。夜間に移動することを考えたらそうせざるを得なかった。流石に軽自動車で連日の車中泊は辛そうなのでワゴンタイプを借りることにした。金曜の業務終了後の新幹線で移動する都合上、博多への到着が24時近い時間となってしまうので、その時間で空いている店を探したら1社しかなかった。問い合わせたらワゴンタイプの空きがあったので車は無事確保。

懸念は寒さ対策である。流石にこの時期の車中泊となれば車内はそれなりに冷え込むだろう。普段マイカーで車中泊をする時は布団と毛布を持ち込んで万全の態勢で臨むが、新幹線移動で布団を持ち歩くわけにはいかない。そこで今回は寝袋を布団圧縮袋で小さくして持ち込むことにしたのだがその程度の寝具でやり過ごせるか何とも言えない。


準備を進めるうちに電源の確保を考慮していないことに気づいた。今回はそれなりの長旅になるので携帯電話やデジカメへの充電が必要になる。だが車載用のアダプタは持っていないので近所のドンキでDC/ACコンバーターを購入した。DC/ACコンバーターはスパイクに積んであるものもあるのだが、内装の裏に配線を回してしまっているので容易に撤去が出来ない。今後もレンタカーで宿泊する旅行をする可能性がありそうなので改めて購入した次第だ。

ということで準備も完了し、いよいよ出発の日を迎えた。

Posted by gen_charly