奄美皆既日食観測ツアー – 1(2009/07)

— 日食のこと —

テレビなどでも盛んに報道されて皆さんご存知かと思いますが、先日、皆既日食という大きな天文イベントがありました。
この旅行記は日食を観測しに単身乗り込んできた男の記録ですw

なぜこんなにお祭り騒ぎのような報道がなされたかと言うと、日本国内の陸地において実に46年ぶりとなる皆既日食が見られたからです。

順を追って説明すると、まず月が見えるのは、自分が居る場所が夜で太陽からの光が届かない時、上空に浮かぶ月に太陽の光が反射して地球に届くからです。
昼間でも月が上空に見えている事も有りますが、月から反射した光より、地球に直接降り注ぐ太陽の光の方がはるかに強い光なので、普通は昼間見えないわけです。

で、月食というのが有るのですが、これは太陽→地球→月と一直線に並んだ場合、太陽の光が地球に遮られて月に届かず、薄暗く見える状態を差します。
太陽は地球と比べてはるかに大きく、月は地球と比べてはるかに小さいため、地球から月が見えるところであれば、どこでも月食を観測する事ができます。

これに対して日食は、太陽→月→地球の順に一列に並んだ時に見られる現象で、地球から見て太陽と月が完全に一直線になった状態を皆既日食、と呼びます。

実は割と頻繁に観測できる月食よりも日食の方が起こる頻度自体は高いのだそうです。
太陽は月の直径のおよそ400倍もの大きさがあるのですが、不思議な事に、地球から太陽までの距離も地球から月までの距離のおよそ400倍であるため、地球から見ると、太陽も月もほぼ同じ大きさに見えます。

見かけの大きさが同じ二つの星が重なって見える場所は、月食と違って範囲が限られてしまい、どこでも観測できると言うわけではありません。
これが月と太陽が完全に重なって見える場所となると更に限られた場所でしか見られないと言う事になります。
(その限られた場所を皆既帯と呼ぶそうです。)
その時観測できる場所は陸地の上とは限らない訳で、たまたま陸地の上に皆既帯がかかる機会は、さらに少なくなってしまう訳です。

月食よりも頻繁に起こっている日食ですが、皆既日食となると地球上で同一地点で観測出来るのは、およそ300年に一度程度の確率でしか見る事が出来ず、範囲を日本全国の陸地に広げて考えても前回から実に46年ぶりです。

狭い範囲といっても、太陽が一部分だけ欠ける部分日食は、日本各地で見る事ができるので、殆どの人が部分日食を体験することはできますが、部分日食と皆既日食では起こるイベントに天と地ほどの違いがあるので、本格的な天文ファンは皆既日食を追い求めて全世界を渡り歩いたりするのですが、今回は日本国内で見られるという事で、特に国内の天文ファンの間では数年前から盛り上がっていた(※)ようです。
(※)日食がどこでいつ発生するかは計算で出せるので今回の日食もずっと前から分かっていたそうです。
#ちなみに次回の皆既日食は来年、イースター島のあたりで見れるそうです。

———
原付が今回の日食の事を知ったのは2008年10月。
なんとなく調べてみると、今回の皆既日食が見られる場所というのは、日本国内とは言っても、種子島の一部、屋久島、トカラ列島、奄美大島の一部、喜界島、小笠原の硫黄島といった島々だけに限られていました。

硫黄島へは一般人が上陸する事が出来ないので、選択肢からは外れるとして、その他の島々は全て鹿児島と沖縄の間に浮かぶ島です。
屋久島、種子島、奄美大島辺りは、島もある程度大きいのですが、トカラ列島は有人の島でも百数十人程度しか住民のいない実に小さな島々です。

ところが、よりによって皆既日食となる時間が一番長いのがトカラ列島の悪石島辺り(6分20秒)という事で、これは大混乱が予想される訳です。

あとは、国外に出ると、チベットや上海などでも観測できるらしいのですが、チベットなどトカラ列島に比べてもはるかに訪れづらい地域ですし、上海などは大気汚染が酷くロクに太陽も見れない、という話を聞いていたので、行こうと言う気にもなりませんでした。

ちなみに、この皆既帯の位置が、丁度仏教が伝わってくるコースと同じだという人がいましたが、なかなかうまいことを言うものです。

という事で、行くとしたら、折角のチャンスだし、そうじゃなくてもなかなか行けないトカラ列島の島々を渡り歩きながら日食を見れたらいいなー、ぐらいの気持ちでいました。

それから引き続きネットで情報を集めてみたりしたのですが、10月当時はまだ各島とも 「観光客が沢山訪れてくれるのは嬉しいけど、実際問題として受入はどうしよう?」と手探りをしている状態で、ツアーなどの情報も殆ど流れていないし、予約をするにも公共交通機関の予約受付はまだ始まっていない時期でした。

ファンの人たちは1年以上前から地道に宿の手配を行ったりして着々と準備をしていた訳ですが、原付は宿の手配をした所で、交通機関が確保できなければ、島に渡る事が出来なくなってしまうことを考えてまだ様子を見ている状態でした。

年を越した頃に「そういえば日食はどうなったかな?」と思ってちょっと本格的に情報を集め始めたのですが、やっと組まれ始めたツアープランなどは予想通りべらぼうな価格設定(近畿日本ツーリストのトカラへ行くツアーでなんと30万以上。。。)になっていて、おいそれと手が出せるものではありませんでした。

トカラの島々に住む人たちにとって今回の日食は、日本最後の秘境とも呼ばれるトカラ列島に沢山の観光客が訪れる事によって、島の活性化に繋がる上に知名度を一気に上げるまたとないチャンスです。
ところが、訪れる人数が多すぎるとこれまた厄介な問題をはらむ事になります。

島のインフラは基本的に島の住人+αの規模で作られているため、島の人口の数十~数百倍の来訪者を受け入れるためには、宿はもとより、水や食料、果てはトイレの手配や、急病人などの対応や治安対策などまであらゆるインフラを増強しなければなりません。

これは到底、十島村単独の力でできるものではなく、一方で当時県はどことなく受入に消極的な雰囲気で、支援が得られそうにも無かった事もあって、単独受入は断念。近畿日本ツーリスト社に対応を一任したそうです。

近ツリのべらぼうな価格設定は、タダでさえプレミアチケットとなるであろうツアーのチケットにインフラ整備代までが上乗せとなったせいでもあるようです。

そのせいでツアーを利用しない人の上陸が制限されてしまい、当初考えていた十島村の村営フェリーでの渡島は断念せざるを得ない状況になってしまいました。

まぁ、混雑する事は想定の範囲内で、そう簡単には行くわけはないだろうなぁと思っていたので、そこまで長時間見れなくても他の島で見ればいいや、という事で他の島へ計画を変更。

トカラ列島へ渡るには、週2便の十島村営フェリーのみなので、トカラへ渡るなら連休の間ずっと滞在するつもりでいたのですが、他の島なら交通手段の選択肢が増えるので、計画の自由度は多少上がります。

その分他の島は大量の観光客が押し寄せてごみごみした状態になる可能性が高く、そうなると長期滞在しても、折角の自然も満喫できないだろうと思ったので、島では日食の観測をメインにする方向に方針変更。
他の日は九州あたりの観光をしている事にしました。

で、次に考えていたのが、行った事の無い屋久島か種子島だったのですが、屋久島については結構前から宿が一杯になっているという情報を得ていたので、種子島にターゲットを絞ることにしました。

それらの島々の情報を集めて見ると、行政側は対応が決まっていないようだったので、暫く様子を見ていたら、2月に入った頃になってやっと行政側の対応がまとまってきました。

それによると、行政は宿の手配と、宿から観測ポイントまでのバスでの送迎がメインに支援を行うようです。
また、自力手配をする人用に宿の情報等が行政のホームページ上に掲載されてきました。

行政手配の方は手軽でよいのですが、自由度が少なくなってしまうので、いつも通り自分で手配する事にして、先に宿の予約を入れておこうとまずは種子島の宿に電話してみることにしました。

ところが。。。

ある程度予想はしていたのですが、電話するところ電話するところ軒並み既に満室か、または行政に任せているからそっちで手配してくれ、のどちらかの回答。

宿の方が埒があかないので、例によって車中泊旅行の可能性を考えて、島のレンタカー屋にも連絡してみましたが、既に満車か2ヶ月前にならないと予約を開始しないとの回答。

町役場の日食の窓口へ電話してみると、3月に入ったら受付を開始するというのですが、その際来島する手段が確保されている必要があるということです。
交通手段の確保に失敗すると悲しい事になりそうだったので、行政での予約は後回しにして、自力での手配を続ける事にしました。

種子島が現段階で予約が不可能だったので、ダメもとで屋久島の宿とレンタカー会社にも電話してみましたが、こちらも事前に聞いていた話のとおり、軒並み満室。。。
行政対応もしているということで、窓口を調べて電話してみたのですが、これが全く繋がらない。。。

屋久島から船で一時間ぐらいの所に口永良部(くちのえらぶ)島という小さな島が浮かんでいて、ここも皆既帯にかかりそうだったので、穴場なんじゃないかと思って、ネットで見つけた幾つかの旅館へ電話してみると、ここはどこも2ヶ月前から予約開始と言います。

そうなると残るは奄美大島と、その隣に浮かぶ喜界(きかい)島の2島のみ。
でも当初は奄美大島へは行かないつもりでした。
というのは、以前に訪れた事があったのと、丁度このくらいの時期に沢尻エリカと結婚した某ハイパーメディアクリエイター氏が奄美に来るとテレビで宣言してしまったので、当日は島にマスコミが集って大騒ぎになっていそうな予感がしたからです。

という事で、喜界島へ望みを繋いだのですが、ここでもあえなく玉砕。。。

結局最後に残ってしまった奄美大島。
しかし他の島へのアタックが軒並み玉砕に終わっているので、もはや希望は薄く。。。
ダメもとで宿に幾つか当たって見るも、そりゃあもう無残な結果でした。。。

「こんな時期に連絡してももうどこも一杯になってるよ!」などと言われてしまう始末。

ということで、宿は諦めて、せめてレンタカーだけでも押さえようと思い、幾つかのレンタカー会社に連絡すると、これもまた既に満車か二ヶ月前から募集開始かどちらかが殆どでした。

そんな中、ダメ元のつもりで電話したマツダレンタカー

「申し込みを受け付けていますよ。」

ん?申し込み?予約じゃなくて??

「申し込みを受け付けるという事は、抽選かなんかですか?」

「いえ、抽選ではありません。あと少ししたら締め切る予定なのですが、島内で足りない分は本土から移送して対応する事になっていますので、車両は必ず確保できますよ。」

おおっ!予約できた!?
予想していなかっただけにちょっと拍子抜けしてしまいました。
ただし、港近くの営業所は18時で閉店となるので、それまでに返車しなくてはならないそうです。
飛行機は予約が難しそうだったので、最初からフェリーを使う予定でいたのですが、フェリーが奄美を出港するのが20時。
18時に返車しても、出港までは3時間程度なので、いくらでも時間は潰せます。
そもそも乗船手続きに時間がかかると思うので、丁度良いくらいです。

あと、キャンセルも一週間前までOKと言うことだったので、車種の選択などをして無事予約完了。
まだ狐につままれたような気分の原付は、後で問題にならないよう、念のため担当者の名前を聞いてから受話器を置きました。
最後の最後で滑り止めに引っかかったような格好ですが、島内での移動手段はなんとか確保できました。

後は島までの交通の確保ですが、船は1ヶ月前からの申し込み開始です。

ということで、暫くは日食の事を頭の片隅に置く程度に留めて日常生活を勤しんでいた訳ですが、2週間ほど前になってフェリー会社のホームページに発売開始日が発表されました。
それによると、当日は朝8時半から受付開始との事。幸か不幸か当日は土曜日
予約が大変になりそうな予感。。。

その数日後、カミさんが急に、

「日食の時期忙しくて休み取れなさそう。。。」

と言いだしました。
旅行を取りやめるか、一人でも行って来るか、究極の選択。。。

普段の観光旅行ならキャンセルしてリスケしてると思うのですが、何せ数十年に一度のイベント、カメラに画像を残してくるだけでも大きなお土産になるだろうという事で、カミさんを説得して、一人で旅立つ事に。

ただ。。。
最初の方で、部分日食と皆既日食では起こるイベントに天と地ほどの違いがあると書きました。
具体的に言うと、皆既日食直前に観測できるものとして、ダイヤモンドリングや本影錐、シャドーバンドが、皆既日食中に観測できるものとしてコロナやプロミネンスなどがあります。

これらのイベントを少しでも撮り納めようとすると、一人では厳しいものがあります。

という事で、予約開始日の3日前になって急遽多方面の知り合いメールを送って同行者募集を行ったのですが、余りにも急なお誘いのうえ、お金がかかる割りに学生の貧乏旅行顔負けのハードスケジュールをこなさなければならず、当然の事ながら参加者はゼロ。

結局、一人で頑張ってくる事になってしまいました。。。

Posted by gen_charly