ギリギリ北海道【3】(2003/09/15~09/16)

野付半島


2003/09/15

完全に風邪ひいた。。。
昨晩から喉が腫れてずっと痛くてあまり眠れなかった。熱は、、、測っていないから分からないが、多分平熱ではない。

今日は夜に苫小牧を出港するフェリーに乗って大洗へ向かうことになっている。そこまでの道すがらの見どころを点々と見つつ進んだのだが、風邪のせいで記憶がかなり朧気である。なので、記事の内容はちょっと薄めだがご容赦願う。

 

朝食を済ませて車の中を片付けている時に、カミさんが、腕時計が見つからない、と言い出した。
車の中はこれまでの旅路で雑然としていたので全部ひっくり返して探すわけにもいかなかったが、主だったところを探しても見つからない。

カミさんに聞くと昨日カムイワッカ湯の滝を降りてきた時までは腕に嵌めていたという。だとしたら滝で着替える時に外してそのまま置き忘れてきてしまったのかもしれない。

なんだよ、昨日あんなに俺のことからかったのにw

・・・なんて言ったら角が立つので、車のどこかに落ちてるかもしれないから、帰ったら探してみよう、と言って先に進むことにした。
羅臼辺りの海岸からは、海の向こうに北方領土である国後島が良く見えたはずだ。道の駅の目と鼻の先に海岸があるというのに、そこすら見に行かないまま出発してしまった。惜しいことをしている。あの日の自分に何やってるんだ!とどやしつけたい。

 

羅臼を出発し、そのまま海岸沿いに南下、別海町にある野付半島というとてつもなく細長い半島の上を通る道を見に行って、それから摩周方面へと向かった。

野付半島は、航空写真などで見ると、神様が気の赴くままに筆でなで付けたような神秘的な形をしている。この辺りを流れる海流によってこのような形になったらしい。途切れそうになりながらも、ギリギリ途切れず先端まで繋がっていて、その上に道が通っている。

ただ、車で走るとその神秘的な造形を感じることが出来ない。まぁ、当然である。
沿道にはナラワラやトドワラと言った、地の果ての風情を味わうのにまたとない観光スポットも点在しているのだが、体がだるくて散策しようという気にならず、終点まで走って戻って来るだけで終わった。

写真も一枚も撮っていない。

 

神の子池


で、向かうは摩周湖。と、その前にカミさんがガイドブックで見つけた、神の子池という所に行ってみたいというので、先にそちらに立ち寄り。神の子池は摩周湖の裏手にある。

池のあるところまで行ってみると、このような小さな池があった。

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ごらんのとおり、水がとても澄んでいて、アクアブルーの色合いを含んだ水面はそのまま底の砂地まで見通せる。
この池は、冷たい湧き水によってできた池で、年間を通じて気温が高くない場所であることも相まって、水中で細菌類やプランクトンの類が活動できないらしい。

そのため、倒れ込んだ木々が分解されず、そのままの姿で折り重なっている。こうした景色が見られるのは北海道ならではだろう。

戻り道で、池から流れ出す小川を渡る箇所があった。一跨ぎで渡れる程度の幅しかないのに、調子に乗ってジャンプして越えようとしたら、着地に失敗して片足を水に落としてしまった。。。

裾と靴がぐしょ濡れになり、カミさんからまたからかわれた。

 

摩周湖


それはさておき、次に向かったのは摩周湖である。神の子池と摩周湖は山を挟んで背中合わせのような位置だが、山を越える道がないので、山の周りをぐるっと回るようなコースを通る必要がある。

摩周湖は展望台から湖面が見えると婚期が遅れる、なんてジンクスがまことしやかに囁かれるほど、普段霧に覆われていることの多い湖である。まぁ、折角来たのに霧で見られなかった人の不満を逸らすための方便に過ぎないと思うが。

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今回も前回同様、湖面は綺麗に見晴らすことが出来た。まぁ、こうしてカミさんがいる訳で、婚期にまつわるジンクスはあくまでジンクスであることを身をもって証明した、とかムキになってもしょうがないか。

だが不思議なもので、今回も前回と同様、見始めて10分もしないうちにどこかから雲が流れてきてあっという間に湖面が見られなくなってしまった。
霧が発生しやすい、と言うこと自体は嘘偽りがない。

 

この辺りから朦朧としてきて。。。


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それから屈斜路湖へ。と言っても湖は今見たばかりだから、今度は温泉に入って少しゆっくりしよう、と言うことになった。
屈斜路湖といえば、砂湯が有名。もっと余裕のあるスケジュールだったらぜひ入ってみたいところだが、砂を掘ってる時間はないということで、仁伏(にぶし)温泉と言う所にある屈斜路湖ホテルに立ち寄ってみた。

ホテルというよりは山小屋か旅館か、と言った風情の落ち着いた宿で、日帰り入浴が可能とのこと。ここは近くに火山があるので温泉の成分が濃く、露天風呂から湖が一望できるとてもいい湯だった。

風邪を治すために少しでも体を温めようとここでも長湯をしたが、体調は一向に回復する兆しを見せない。

 

それから次にカミさんが阿寒湖のマリモを見たい、と言い出した。
で、行ったのは良いのだが、マリモと言っても、湖のほとりに行けばどこでも見られるようなものではないのは前回学習している。だが、どこに行けば見られるのかはちゃんと調べていなかった。もう頭がぼんやりして、探そうという気力もなくなってしまって、とりあえず湖のほとりの土産物屋を散策してお茶を濁そうと思ったのだが、カミさんはやっぱりマリモを見たいという。それに、できればもう少し散策したいとも言っている。

だが、もうさっさと帰りたい気持ちでいっぱいだったので、あまりのんびり散策していると、船の時間が怪しくなってくる。と言い張って半ば無理やり散策を切り上げた。

 

言い張って、と言っても詭弁ではない。時間は既に16時を回っていた。この後の移動や夕食の時間などを考慮すると、割とマジで出港時間までに苫小牧まに着けるかどうか怪しい時間帯になって来ていたのだ。

いや、自分が元気なら気合で走り通せば余裕で間に合うのだが、いかんせんこの体調である。どこで力尽きるかもわからない。
休暇は明日まで。明後日には出社しなければならない。職場にはカミさんとのお付き合いを内密にしているので、2人揃って会社を休むことだけは全力で回避しなければならない。

まぁ、とにかく、少しでも早く港に着いて安心したい、という気持ちに支配されていたのだ。

 

風邪のせいか、疲れのせいか、冗長な道のせいか分からないが、走っていると時折猛烈な眠気に襲われる。力尽きそうになったら、カミさんが運転を変わってくれるという。それで1時間くらい助手席で仮眠をとって、さらに進む、みたいな感じでノンストップで進んだ。

途中の峠越えで激遅トラックの背後についてしまい、追い抜くこともままならないまま暫く時速30キロの超快適ドライブを余儀なくされたりしたが、どうにか出港1時間ほど前に苫小牧に到着。よかった間に合った。。。

 

フェリーに乗れたのはいいが。。。


手続きを済ませて乗船する。帰り道くらいはゆっくり寝ておきたかったので、2段ベッドの部屋を予約してある。寝台列車のB寝台のような、カーテンで区切られた区画だが、雑魚寝部屋よりは万倍快適に過ごせそうだ。
そして、この判断は正解だった。何せ風邪っぴきである。雑魚寝部屋にしていたら、周りにいる人に移してしまいかねない。

手荷物を置いてベッドに横になる。久しぶりの平らな布団は快適そのもの。出港するかしないかのうちに爆睡していた。
大洗到着までは19時間もある。寝ようと思えば充分眠れる。ここで回復させておきたい。

 

数時間後にカミさんに起こされ、具合はどうか聞かれた。途中起きることもなく熟睡していたが、体のだるさは一向に解消しない。
それからまたウトウトしていたら、再びカミさんに起こされた。小ざっぱりした表情で立っていて、お風呂が気持ちよかったから入ってくれば?と言われた。

折角だからと、入りに行ってみることにしたのだが、船の揺れのせいか分からないが、なんかフラフラする。。。
服を脱いで浴室に入ったが、体を洗おうと洗い場の腰掛に腰を下ろしたら目が回る。船酔いなのか何なのか、とにかく気分が悪くなってきた。
なんだ俺、死ぬのか??

湯船でのんびり、なんていう気になれず、シャワーだけ浴びて終了。
ベッドに横たわったらまた爆睡。

 

死ぬかと思った


2003/09/16

気が付いたら朝だった。相変わらず体はダルいままだった。ダメだ。回復していない。。。
食欲もあまり無く、乗船前に買っておいたお菓子とかおにぎりとかで済ませて、すぐ布団に逆戻り。

そうしてほとんどの時間をベッドで過ごしていたら、いつの間にか大洗に到着していた。この間にカミさんが何をして過ごしていたのかは知らない。
それだけ寝たにもかかわらず体調は回復の兆しを見せないどころか、更に喉は腫れて咳や鼻水が止まらない。時間は既に20時近い時間だったが、朦朧としている自分の様子を見て流石に心配になったらしく、医者に行こう、と言われた。

それで夜間診療をしている医者を見つけて駆け込んだ。
先生は自分の体をあちこちチェックしながら、

「いやー、よくこんなになるまで頑張ってたねぇ。」

え?そんな酷いの??
先生は続けて、

「熱も8度5分あるし、軽く喘息の発作も起きてますね。。。点滴をして安静にしていれば少し落ち着くと思うから、今から点滴して行って下さい。」

どうりで。頭が朦朧としていた訳だ。。。
先生に言われるがまま、点滴をしてもらい、その後30分ほどベンチで安静にしていたら、体がだいぶ楽になってきた。こんなに劇的に変わるものだとは。

自分が治療を受けている間、カミさんはずっと待ちぼうけ。でも嫌な顔はしていなかった。それが安心材料だった。

先生にお礼を言って病院を出発。時間は既に22時近い。今日はこの後カミさんを家に送り届け、自分も帰宅しなければならない。
点滴のせいか体は随分と楽になったが、今度は猛烈な睡魔が襲って来た。でもここで力尽きる訳には行かない。カミさんに横から声援を送って貰いながら、どうにかカミさんを送り届けることが出来た。

 

さぁ、後は自分が帰宅すれば今回の旅行は無事?終了だ。だが、この先1人のドライブになる。そこはかとない不安も残るが、まぁ安全運転で帰ろう。高速に入ってまっすぐ自宅を目指す。案の定、再び睡魔に襲われた。

夜中なので、走行する車は殆どなかったが、念のためスピードは控えめにしてずっと走行車線を走るようにしていた。

・・・のだが。

「ーーーっ!!!」


次の瞬間、追い越し車線を対向車線の方向へ向けて斜めに走っていた。その先には中央分離帯のガードレールが見える。
慌ててハンドルを切ったら、車がふらついて追い越し車線と走行車線の間を大蛇行。

幸いどこかにぶつかることも、急ハンドルによって車が横転することもなく体勢を立て直すことが出来たが、心臓止まるかと思った。
周りに車が走っていなくてよかった。。。

 

同じラッキーは2度とないと心得て、すぐさま手近のパーキングエリアに入り込んだ。
この状態で、家まで運転続行するのはあまりに危険な行為だった。カミさんは無事送り届けられたし、最悪自分が遅刻するだけなので、無茶な運転して死ぬよりはその方がいい。と判断し、朝までここで仮眠して、早朝に帰宅することにした。

リアシートを倒して作った寝台は、思った以上に安眠できた。気が付いたら朝になっていた。
そして体調はすっかり回復していた。薬の力ってすごいものだ。

すっかり快調になって、車を飛ばして帰宅して、出勤したらどうにか間に合った。

 


なんだかんだ、反省点の多い旅行だったが、一番はスケジュールの見通しが甘かったことだ。
そのせいで、全ての行動がケツかっちんになってしまい、カミさんの期待に十分応えられたとは言い難い旅になってしまった。

そうそう、カミさんがなくしたと言っていた腕時計だが、車の中をくまなく探したが見つからなかった。やはり、カムイワッカ湯の滝に置き去りにしてしまったようだ。

そうなると、車を停めていたところに自分の靴と女物の腕時計を忘れてきたわけで、どんだけうっかりしているんだよ、と、見つけた人に笑われているかもしれない。

仮に忘れ物としてどこかに届いていたとしても、どこに問い合わせればよいか分からないので、結局回収は諦めたのだった。

 

ちなみに、カムイワッカ湯の滝はのちに知床半島が世界遺産に認定されたのを機に、登れる範囲がだいぶ制限されてしまったそうだ。
現在は滝までマイカーで入ることはできず、バスで運んでもらう必要があるらしい。

そう考えると、まだ自由だったあの頃に登れてよかったな、とは思った。もう行きたくはないが。

(おわり)

Posted by gen_charly