三都物語【1】(2004/05/01)

仕事を転職してはや一年。職場環境にも慣れ、ようやく自分の顔も覚えて貰えるようになってきた。一方で自分のタスクはどんどん増えていった。小さい会社なので「やれるかやれないか」ではなく、「やって」と仕事が入って来る。とはいえ、業務についてはまだ分からないことも多く、なかなか手際よくこなせない。それでタスクが積み上がったりすると、気持ちばかりが焦る。

そんなわけで心に余裕が持てず、2004年は殆ど遠出らしい遠出ができなかった。そんな中で、唯一行った遠出がこのエントリで紹介する京阪神の鉄旅だった。

この旅行は久々の遠出ということもあって、一応それなりには計画したが、細かいところまで詰める余裕がなく、大枠だけ決めて後は成り行き任せというノリで出かけた旅行だった。

 

この旅行で撮影した写真は殆どが携帯のカメラで撮影されている。当時のデジカメは電池の持ちが悪かったり、メモリが小さくて沢山撮影できなかったり、という欠点があったので、ここぞという時だけデジカメで撮影して、後は携帯に任せていたからだ。だが、当時の携帯のカメラの写真映りはまぁひどいものだった。

当時は自分らの旅行をWebで公開するなんて全く想定していなかったし、後で見返したときに自分らがその時の雰囲気を思い出せるならそれでいい、という風に考えていたので、それで済ませていたわけだが、数年後サイトを開設することになり、過去の旅行の思い出話も書こうと思った時に困ったことになった。

なにせ出来の悪い写真である。人様の目につくサイトにこんなものを掲載したら恥ずかしい。なので最初はこの旅行については書かないつもりだった。だが、数年経ってサイト運営にも慣れてきたころに心変わりがあり、別にこだわった美麗な写真ばかりを掲載しているサイトではないのだから、気にせず書けばいいじゃないか、と思うようになったので、エントリが立ったという次第。

 

この年のゴールデンウィークがまるっとお休みになったので、カミさんにどこかに行く?と持ち掛けた。その問いにカミさんは京都に行ってみたい、と答えた。京都か。。。寺社巡りはあまり興味がないが、あの街の雰囲気は好きだ。でも流石に京都一本では自分が飽きてしまいそうだったので、京阪神をあちこちつまみ食いしながら回るのはどうか?と提案したら、賛成だというので、京阪神めぐりが決まった。

京阪神の辺りを散策するなら、慣れない車より電車の方が楽だ。だがそれだと車中泊が出来ないので、今回はビジネスホテルに泊まることにした。
と、その時ふと「大垣夜行」と言うキーワードが頭に浮かんだ。

大垣夜行は東京を夜に出発して翌朝に岐阜県の大垣に着く普通列車だ。そういう鉄旅の世界もあることをカミさんに紹介したくて、夜行列車で行くのはどう?と聞いてみたら、前のめりで行きたい!と返事があった。

まぁ、こういったデリカシーのない旅への耐性があることは、昨年の北海道旅行でチェック済だったので、多分大丈夫だろうと踏んでの提案ではあるのだが、まさか座席列車だとは思うまい。。。って、今思えばよくそんな意地悪なプランを立てて嫌われなかったものだw

 

その大垣夜行と言われる列車は、今ではムーンライトながら、と言う名称になっている。
かつて大垣夜行だった時は自由席だったので、こうした行楽シーズンはかなり早い時間から駅で並ばなくてはまともに着席も出来ない列車だったのだが、今は車両が特急型の373系になり、席も座席指定となった。

と言うことで、駅の窓口で切符を申し込んだら、定期列車のムーンライトながらは既に満席だった。だがその後に出発する臨時便の方はまだ席が確保できるという。ただし喫煙席のみ。まぁ、自分は煙草を吸うからそれでいいや、くらいの簡単な気持ちでその列車の席を確保した。

 

臨時快速ムーンライトながら(喫煙席)


2004/05/01

仕事を終えて自宅で準備し、ムーンライトながらの出発駅となる品川駅に到着すると、入線していたのは373系ではなく183系(189系かも)だった。なんだ、ボロい方か。。。

と言ってもかつては座席がびた一文倒れないうえに椅子も向かい合わせの165系だったので、それと較べたらシートがリクライニングする特急車両と言うだけで御の字である。

 

列車に乗り、我々が乗車する車両の扉を開けたら、、、その中はアヘン窟もかくや、と言わんばかりの紫煙がもうもうと充満する空間だった。
喫煙者の自分でもここで一夜を過ごすのか、と思うと何とも言えない気分になったが、もとより喫煙者ではないカミさんは驚嘆の表情で車内を眺めていた。
一応、喫煙席しか空いていなかったことは予めカミさんに伝えてあって、念のためマスクを持参させたのだが、マスクくらいじゃ屁のツッパリにもならない。。。

だが、この列車を我慢しない事には旅が始まらないので、我慢して着席。そして出発。
初めて乗車する喫煙車両のインパクトが強烈だったからか、座席列車であることについてはこれといって何も言われなかった。
後日、旅行の感想を聞いたら、別に座席で寝るのは慣れているからいいんだけど煙たさは辛かった、と言っていた。

 

かくいう自分も、これだけ煙たい列車で仮眠を取ることになるとは思いもよらず。だんだんと気分が悪くなり、これでは旅情を楽しむどころではない。もう何も考えずすぐに眠ってしまうことにした。

だが、座席での仮眠であるうえ、ほぼ各駅停車なので、数分おきに列車が停車する。
その衝撃や音で都度目が覚めてしまうので、ほとんど寝付けなかった。そうだ、前回乗った時もこんな感じだったっけ。。。

そんな訳で、殆ど一睡もできないまま夜明けを迎え、列車は大垣駅に到着した。

 

Posted by gen_charly