韓国・2【2】(1990/12/24)
セマウル号
1990/12/24(多分)
この日は自分にとっての今回の旅行におけるメインイベントの日である。
Bさんは特急セマウル号で釜山へ行き、観光をした後、寝台列車で戻るプランでチケットを手配しておいてくれた。
ソウルと釜山の間はおよそ500キロ。日本で言えば概ね東京から大阪の距離に相当する。当時韓国には新幹線のような高速鉄道がなかったので、そこを日帰りで往復しようとしたら早朝からの行動を余儀なくされる。
という訳でまだ夜が明けて間もないソウル駅に到着。噂には聞いていたがなかなか寒い。
昨日の昼間もまぁまぁ寒かったが、朝の寒さはまた格別だ。
傍らに停まっていた韓国の車。よく見るとジェミニ的なトラックとボンゴ的なワゴンである。当時の韓国には現代(ヒュンデ/当時はヒュンダイと言っていたが)、大宇(デーウ)、起亜(キア)と言った自動車メーカーがあったが、まだ自国で一から車を開発する力がなかったので、日本車の部品を取り寄せたものを組み立ててOEM的な感じで現地メーカーの車として販売していた。
だから街中を歩いていると、どこかで見たなぁ、という車と頻繁にすれ違った。
ホームに入って、列車の出発時間までいくつか鉄道車両の撮影にいそしむ。
セマウル号はソウルと釜山を結ぶ韓国の看板特急列車である。まだ非電化の区間があるため、ディーゼル機関車が客車を牽くスタイルだが、ステンレス製の流線型の車体に鮮やかな赤と青をまとった近代的な車両が使われている。
ところが我々の乗る列車は違った。なんか古臭い客車である。コレジャナイ。
だが、これもセマウル号である。自分はセマウル号と言えば全部があの車両だと思っていたので、特にそれを指定しなかった。
なのでBさんが勘違いするのも仕方ないのだが、自分が乗る列車がこれだと知って流石にがっかりした。国際的なコミュニケーションロスである。
がっかりしてても始まらないので車両に乗り込んで指定の席に着席。それから程なく出発となり、それから車両の見学に出かけることにした。Bさんはそれに付いてくる気はないようだったので、自分1人で車内をウロウロしたのだがどの車両も客席ばかりでこれと言った特徴のない列車だった。
だた思いがけずラッキーと思ったことがあった。客車の最後尾はご覧のとおり貫通路が開放されている。つまり後方展望が最高だったのだ。
そこにかぶりつきですれ違う列車の撮影をした。
どこかの駅に停まっていた通勤型の電車。どことなく国鉄301系のような雰囲気を感じる。デザイン面で参考にされたのかは不明。
セマウル号の専用車両はこれである。これに乗りたかったなぁ。
これが例のJTB時刻表に掲載されていた通勤型車両である。ちょっと遠い写真になってしまったが。
漢江を渡る鉄橋
すれ違う客車・その1
すれ違う客車・その2
韓国の田園風景
車掌になった気分で
すれ違う客車・その3
もう、撮れ高バッチリであるw
ウハウハしていたらいつの間に自分の背後に人が立っていた。車掌らしき人が自分を見ている。
ほんの数年前まで韓国は軍事政権を敷いていたので、鉄道施設などが軍事秘密となっていて写真に撮ると場合によっては没収されるかもしれないから気を付けろ、という話を父から聞いていたのだが、ここまで何も言われていないからきっともう大丈夫なのだろうと思っていた。
その車掌は自分に何かを言って制止しようとしている。やっぱり本当は撮影NGでここでそれを咎められるのか、と思って身構えた。
だが、例によって何を言っているのかはさっぱり分からない。凄く怒っている訳ではなさそうだが、ここに居てはいけない、というようなことを言っている気がする。
とりあえずカメラを取り上げられるとか、どこかに連行されるということではなさそうだ。怒らせる前に退散するのが吉、と思いすぐに立ち去ろうと思った。何も言わずに立ち去るのも感じが悪い気がしたので、ごめんなさい、と言おうとしたのだが、ソウルでBさんから教わったごめんなさいの韓国語もすっかり忘れてしまい、なんと言えばいいのか分からない。
言葉が出ないのでとっさに両手で拝むしぐさをしてその場を離れた。日本だと両手を合わせたら、ゴメン、か、お願い、のどちらかのジェスチャーだが、韓国でそのジェスチャーが同じ意味で通用するのか不明。もしかしたら単純に拝んでいるようにしか見えていないかもしれない。
咎めているのに振り返りざまに拝んでくる子供。。。なんか変な子供がいる、なんて思われてしまっただろうか。
立ち去る際に引き留められたりしなかったので、多分危ないから離れてください、と言いたかったのだろうと思うが、ヒヤリとした体験だった。
席に戻って、その後はBさんとぼつぼつ会話しながら釜山をめざした。
で、やがて釜山駅に着いた。
下車する乗客の列の流れに乗って階段を上っていたらローカルのディーゼルカーが見えた。
これもどことなく国鉄キハ20系あたりを彷彿とさせるデザインである。