南紀初日の出【2】(2005/01/01)

2005/01/01

6時半ぐらいに目を覚ました。窓越しにまわりを見たら、空はもう白々としており、東の空は朝焼けの色になっていた。もう間もなく日の出の時間を迎えそうなので、車を降りて海岸の方へ歩いて行ってみた。

天気は概ね快晴。ただし、東の海上は水平線近くに雲が湧いていて、水平線から登る朝日を遥拝することは期待できなさそう。

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穏やかな海岸で東の方を向き、日の出の時間を静かに待った。徐々に周りに人が集まり始め、彼らと一緒に雲の上にあがり始めた朝日を拝んだ。

ということで、2005年、今年もよろしくお願いします。

 

那智の滝と熊野那智大社


朝日を見終えたら本日のドライブ開始。朝食を済ませてまず最初の目的地、熊野那智大社へ。
その道すがら、那智の滝を案内する看板を見かけ、先にそちらから見に行くことに。

暫く山道を進んでいくと、目の前に巨大な滝が見えてきた。

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これが那智の滝である。この絶壁は高さが133mあり、一段で流れ落ちる滝としては日本一の落差を誇っている。
遥か高い所から一筋に流れ落ちる様は、日本一の名に恥じない迫力があった。

この滝は最寄りの飛瀧神社のご神体になっているとのこと。上の写真で、滝の落口の所にしめ縄がかけられているのが見えると思う。よくあんなところにしめ縄をかけようと思ったものだ。。。

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滝つぼ付近に飛沫が日光に反射して綺麗な虹がかかっていた。しばし見とれてしまった。

ちなみに滝の落差では立山の称名滝が落差350mもあり、落差では日本一だがあちらは連瀑になっている。称名滝は黒部立山アルペンルートにほど近い所にあり、それらも含めていつか訪ねてみたい場所なのだが、ふらりと訪問することが許されない場所なので、なかなか訪問できずにいる。

 

それから熊野那智大社へ。

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駐車場から背後方向に三重塔と那智の滝が一望でき、とても絵になる風景だった。油絵なんかの良い題材になりそうだ。
山間にありながら谷が広く見晴らしがよい。その中心の一画を占める、一筋に流れ落ちる滝のランドマークとしての圧倒的な存在感。古くから信仰の地であったことも頷ける。

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熊野那智大社に隣接して青岸渡寺(せいがんとじ)という寺がある。こちらが駐車場から最寄りだったので、先にそちらへお参り。

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そのあと、奥に位置する熊野那智大社へも参拝。熊野那智大社は熊野三山の一つで、由緒のある神社である。
かつて熊野那智大社と青岸渡寺は一つの宗教施設であった。明治の神仏分離および廃仏毀釈によって寺の方は一旦廃寺となったが、その後青岸渡寺として復活したものとのことだ。なので、同じ場所に並んで建っている。

古くは、神道と仏教の境界が曖昧なまま分け隔てなく信仰されていたので、このように神社と寺が隣接している施設は全国に点在している。

 

元日なので参拝客で混雑しているかと思っていたのだが、それほどでもなかった。やはり根本的に辺鄙な場所にあるので、訪れる人の母数が少ないのかもしれない。

お参りを済ませたあと、おみくじを引いてみた。ここのおみくじは、両腕で抱えるほどの巨大なものだ。それをガラガラと振って中から出てきた棒の番号を巫女さんに伝えて御籤を受け取る。

今までこんな巨大なおみくじ見たことがなかったので、度肝を抜かれてしまった。運勢は良くもなく悪くもなく。。。

 

熊野那智大社を参拝した後、カミさんが久しぶりにハンドルを握ってみたい、と言う。
この辺りなら交通量も少なそうだしいいか、ということで、とにかく国道42号線を串本の方へまっすぐ進んで、とだけ言って運転を交代。
それからしばし、自分は助手席でウトウト。

 

橋杭岩


車が停車する音に気付いて目が覚めたら、橋杭岩と言う所にいた。
そこは目的地より手前だったのだが、カミさんが運転中に見かけて興味を持って立ち寄ることにしたらしい。果たしてどんなものかと車を降りて橋杭岩の方へ歩いていくと、そこには異様な光景が広がっていた。

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海岸に沿って十メートルほどの高さで起立する岩が列状に並んでいる。なんだこれ。初めて見る景色にしばし見入ってしまった。
確かに橋の杭(橋脚)が一列に並んでいるようにも見える。あるいは隊列を組んでどこかを目指す巨人の群れのようにも見えた。

付近は浅瀬になっていて、丁度引き潮でそれらの岩塊のすぐ近くまで岩伝いに歩いて行けるようになっていたので、もう少し近づいてみることにした。

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近くまで寄ってみると、このような光景が広がっていた。これらの岩は地中にあった火山の硬い岩石と海の底に沈んでいた泥岩が隆起によって海上に姿を現し、後に柔らかい泥岩が浸食によってなくなって、硬い岩のみが残ったものだそうだ。

航空写真などで上空から見ると、陸地から沖合に向けて一直線に岩がならんでいる。もしかしたらここが活動していた当時は、伊豆大島の割れ目噴火やキラウェア火山のような光景が見られたのかもしれない。

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近くにいい感じの岩があったので、そこに腰掛けて30分ほど奇岩をじっくり堪能した。自然の造形の妙にため息が出た。

カミさんが気にしなければ、こんな神秘的な場所を素通りするところだった。カミさん、GJであった。

 

潮岬と紀伊大島


再び運転を代わって次に向かったのがここからほど近い所にある潮岬(しおのみさき)。

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潮岬は本州最南端の地であり、台風情報などで「潮岬の南南西〇〇キロ」などと読み上げられるので、耳にしたことがあるという人も多いと思う。最南端には潮岬灯台があるが、逆に言うとそれ以外にはこれと言ったものはなかった。灯台も中を見学することなどは出来なかったので、結局灯台を見た後、岬の向こうに広がる大海原を眺めるだけで終わってしまった。

 

潮岬のある場所は離れ小島のようになっているが、砂嘴によって地続きになっている。だが、すぐ東隣にある紀伊大島には砂嘴は形成されず、独立した島を形作っている。

潮岬の手前から橋で渡ることが出来るようになっていたので、そちらにも足跡を残しておこうと紀伊大島へも行ってみた。この島は島旅25番目の島であった。
この島の見どころは樫野埼灯台とその周辺に点在する種々の施設くらいしか知らずに上陸した。とりあえず灯台を目指して進むと、道の両側はうっそうとした雑木林か畑が続くばかりで、これと言って興味を惹かれるものもなかった。

もしかしてこの島は無人島なのか、と思ったが、どうやらこの道自体が元々集落を避けて通されているらしく、地図で見ると集落は少し離れた海沿いに点在しているらしかった。

当時は、そうした集落にわざわざ足を運ぶほどの島好きではなかったので、集落には目も向けず、島の東の端にある灯台まで進んだ。

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灯台の最寄りまで来ると、それまでのどこにでもあるアスファルト敷きの県道がレンガタイル貼りに変わって、にわかに観光地的な雰囲気を漂わせ始めた。
駐車場に車を止め、少し散策しようと思ったのだが、カミさんは車で待っているとのことだった。

なので、この先1人で散策することになったのだが、時間は16時を過ぎ、既にだいぶ日が傾いている。カミさんが車で留守番していることもあって、急ぎ足での散策となってしまった。

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▲トルコ記念館

トルコは親日国として知られている。明治23年にトルコの前身であったオスマン帝国のエルトゥールル号という軍艦が日本にやってきたのだが、その帰路の際にこの紀伊大島付近の岩礁で座礁した。事故によって6百数十名の乗員のうち500名以上が犠牲になるという大惨事であったが、その際この樫野地区の人たちが総出で遭難者の救助にあたった。その逸話が本国に伝わり、以来親日国家となったそうだ。

当時の自分は、そんな事件があったことも、トルコが親日国であることも知らなかった。

そうした事前知識があって、かつ、もう少し時間に余裕があったら、館内を見学に行ったのだと思うが、何となく早く戻らないと、と急かされているような気分で散策していたので、館内の見学はせずじまいだった。

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エルトゥールル号遭難慰霊碑

こちらが、その事件の慰霊碑である。立派な慰霊碑が建てられている。既に100年以上前の事件だが、今でも5年に一度、慰霊祭が行われているそうだ。

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そこから更に歩いていくと、突き当りに樫野埼灯台がある。綺麗な白亜の灯台だが、見た目に反して意外にも日本最古の石造り灯台らしい。

灯台を見ているうちにどんどん日が暮れてくる。冬の日没は早い。

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と言うことで、急ぎ足の島の散策はこれにて終了。トルコ記念館はもし再訪する機会に恵まれたら、今度は見学してみたいところだ。

 

さて、本日はの散策はこれで終わりにすることにした。温かい部屋で足を伸ばしてゆっくり休みたいと思い、宿に一泊することにした。
串本まで戻り、駅で探してもらったビジネスホテル串本が今日の寝床となった。

この宿は名前にビジネスホテルと冠されているが、古い観光地にありそうな家族経営の旅館っぽい雰囲気の宿だった。
嬉しいことにこのホテルには温泉が併設されている。なぜか風呂場は離れにあるのだが、とても良いお湯で、のんびり浸かって疲れを癒した。

それから部屋に戻り、近隣のコンビニで買って来た弁当をつまみながらゆっくりとした時間を過ごした。
コンビニに行ったついでに、この辺りのガイドブックを入手してきた。今頃見るのかよ、と言う感じがしなくもないが。

それをパラパラめくりながら、明日以降に行ってみたいところをピックアップして就寝。

Posted by gen_charly