茨城・千葉の私鉄探訪【3】(2008/02/02)

4.銚子電鉄


神栖で職員にお咎めを受けて軽く凹んだが、凹んでばかりもいられない。もう一か所見に行っておきたいところがあるのだ。というかまぁ銚子電鉄な訳だが。

銚子電鉄は全国にその名を轟かすじり貧路線である。銚子駅から外川駅まで6キロ余りを結ぶミニ私鉄だが、全線銚子市内を走っており昔からさして需要がなかったため割と早い時期から赤字経営が続いている。ここ最近は濡れせんべいの売り上げで辛うじて経営を支えているような残念な会社である。それほどまでに鉄道路線の経営状態は悪いのだが、不思議と潰れない路線である。

2000年頃まで初日の出を見るために毎年のように銚子に来ていたので、その際には必ずどこかしらの駅で車両を撮影していたのだが、大抵800形か1000形のどちらかを見かけるのがせいぜいで、他の車両にとんとお目にかかれなかったので、今回は車庫へ突撃してみることにした。


銚子電鉄の車庫は仲ノ町という駅に併設されている。カーナビに設定してやってきたのだが、周囲の道が入り組んでいてなかなかたどり着けなかった。

ようやくたどり着いた時には日も傾きかけていた。

20080202_164940

仲ノ町駅は開業当時の面影を今に伝える鄙びた駅舎だった。
駅の窓口で車庫を見学したい旨を伝えると、入場券を購入してくれ、と言われた。

k_20080202_04 k_20080202_05

入場券は裏面にデハ300形のイラストが描かれている硬券の物だった。

20080202_165047

ということで、駅にお邪魔。

20080202_164922

指さし確認で線路を横断して車庫の方へ行ってみると、まず最初に目についたのがデキ3と呼ばれる電気機関車。
ご覧のとおり実に小ぢんまりとした機関車である。車籍は既に無く現在は本線上の走行は出来ないとのこと。

20080202_164457

そしてその後ろ側に控えていたのが、入場券の裏面のイラストのモデルにもなっているデハ300形301。
こちらは元鶴見臨港鉄道(現JR鶴見線)のモハ110形で1930年製、車齢でいえば78年。流石に現役は退いたが、現在も架線点検車として使われているそうだ。

銚子電鉄の車両は数年前に写真のようなレトロイメージの塗装に塗り替えられた。車体がそもそもレトロそのものなので案外マッチしている。が、外板はだいぶ傷みが出始めている。

20080202_164410

こちらはデハ700形701。元近江鉄道のモハ51形だそうだ。
ウィキペディア情報によるとこの車両はかつて衝突事故を経験しており、台車の台枠が歪んでしまったため、若干傾いた状態になっているとのこと。そのまま走らせちゃうところが銚子電鉄の銚子電鉄たるところ。だが、それ以降事故などもなく元気に走行しているそうだ。

20080202_164514

そしてもう一両、デハ700形702。デハ701とセットだった車両だが、こちらは1960年代の銚子電鉄のカラーリングになっている。

20080202_164606

その反対側はご覧のとおり2枚窓になっている。元々は2両連結の片運転台車両だったが、銚子電鉄で反対側にも運転台を増設しており、その際2枚窓になったのだそうだ。

20080202_165031

1000形1001。これは言わずと知れた営団地下鉄(現東京メトロ)銀座線の2000形だった車両だ。
銀座線は1435mmゲージで集電も第三軌条から行う方式なのだが、パンタグラフを設置し日比谷線の台車を貰ってきて銚子電鉄スペシャルにしている。。。と言いつつ旧日立電鉄にも同型の車両があった、というかそちらの失注品が銚子電鉄に流れて来たらしい。

落成当初はこんな魔改造しちゃうのか、と度肝を抜かれたものだ。
桃太郎電鉄の広告?ラッピング車両になっていてサイドが煩いが、こういう所でコツコツ稼がなければならないのは致し方ない所。

20080202_165130

車庫の車両を一通り撮影してホームに戻ったらほどなくやってきたのが現在の主力のひとつ、800形801だった。
銚子電鉄では今でも荷物輸送の取り扱いがあるらしい。駅員が車両に段ボール箱を積み込んでいた。

それはさておき、よく見るとホームに段差がある。元々は右端の高さだったところへ、車両に合わせて嵩増しをしたような感じだが、それでも車両との間にはなお結構な段差がある。バリアフルだが、駅舎のかさ上げをする訳にもいかず、苦肉の策なのかもしれない。


おまけ


さて、以上で今日見て回ろうと思っていた茨城、千葉界隈のローカル私鉄探訪は全て終了。あとは帰宅するだけなのだが、折角銚子まで来たのでうおっせ21に立ち寄ってから帰ることにした。

うおっせ21は銚子で水揚げされた魚を売る観光客向けの魚市場のようなものなのだが、かつてここで買った銚子漬けという魚のみりん干しがとても美味だったので、以来ここへ来るたびに購入している。

銚子漬けは東洋水産(マルちゃん)が製造販売している、魚の一夜干しみりん漬けでサバ、さんま、赤魚、いわしの4種類がある。みりんの漬け加減が絶妙で、軽くあぶって食べるとご飯が何杯でも食べられるような代物なのだ。


ということで今回もやってきたわけだが、中の店は軒並み終了してしまっていた。もちろん東洋水産の売店もだ。
時計を見ると17時。ちょっと遅すぎたか。

店先に挿してあったパンフレットがあったので他に取り扱っているところがないか見てみたものの、ここでしか販売していないらしい。ただ、よく見ると営業時間が17:30までと記載されていた。あれ、今日は早じまい?

念のため電話で聞いてみよう、とパンフレットに記載されていた電話番号に電話をしてみた。
応対してくれた人にかくかくしかじか、と伝えると、パンフレットの方は誤記で17時が正しい閉店時間とのこと。ただ、折角お電話までいただいたのに申し訳ないので工場の方まで来てくれたらお売りしますよ、とおっしゃっていただいた。

銚子なんて頻繁に来られるところではないので入手できるものなら入手して帰りたい。工場は銚子市内にあるそうなので、じゃあ今から行きますと伝えて工場へ向かった。


たどり着いた工場は本当に工場然としていた。魚の加工場のような小さな町工場くらいのものを想像していたら、巨大物流センターかさもなくば半導体でも作っているんですか?くらいの巨大な工場だった。入口はいったら話が通るくらいの心構えだったので面食らってしまった。
それは良いのだが、差し当たってどこで話を繋いでもらえばよいかが分からない。周囲を見回して事務所の入口と思しきドアを見つけたので入ってみた。部外者立入禁止だったらどうしよう。。。

ドアから中に入ったら丁度出てこようとした人がいたので声をかけたら、さっきのお電話の方ですね、と対応してくれた。おお、一発ツモ!


その人の案内で応接室に通された。これまた予想と異なる展開。それこそ雑然とした事務所かなんかで売ってもらうものだとばかり思っていたのだが、これから商談でも始めるのかと言わんばかりの部屋だった。ただの買い物客に過ぎないのになんかかしこまってしまう。


それから暫くして今度は担当者が、いやー折角うおっせの方にお越しいただいたのにすみませんね、なんて言いながら入室してきた。
予め伝えておいた銚子漬けを携えている。それを受け取って代金を支払う。

気さくに話しかけてくれるのでこちらもつい饒舌になって、ここの銚子漬けは大好物なので銚子に来るたびに買っているんですよ、なんてヨイショしたら、じゃあいつものご愛顧に感謝してこちらもどうぞ、とサバの銚子漬けまでおまけしてもらった。いや、言ってみるものだねw


ついでに、随分と大きな工場で面食らいました、と話したら、この工場は日本でその存在を知らぬものはいないのではないかという、赤いきつねのお揚げの製造を一手に引き受けているのだとか。なるほど、インスタントラーメンの方の製造もここでやっていたのか。どうりで工場がデカい訳だ。

流石にいつものご愛顧に感謝して赤いきつねおまけしますね、とはならなかった。


お礼を言って工場を後にする。まぁ、これで帰宅でよかったのだが、ちょっとダメ押しで銚子駅にも立ち寄ってみた。

20080202_180628

ホームに停車していたのはE255系の特急しおさい。いつの間にか183系じゃなくなっていたのだな。

20080202_182327

それと211系。この車両は以前どこかの駅でホーム越しにちらっと見て以来、撮影しておきたいと思っていた車両だ。JR東日本千葉支社オリジナルの塗分けになっている。


千葉支社といえば労働闘争が盛んに繰り広げられていた国鉄時代に、特に先鋭的な活動をしていた支社として知られている。公務員にスト権はない筈なのに、割と最近まで度々ストライキを決行して利用者の顰蹙を買っていた。
そのことが本部から疎まれて未だに待遇が悪いというウワサがある。また真偽は不明だが、なかなか新型車の割り当てをしてもらえないという話もあって、実際、未だに113系が幅を利かせている。

コレクター系撮り鉄の自分としては、同じ車両の写真を何枚も撮ってもしょうがないので、そのこともこれまで千葉界隈に足が向かなかった要因のひとつだったりする。

211系なのでだいぶお古だが、ここへきてようやくステンレスの車両を割り当てて貰えたわけだ。

20080202_182157

銚子電鉄の銚子駅はJRのホーム先端に隣接して設けられている。そちらの方も見に行ってみたら、1000形1002が停まっていた。少し前に連載されていた「鉄子の旅」という漫画のコラボ企画でデザインされたカラーをまとっている。上半身をオレンジで残したのは銀座線へのオマージュだろうか。


この時間になると自分のデジカメはフリーハンドでの撮影に耐えられない。フラッシュを炊くと不自然な陰影になるし、炊かないとブレブレになる。長時間露光モードにすればそれなりに撮影できるのだが三脚がない。さてどうしたものかと思ったら、丁度いい感じの手すりがあったので、そこにカメラを載せて長時間露光をしてみた。確か30秒くらいかな。

それで撮れたのが上の写真。なんかちょっと切なさを感じさせる絵になった。結構気に入っている。


この日は終日どんよりとした曇り空で、写真撮影にはあまり向かない天気だった。撮影後カミさんの実家に一晩泊めてもらったのだが、翌朝起きたら雪景色だった。どんよりしていたけどまさか雪雲だったとは。。。

よりによって先週ノーマルタイヤに交換しちゃったんだよな。。。まぁ、帰宅するころにはあらかた除雪も済んでいて事なきを得たが。

(おわり)

Posted by gen_charly