沖縄離島探訪【2】(2006/11/20)
沖縄へ出発:
2006/11/20
我々が手配した那覇行きの便は羽田8:05発のJALの便。そこから逆算して自宅出発を5時とした訳だが、準備に手間取って結局一睡もできなかった。そんなコンディションで旅に出てもロクなことにならなさそうな気がするが、旅程が決まっているのだから行くしかない。。。
11月も下旬となれば東京はもう冬の入口である。夜明け前の屋外は何か羽織りたくなるほどの寒さだった。しかも雨も降っている。。。寒さに震えながらバスに乗り込んだ。
東京でこれだけ寒いのだから、いくら沖縄と言えどそこそこ冷え込むのではないかと言う気がした。流石にコートはいらないと思うが長袖だけで間に合うだろうか。最悪は現地調達になるだろうな、なんて考えているうちに羽田に到着。
飛行機は定刻に出発し、那覇着が10:55。もちろんフライト中は全力で寝た。
飛行機を降りて到着ロビーへ向かう通路がむわっとしていた。さすが沖縄だ、と言っても数字的には25℃くらいなので夏場のような暑さという訳ではない。それでも10℃以下の場所からやってきたので、思わず気が緩むその暖かさが嬉しかった。
那覇で宮古島へ向かうJTAの便に乗り換える。1時間ちょっとの乗り継ぎなので空港の外に出るほどの余裕はない。まぁ4カ月前に一度来ているので出て何かしたい訳でもない。と言うことでチェックインを済ませて待合所で暇をつぶした。
待合所のテレビから流れてきた天気予報によれば、我々の旅行中はあまり天気に恵まれないという予報が出ていた。外れてくれることを祈りたい。
そうこうするうち搭乗開始となったので、いそいそと乗り込んで程なく出発。
宮古島までは50分ほどの空の旅。
機内でだらだらとおしゃべりなどをしている間に、眼下に宮古島の島影が見えてきた。
最初に通過したのは、宮古島の北に隣接する来間(くりま)島だ。こうしてみると殆ど畑である。いかにも隆起サンゴによる島らしい平べったい形をしている。
来間島を過ぎると今度は宮古島の上空へ。見えているのは宮古島有数のビーチである前浜ビーチだが、こうしてみると人っ子一人いない。
やはり海のレジャーには向かない季節に来てしまったのか、という思いを強くする。
むしろ、人っ子一人いないのだから今行ったらビーチを独り占めできそうではあるが。
そして宮古島空港に着陸。
宮古島は2003年の社員旅行で上陸しているのでマストで上陸したい島と言う訳ではなかったが、美ら島きっぷの制約の都合上どうしても一度立ち寄る必要があったので訪島した次第。
その社員旅行では殆どの自由時間を伊良部島の散策で費やしてしまったため、宮古島の散策があまり出来なかった。そこで今回は夕方に石垣島へと移動するまでの時間、島の散策をしようと考えている。
空港を出たところにかりゆし姿のレンタカー屋の店員が立っていたので合流して手続きを済ませた。
今回は車中泊をする予定はない。流石に新婚旅行で車中泊は嫌だ、と言うことで車は軽自動車を手配してある。この島で用意されていたのはスズキのMRワゴンだった。前回借りた時にはナビがついていなかったが、今回はナビ付きだった。これから向かう所はナビなしでたどり着くのが難しそうな場所なので、運転席に座ってホッとした。
福里地下ダム:
で、宮古島の何を見に行くか。前回の社員旅行で宮古島の観光を殆どしなかったと書いたが、初日のバスツアーで定番の見どころは訪問しているので今回はそれ以外の場所で。他に面白そうな見所と言えば・・・ダムだ。
おいおい、新婚旅行一発目の観光地がダムかよ!というツッコミを全方位から受けそうだが、ここのダムはとても珍しい構造をしているのだ。
だからちょっと見に行かせて、とカミさんに頼んで了承は貰っている。
そのダムは島の南側にある。
と言う訳でやってきたのは福里ダムというダム。
上の写真がその福里ダムの写真なのだが。。。もちろんこの池がダムな訳はない。周囲は畑が広がるばかりでここ以外に水を貯めている場所が見当たらない。実はそれこそがこのダムの特徴なのだ。どういうことか。
さっき珍しい構造のダムだと述べたが、このダムは自分らの足元、地中に水を貯めている。これが他に比類なき珍しい構造なのだ。
珍しいダムだがいかんせん全く映えない。畑しかないからね。そんなところにわざわざ訪問する自分って。。。
地図でも通常ダムがある場所に描かれる水域が記載されていない。だから地元民でもない自分にとってはたどり着くのも一苦労。ナビなしではたどり着けそうにもなかったので、ナビ装着車で安心したという次第。
一応、タム公園と称して上記写真のようなちょっとした園地はあるのだが、やっぱりダムのそれとは思えない光景である。ただの畑を「ダムですよー」と騙して、「これが地下ダムかぁ」なんて感動している自分を物陰で笑っているのではないか、そんな疑念すら生まれる。。。
前述のとおり地下ダムなので水は地中に貯め込まれている。と言っても地下にコンクリのタンクがある訳ではない。
ご存じの方も多いと思うが、宮古島は隆起サンゴによって生まれた島である。サンゴが長い年月をかけて石灰岩となり、島の地中には石灰の層が堆積している。石灰岩は水によって少しずつ溶かされていくので、地面の下には隙間だらけになっている。石灰岩のある場所鍾乳洞あり、と言われる所以だ。
隙間だらけなので雨が降ってもすぐに地下にしみ込んでしまい、石灰層の下にある水を通しにくい泥岩の基盤層まで流れてしまう。その泥岩層は海面付近にあるため最終的に海岸付近で湧き水となって流出してしまうのだ。
この辺りは50m前後の標高があり、つまり石灰層もそれだけの厚さがある。かつてそんな深井戸を掘ることなど不可能だったので、島の農業は基本雨水に頼るしかなく、生産が不安定になりがちだった。
だが雨が降らない訳ではないので水そのものはあるだ。どうにかしてその水を利用できないか、と言うことで考え出されたのがこの地下ダムという仕組みなのだ。
丁度この辺りは泥岩の層がV字型になっているらしく、その谷間を塞ぐように水を遮る壁を作ることで、その上部の石灰層の隙間に地下水を貯めよう、と言うのがその仕組みである。
園地の一角にこんな場所がある。
ここは地下ダムの構造を一部地上に露出させて、その仕組みが分かるようにした場所だ。画面左側のコンクリートの堤防のようなものが、通常のダムでいうところの堤体にあたる止水壁と呼ばれるものである。
壁面の裏側が石灰層になっていて、この水面と同じ高さに地下水が満たされているという訳だ。これなら浅い井戸を掘るだけで豊かな水を得ることが可能になる。更には地下にダムを作ることにより、景観の破壊や水質の悪化などが起こらないというメリットもあるそうだ。
しかし、よくこんなものを思いついたものだ。
このダムが完成したことにより、この辺りの農地の水利が格段に向上し、安定した農作物の生産が可能になったそうだ。
湧水ムイガー:
さて、自分だけが満足して次の見どころへ。
その見どころはムイガーという。なんだか戦隊もののヒーローの名前のようだが、宮古島でかつて使われていた井戸の一つである。ダムの次は井戸か!
一応、こちらの井戸は島のガイドブックなどにも記載されている観光名所になっている。
宮古島は基本的に平坦な島と言うことだが、こうしてみると案外起伏がある。特にこの辺りの海岸線は高い崖になっていて、白いビーチの印象が強い宮古島のステレオタイプなイメージとは随分とかけ離れている。
アップダウンの続く道を非力な軽自動車でえっちら進んでいくと、道端に「湧水 ムイガー」の標識があった。
ここからはハイキングコースのような遊歩道を進む。
写真手前の陸地とその奥に広がる海との間の高低差が大きそうに見える所にご注目。
2つ上の写真でもその片鱗を見せていたが、この辺りは結構な崖になっている。遊歩道は崖下へ降りる道となっている。
その途中から崖下を覗くと海面とほぼ同じくらいの高さの所にため池が見える。これがムイガーである。ムイガーの「ガー」は宮古島の方言で井戸を指す言葉だ。
福里地下ダムの項でも触れたとおり、地下に浸透した雨水が泥岩の層を辿ってこういう所に湧出する。
逆に言うとこれよりも上ではいくら井戸を掘っても水が出ない。そのためかつての島の人たちは飲み水を得るために1日何度もこの崖を上り下りしたという。
今立っている場所からさっき通ってきた道のある方向を撮影したのがこの写真。真水が得られる場所がこうした荒々しい崖の波打ち際にしかないのである。毎日の上り下りもうんざりだが、ひとたび天気が荒れたら水くみ場に近づくことすら容易ではなくなってしまう。そうした環境で日々の生活を維持していかなければならなかった昔の人の苦労がしのばれる。
さて、再び車に戻る途中の道に何やら文字のようなものが書かれているのが見えたのでちょっと見に行ってみた。
暫く何と書いてあるのか解読に苦労したが、よく見ると「ワイドー」と書かれていた。ワイドーは宮古の方言で、標準語でいうところの「頑張れ」と言う意味だ。
なぜ道端にそんなことが書かれているのだろうか。色々想像を巡らせたが、よく考えてみたら宮古島はトライアスロンの島だった。
恐らくこの道がそのコースとなっているのだろう。
ふと時計を見ると時間はもう15時を回っていた。今晩は石垣島に渡って1泊するので夕方に石垣島行きの飛行機に乗ることになっているのだが、その時間は17:05。もうそんなに時間がない。気が付けばまだ昼食も食べていない。そろそろ何か食べておきたいところだ。
職場に宮古島に縁のある人がいて、旅行前にその人から宮古島の有名な沖縄そばの店を紹介してもらっている。
カミさんは沖縄そばがあまり好きではないらしく、その話をしてもあまりいい顔をしていなかったが、折角紹介して貰ったのに行かずじまいというのも何なので、食べて何かしら感想を報告しようとその店に行ってみることにしたのだが、着いてみると店は繁盛していて行列になっていた。
その行列を待っていたら飛行機に乗り遅れてしまうかもしれない。カミさんも乗り気じゃないので飛行機の時間の都合を言い訳にして結局行くのをやめた。とは言え腹は減っている。他の店を探してみようと周辺をウロウロしてみたのだが、2人が今食べたいものに一致する店が見つからない。一応弁当屋はあるので、そこならめいめい好きなものが食べられるからいいかなとも思ったが、流石に島まで来て弁当と言うのもなんだかパッとしない。
決まらないんだから石垣に着いてから夕食でもいいかな、と思い始めた時に、カミさんがもう弁当食べちゃおうよと言った。カミさんがいいならいいか、と言うことで結局弁当を買って車の中で食べた。
そうこうするうちもう出発の時間である。レンタカーを返却して空港に戻り、搭乗手続きをすます。
振り返れば宮古島に来てやったことは、ダムを見て、井戸を見て、弁当屋で弁当を食らっただけだ。流石に新婚旅行初日の行動としてこれはいかがなものか。。。
まぁ、明日以降はちゃんと人並みのアクティビティを考えているので、こうご期待!