宮古島社員旅行【1】(2003/07/19)

2002年の暮れに派遣社員をやめ、遅すぎる就職を果たした。新たな就職先となった会社は小さな商社だったのだが、業界では名の知られているところで業績も好調、年に一度は全員で社員旅行に行くのだという。

小さい商社と言うこともあり社風はアットホームで、その雰囲気自体は嫌いではなかったのだが、社員旅行と言われるとちょっと話が違う。オフの時間まで仕事づきあいのようなことをやらされるのはちょっと煩わしい。なので、正直な所不参加で済ませたい。とはいえ入社間もない人間が初回から社員旅行を欠席したら、居場所がなくなりそうだ。折角掴んだ正社員のポジションなので、ここで躓くわけにはいかない。

 

入社して数か月後、社員旅行の計画を聞かされてぶったまげた。なんと、行先は宮古島だという。宮古島って、あの沖縄の?なぜそんなところに?

入社して少しした頃に、上司から社員旅行は毎度遠くに行ってる、という話は聞かされていた。これまでもサイパン、グアム、台湾、など海外の島々へ毎年のように出かけたそうだ。だから今回も海外へ行くのかな、と思っていたのだが、沖縄本島ならいざ知らず、宮古島なんてマニアック(失礼)な離島に行くなんて、そんなプラン誰が思いついたのだろう??

 

そのプランナーは、いつも出入りしている旅行会社だった。
旅行のために会社を休業させるわけにはいかないので、例年夏の3連休にあわせて社員旅行を企画しているらしく、今までは2泊3日で行ける海外を中心にプランニングしていたが、手ごろな海外に行きつくしてしまったので、今回は趣向を変えて宮古島を提案してきたらしい。

じゃあ、なぜ沖縄本島ではなく宮古島なのかというと、社長を筆頭に役員連中が軒並みゴルフが大好きであるためらしい。
これまでの旅行先も、面白いゴルフコースがある場所であることがマスト条件で、その中から決められていたとのこと。
宮古島にもそうしたゴルフ場があり、かつ南国リゾートが楽しめて、2泊3日程度で程よく楽しめる場所、ということで提案されたそうだ。

基本的に旅行のメインはあくまでゴルフである。社長にとってゴルフが出来てみんなで食事ができるタイミングがあれば、後はどうでもよいらしく、2日目以降は自由行動となるだそうだ。自由行動中に発生する費用は流石に自腹だが。

驚いたことに社員の家族についても、希望すれば会社による費用負担で参加できるそうだ。なにその太っ腹加減?
家族を連れてこれるということは、家族と概ね水入らずで優雅なリゾートを満喫できるので家族サービスはバッチリである。これによりパパは株が上がり、奥さんや子供はリゾートを堪能できる。家族ぐるみで愛社精神が高まる、とそんな寸法だ。

随分と豪気な社員旅行だな、と驚かされるのと同時に、自由行動であれば行きたくもない場所に行かずに済むし他の社員に気遣わなくて済むので、参加に対する拒否感は幾分和らいだ。一方で、そんな場所に単身放り出されて、3日間何をすればよいのだろうか、という懸念が出てきた。
宮古島を含め、沖縄の辺りは自分の旅行先としてはまず選択肢に入らない場所だ。もちろん興味がない訳ではないのだが、自分の中の沖縄のイメージはマリンスポーツとリゾートで、陽キャが来て楽しむ場所である。そこへ行って自分な何をしているのか全く想像できず、2日間の自由時間をどうするか困惑していた。

とりあえずガイドブックを買ってきて、行きたいところがないか探してみるか。

ということで、買って来たガイドブックをパラパラめくっていたら、宮古島の隣に浮かぶ下地島という島にジャンボジェット機がタッチアンドゴーの練習をするための空港があると書かれていた。なにそれ!見てみたい。

更に、下地島と隣接する伊良部島には通り池という不思議な池があるらしい。それも気になる。案外、観光らしいこともできるんだな、と分かったら、なんだかちょっと楽しみになってきた。

 

というわけで、しょっぱなから単独行動前提の観光を検討していたのだが、同僚の何人かから一緒に行動しないか、と声をかけられた。だが話を聞く限り、彼らがやろうとしていることはやっぱりマリンスポーツやゴルフなのだ。それは断りづらいけど断りたい。
気持ちは有難いのだが、そんなところへ自分を引っ張り出さないでくれ。

なので、自分は見に行きたいところがあるのですが、一緒に行きませんか?と逆に誘い返してみたら、案の定やんわり断られた。
そんな訳で、見事ソロ活動をゲット。あれ、自ら孤立する方向に進んでやしないだろうか?w

まぁ、こういう観光なら単独の方が気兼ねがない。オラ、ワクワクしてきたぞw
ということで、出発日を迎えた。

 

宮古島へ


2003/07/19

集合は羽田空港に7:30。地方の支店の社員など間に合わない人は前泊するらしい。自分は当時都区内には住んでいたが、羽田までの道のりは微妙に遠くて、早朝の列車の乗り継ぎの悪さにやられて、集合時間ギリギリの到着になってしまった。

職場の自分の上司はちょっと尖っている人で、ギリギリになったことを咎められてしまった。間に合ったんだからいいじゃん、という思いもあってしょっぱなから少しヘソを曲げてしまった。。。

 

宮古島は沖縄本島の南西300キロに位置する島だ。島全体が隆起サンゴ礁でできていて、大きな起伏のない二等辺三角形のような形をしている。
島はこれまで他の島と地続きになったことがないらしく、南国の島々につきもののハブは生息していない。

島の自治体は平良(ひらら)市、城辺(ぐすくべ)町、下地(しもじ)町、上野村の1市2町1村(ほかに近隣の離島に伊良部町多良間村がある)で構成されている。
現在では、平成の大合併により多良間村を除く自治体が合併して宮古島市となっている。岩手県にすでに宮古市があるので、宮古「島」市となったのであろう。

 

快適な空の旅をヘソを曲げつつ楽しんで宮古島空港に到着。宮古島は自分の島旅の17番目の島である。
空港に降り立ったら、いきなり容赦ない日差しに焼かれた。太陽がまぶしい。。。気温は35度を超えているらしい。早速真夏の南国の洗礼を受けた。

これが沖縄か・・・なんて感慨にふける間もなく、バスに誘導されて初日のバス観光に出発。
まずは、空港からほど近い宮古島観光物産センターで昼食。他の社員へそつない対応をするための気遣いで、どんな雰囲気の場所だったか、とか、何を食べたか、とかそういうことは全く覚えていない。

 

池間島


食事後、再びバスに揺られて池間(いけま)大橋へ。橋を渡って池間島に上陸。これが18番目。
宮古島は台風の通り道になりやすい島だそうだ。これまでも、何度となく猛烈な台風の直撃を受けて大きな被害を出しているので、島の建物はよその沖縄の島々とは異なり、コンクリートで建てられた家が多い、といかにも島人っぽいこんがり日焼けした彫りの深いガイドが話していた。

確かに、沖縄の建物といえば赤い瓦の屋根にシーサーが乗っているイメージだが、この島では不愛想なコンクリートの四角四面な家を多く見かける。

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池間大橋は島の北の端、沖合に浮かぶ池間島へ渡る橋だ。
この橋の西側には細長い半島が伸びていて、その先端が西平安名崎(にしへんなざき)という岬になっている。海上に細長く伸びる半島は普段から風が強いので、風力発電のメッカとなっている。

自分も橋の周辺で盛大に回る風車を目にしている。確かに、これだけよく回るならさぞ効率よく発電してくれそうだ。

だが、ここの風の強さは半端なかった。
自分が島を訪れた数か月後、9月に発生した台風は猛烈な勢力に成長。そのまま宮古島を直撃した。
島の至る所で被害を出したこの台風、風車にも容赦なかった。ここで多数立って回っていた風車はこの台風によりほぼ倒壊してしまった。唯一倒壊を免れた風車も羽がすべて折れてしまい、もはや再起不能状態である。

この風車は100m/sの風に耐えられるように設計されていたらしい。それが全滅するということは、設計が虚偽でなければこのあたりにそれ以上の風が吹いたということだ。
気象庁の公式記録は74m/sであり記録的な暴風とされているが、実際にはそれ以上の風が吹き荒れていたのだろう。

台風が襲来している場所に行って「ものすごい風です!」なんて言いながら風に翻弄されているレポーターがいるが、あれでせいぜい20m/s程度らしい。
そう考えると100m/sの風などどんなふうに吹き荒れるのか全く想像もできない。
/sだから秒速である。1秒後にはそこにあったものが100m向こうまで飛ばされてしまうような風ということだ。

図らずもバスガイドが言っていた話が嘘でないことが証明された形になってしまった。

 

来間島


西平安名崎を見た後は、今度は島の南端にある来間(くりま)大橋を見に行くそうだ。この島の人は橋を観光スポットとしておススメしたいのだろうか。

と、バスがその道のりの途中で停まった。何事かと思ったらゴルフ場の前だった。
ゴルフ組は今日の午後から早速ハーフラウンドの予約を入れたらしく、ここで途中下車してプレイを楽しんでくるそうだ。

自由な会社だ。。。


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ゴルフ組が下車して幾分車内が閑散としたが、女子社員や家族連れの社員など7割くらいのメンバーは相変わらず着席している。
そして、一行を乗せたバスは来間大橋を渡って、来間島の展望台で小休止となった。来間島への上陸が19番目となった。

バスから降りて展望台へ行くと、マリンブルーの海にまっすぐ伸びる来間大橋の姿が一望できる場所だった。
この橋は農道橋というものらしい。橋の長さは1.6キロあって、日本一の長さとのこと。

橋の向こうには宮古島が見えている。橋は中央部が大型船を通すために盛り上がった形状をしているが、背後に見える宮古島はその高さよりも低いように見える。
そう考えると、やはり宮古島は平たい島といえるだろう。

眼下の海のマリンブルーは、日によって、時間によって、気候によって、その色合いが刻一刻と変化していくらしい。見てみたい気もするが、そこまでの滞在時間はないとのこと。

 

海宝館


そのあと、島の南東端にある東平安名崎に立ち寄り、遊歩道を散策したが、この時は写真に撮影していない。
それから本日の宿となる上野村のホテルに向かい、荷物を降ろした後、再びバスで夕食会会場となる海宝館(かいほうかん)へ向かった。

ハーフラウンドを済ませたゴルフ組もほどなく合流し、百数十人の大所帯で夕食会が始まった。

前述のとおり、社員の家族も参加しているうえ、支店勤務者など面識のない人も大勢いる。年寄りや子供は流石に見分けがつくが、大人は誰が社員で誰が家族だかさっぱりわからない。家族だと思っていたら、奥さんも自社の従業員だった、なんて話が出たりして、さらに分からなくなる。。。
上司に引き連れられ、方々にあいさつに回る。ぶっちゃけ面倒くさいが顔を覚えてもらうためには仕方がない。

 

やがて宴もたけなわになり、店のスタッフによるカチャーシーなども始まって、陽気な人は踊りだす。そんな雰囲気に、午前中に曲げたヘソも徐々に元に戻っていった。

踊りが終わったら、今年の新入社員の挨拶があるというので、呼び出しがかかった。その話を聞かされていなかったので、何を話そうか直前まで悩んだが、マイクを渡されるに至り、面倒くさくなって「超大型新人です!」と調子のいいことを言ってしまった。素面なのに。。。

まぁ、向こうは酒の勢いくらいに思っているだろうし、どうせ明日には忘れるだろうから、ま、いいかw

 

Posted by gen_charly