断層のエリアを過ぎると一旦建物の外へ出るようになっていて、その広場にマカオの聖ポール天主堂を想起させる壁が展示されている。
これは「神戸の壁」と名付けられている。昭和の始めに長田の公設市場に建てられた防火壁で、空襲の時も震災の火災の時も焼け残ったことから、奇跡の壁としてここに移築、展示しているとのこと。
振りむくと背後には民家が建っている。この民家は震災前に建てられたもので、地震で建物のすぐ脇で断層が動いたため大きな被害を出した。だが、コンクリート造であることが幸いし、建物自体は壊れずに残ったので、メモリアルハウスとして被害の爪痕を見学できるように保存展示されている。
敷地の周囲を囲む塀も断層によって、引きずられるように割れて斜めになっている。
建物内に入って最初の順路となる客間だ。この部屋は、断層によってわずかな傾きが生じてしまっている。
それがどのくらいの物か分かるよう、鴨居に水平線がひかれている。
また、奥にある語り部などが講演会をする部屋の壁にも大きくひび割れが走っているのが確認できた。
その部屋の向かいは台所になっていて、倒れかかった食器棚やそこから落ちて散乱した食器、あらぬ方向を向いてしまった家電などが展示され、当時の緊迫感が伝わってくる。
この家は震災後も暫くの間住人が暮らしていたので、その方が退去後に再現したものだ。
先日訪ねた有珠山の麓にある民家も整備してこのメモリアルハウスのようにしたら、当時の噴火のすさまじさを伝えるのにふさわしい施設になりそうな気がするが、いかがだろうか。
順路に従って進むと建物の外へ出る。で敷地の裏へと進むと、ここにも断層の露頭が残っている。
写真奥に広がる芝生にも断層の位置を示す赤い杭が置かれ、それをたどっていくと、さっき見た断層展示館の建物に続いている。
その脇にはプレハブ小屋が建てられており、液状化など地震で生じる現象を模式的に体感できる展示がなされていた。
その先が震災体験館。
前述のとおり、前回未訪に終わった場所で、今回はここを見るために訪れたといっても過言ではない。
中に入ると相変わらず人影まばら。地震体験は随時実施しているそうで、順番待ちもなかったので早速体験してみることに。
体験を始める前に「最初に兵庫県南部地震を再現した震度7の揺れと、それに続けて震度4相当の余震が発生するというシナリオで時間は40秒程度です。」と係員から解説があった。
それを聞きつつ備え付けのソファーに腰掛ける。程なく係員の合図に続いてシミュレータが小刻みに揺れ始める。次の瞬間左右に大きく揺さぶられる揺れが数秒続いて、これが収束する辺りで、再びもうひと揺れといった感じで余震が続き、体験終了。
効果音的なゴーッという音と、壁にかけられた時計が激しく壁をたたく音が館内に響き渡り、かなりの恐怖感が味わえる。
が、正直なところ、最初の感想は「あれ、震度7ってこんなもんなの?」だった。
もっと、こう、翻弄されるような揺れを想像していたので、ちょっと意外な感じ。
前触れなしにいきなり揺れ始めるのと、来るのが分かって身構えた状態で体験するのとではその感じ方が異なるのは当たり前だが、それにしてもこれしきの揺れが、その後の酸鼻を極める大災害へと発展するということが、頭の中で繋がらない。
もっとも、あくまでシミュレータ上での体験なので、実際のリアルな揺れとは異なる部分もあるのかもしれないが、なんというか3・11の時に東京で経験した揺れの方が遥かに強いインパクトがあった気がする。長かったもんなー、あの揺れ。
3・11を経験する前にこのシミュレータを体験していたらまた違う印象だったのかもしれないが。。。
いずれにしても、大地震が起こるということはどういうことなのかを、この施設で体験することでイメージ出来るようになる筈だ。建物は補強して倒壊を防ぎ、家具は固定して転倒を防ぐ。そうして地震発生時の最低限のライフスペースを確保する。揺れが収まったら冷静に火と電気の始末を徹底して二次災害を防ぐ。
古くから何度も耳にしているごく当たり前の防災対策を徹底することこそが、被害を最小限に食い止めるために非常に有効なものであるということが再認識された。
ということで、北淡震災記念公園の再訪が叶ったので、次はカミさんの希望であるお香作りの体験。
淡路島はお香の産地としても有名なんだそうで、いくつかの施設では製作体験もやっているらしい。
ということで、予め調べておいた梅薫堂というお店に電話するものの、いくらコールしてもつながらない。
多分もう年末年始休暇に入ってしまったのだろう。
まぁ、自分たちが仕事納めを済ませてやってきているくらいだから、それは想定済み。
もう一か所、パルシェという施設もチェックしてあって、電話で確認するとこちらは営業しているとのこと。