お伊勢参りと三河湾の離島めぐり【8】(2015/04/27)
今回歩いたルート
島旅88島目は渡鹿野島となった。
対岸からも見えていた高層のホテルが、壁のように立ち並ぶ港にひと気は少なく、島の老人たちが堤防の片隅で世間話に興じる、のどかな雰囲気の割とどこにでもありそうな小離島、というのが最初の印象だ。
待合所の立体模型を参考に大まかなコースを考えて、後はスマホの地図を頼りに歩き始めた。
島は港から見ると左右に半島を伸ばしたような形になっていて、その見た目から、「ハートアイランド」という愛称がつけられているようだ。
どこまで網羅できるかわからないが、まずは島の東側(上の模型だと右手側)から反時計回りで回ってみようと思う。
港湾エリアを抜けるとすぐ、車も通れないような路地に入り込む。
宅地に沿ってグネグネと曲がりくねる路地は、一歩踏み入れたら迷子になりそうだ。とはいえ、所詮小さな集落なので、当てずっぽうに歩いてもそのうちどこかに出られるのでそんなに心配はいらない。島めぐりの醍醐味の一つだ。
大概の島は、比較的急峻な山裾の狭い平地に集落が開けていることが多く、入り組んだ路地は大した奥行きを持たないまま山すそに突き当たるパターンが多いのだが、渡鹿野島はもとより比較的平たい島なせいか、集落の背後に迫りくるような山並みも見えず、小さな島であることを忘れそうになるような風景の広がりを感じた。
歩くうち、道はやや広くなったが、相変わらずひと気は殆どない。小離島を歩くと割とどこでもこんな感じだが、意外にもかつての売春島を偲ばせるようなものはほとんど見当たらない。
こんな小島には似つかわしくない古びたアパートがあったりして、もしかしたら従業員などがここで寝泊まりしていたのかな、と思ったりもしたが、それ以外はどこにでもある至って普通の離島の風景そのものだった。
緩やかな坂道を登るうち、見晴らしの良い所に出た。
ここから集落の全容が眺められるが、海沿いのホテル以外はなんということはない漁村だ。
島の住人が全て非合法な商売に従事している訳はなく、生まれてこの方ずっと真っ当な生業で生計を立ててきたという人も住んでいると思うが、そういう人たちが自分の故郷をそのような称号で称されることに対して、どのように気持ちの折り合いをつけてきたのかは気になるところである。
この道をまっすぐ行くと、島の北側にある入り江の一つに出られるようなので、そこまで行ってみることに。
ちょっとしたピークを越えて反対側へ降り始めると住宅の姿もまばらになり、道もだんだん荒れてくる。その途中、遊具が置かれた建物の脇を通った。
見た感じ、小学校の分校か幼稚園のように見えたが、保育園だったようだ。雑草が生い茂って今は廃墟になってしまっている。
そして、保育園の脇の道をさらに抜けてゆくと、道はとうとう薮なのか道なのか良く分からない感じになってくる。その向こうに湾の深い入り江を埋める水面が見えているのだが、この先はあまり人が立ち入ってなさそうな雰囲気だったので、ここで折り返すことにした。
戻って少し山手を登るように進むと神社の石柱を見つけた。
こちらは尾根道なので、集落側が正面になっている拝殿はここから見えない。
尾根道から分岐して神社に続くらせん状の道を降りてゆくと、やがて小さな拝殿が見えてきた。
ここの神社は八重垣神社と言うそうだ。
スサノオノミコトとウブスナノミコトを祀っているとのこと。
しばし足を止めて参拝。
尾根道はまだ続いているようだったが、戻るのが億劫だったので、そのまま集落の方に降りてみることにした。
港に近づくにつれ、建物が密集し始め、またホテルに近いせいかスナックなども軒を連ねていて、かすかに歓楽街の雰囲気を漂わせている。
もっとも、空き店舗もちらほら見かける感じで、主力産業なき後の経営の厳しさが伝わってくるような気がする。
軒先でウチらに甘えた声を出す猫がいた。首輪がついているので飼い猫のようだが、看板娘、と言った所か。
そうこうするうち、路地を抜け港に戻って来た。
まだ日が暮れるまで少し時間がありそうなので、このホテル街の裏路地を散策してみることにした。
意外なことにこれらのホテルはかなりの高級宿らしい。じゃらんなどで見ると一泊3万とか5万とかというプライスが並んでいる。
海水浴客はあらかた日帰りだろうし、本土も遠くないので泊っていく人はそう多くない気がする。それ以外にはこれといって観光もないし、温泉があるわけでもない。どんな客をターゲットにしているのだろうか、とか、どんなビジネスモデルで成立しているのだろうか、とか気にならなくもない。
ホテルの入口から見える敷地内の光景は、それらしくプロデュースされている感じではあるのだが、いかんせん渡船場からここまでの風景がだいぶ鄙びているので、来訪者はそのギャップに驚くのではないかといらぬ心配までしてしまう。
こちらの路地にも何軒か夜の店がある。
その路地の傍らで、渡船を操船していた若者が地元の仲間と談笑していた。
その先は漁港になっているようだ。唐突に廃材となった浮きを再利用したお手製のキャラクターたちが所々で脇の藪から顔を覗かせていた。
んしょ、んしょ・・・。
やあ、ぼく、ド○えもん!
つか、意外とクオリティが高くてびっくり。
興に乗ってたくさん作ってみました、という趣き。
この辺のキャラクターは基本的に○なので作りやすいのかも。
彼らにいざなわれるように路地を進むとやがて漁港に着いた。
気が付けば、間もなく日没だ。
無事帰ろうね。
・・・ということで、日が暮れかかってきたので、我々もぼちぼち戻ったほうが良い時間だ。
まだ夕暮れだが、うす暗くなって街灯に火がともるようになると、いくらか妖しげな雰囲気を漂わせ始める気がするのは、私の考えすぎだろうか?
港の待合所で休憩していたら、ほどなく対岸から船が戻って来た。待合所には行きの時にも一緒になったスーツ姿の中年の姿があった。
彼はどう考えても観光ではなさそうだが、旅行会社の人だろうか?
あちこちブラブラした気になっていたが、戻ってきたらちょうど一時間だった。
一時間程度の散策で全てを見切ったとはとても言えないが、思ったよりはかつてを偲ばせるような淫靡な香りを感じさせられる場面はなかった。
ちなみに、数十年前までは日本人が相手してくれたらしいが、今ではその数を大きく減らし、働く人たちも外国人が多くなっているそうだ。
外国から日本に来るだけでも大変なのに、言ってはなんだがこれと言った娯楽もなく、日々の買い物にも不自由しそうな島で暮らしていく大変さはいかばかりだろうか。
まぁ、思いを馳せても詮無いことなので、それはさておき。
再び和部港に戻る頃には日も暮れてしまったので、今日の幕営地を目指すことにした。
今日の幕営地は言うまでもなく、昼間立ち寄った道の駅「伊勢志摩」だ。
山の中腹にあり、夜間は交通量も少なそうなので、落ち着いて夜を過ごせそうだ。お米が食べたかったので、再びタケル君に登場願い、ご飯を炊いている間に通りがかりのスーパーで食材を入手、その足で道の駅に直行した。
ということで、本日の晩御飯。
見栄えがあまりよくないが、シンプルにご飯、梅干し、納豆、豚汁という布陣だ。
豚汁がメインでご飯が付け合せと言う位置づけになる。
腹も膨れたところで、早々に就寝。