鋸山に登ろう【1】(2021/01/16)
チビの登山チャレンジ第三弾は鋸山だ。
今住んでいる千葉県から近くて、子供でも登れて、かつ、まぁまぁ登りごたえがある山といえば、その筆頭は前回登った筑波山だが、関東の西側の方に目を向ければ、高尾山をはじめとしていい感じの山がいくつもある。
だが、千葉からそれらの山へ行くには都心を通り抜ける必要があり、現地までの移動がかなりだるい。
こないだ秩父に行った時も片道6時間くらいかかっている。いや、道草を食わずに向かえば3時間くらいで行けるのだが、チビを連れて行くと、途中で休憩や遊ばせる時間も考慮に入れておかないとならないので、そのくらいの時間がかかるのだ。
移動で疲れてしまうのもあるが、そもそも行って帰ってくるだけで日が暮れてしまうので、なかなか足が向かない。
コロナが幾分終息の気配を見せ始めている今のうちに、もう一つ二つ山に登りたい。とはいっても、チビが一緒に登る山なので、ある程度登山道が整備されている山がいい。更に言えば頂上からの見晴らしの良い山だともっといい。
そう考えると、案外近くに丁度良い山がないのである。なので、消極的選択っぽい感じではあるのだが、鋸山に登ってみようと思った。
鋸山は2010年に夫婦で一度登っている(記事にはしていない)。
標高は330mほどで、登山の大変さはあまりないが、散歩半分で行って見るのも面白そうだ。
ということで、新春最初のお出かけは鋸山チャレンジである。
父はテレワークが1年近く続いていてあまり外出もしないものだから、体力がだいぶ落ちている。自分が脱落しなければよいのだが。。。
2021/01/16
早朝に自宅を出発。だが、千葉県内は道路事情が良くないので、あちこちで混雑していた。結局、鋸山の最寄りとなる浜金谷駅近くの駐車場に着いたのは9時半くらいだった。
まぁ、鋸山なので今から登っても十分帰ってこられるだろう。
荷物を背負ってまずは浜金谷駅でトイレを借りる。無料で借りることが出来たが、お礼を兼ねて入場券を購入。
丁度特急列車がやってきて、チビが大喜び。
集落の中の道をしばらく進んでいくと、内房線の線路をくぐる。くぐってもうひとしきり進むと登山道への分岐がある。道は3方向に分岐しているが、尾根にとりつく直進の階段が「関東ふれあいの道」、左の車道は「車力道コース」と呼ばれる登山道で、それぞれ鋸山の山頂を目指している。一番右の道は登山道ではないので注意。
関東ふれあいの道コースはあまり見どころがないらしいので、車力道コースから登ってみよう。
では出発。
舗装された道を暫く進んでいくと、館山道をくぐるガードが見えてくる。その脇に舗装されていない道が左に分岐しており、登山道は左へ進む。
筑波山ではLEKIのストックの片方をチビに貸したが、あれはそれなりに高かったやつなので、あんまり乱暴に使ってほしくない。ということで、カミさんが昔使っていたものをチビにあげることにした。自分専用のストックを手に入れてご機嫌である。
鋸山は房州石の石切り場だった山として有名である。
今登っている登山道は車力道と呼ばれている。車力道というのは、切り出した石材を麓に運び出すために作られた通路のことである。
かつて、この道を石を積んだ台車が上り下りしていたのだ。
重たい石を乗せた台車が通る道なので、平坦に作られている。起伏のある所はこんな感じの切通しになっているところもある。
なんか、死なないための道を思い出した。
平坦なうえに足元は石が敷かれているので、登山と言うよりは遊歩道を歩いている感じだ。
ちなみに車力とは石材を運ぶ人夫のことである。「あたりきしゃりきせんめんき」の「しゃりき」は車力のことだろうか?
かつては80キロの石を乗せた荷車を引いて1日3往復したそうである。
しかもその任を請け負っていたのはもっぱら地元の女性だったそうだ。こんなところ空荷でも3往復もしたら結構死ねるのに。。。
昔の人は頑丈だったんだなぁ。
しばらく進んでいくと明るいところに出た。木々がなぎ倒されていたり、それらを切り出した丸太が散乱している。
2019年の台風19号は千葉県内でも大きな被害を出した。台風が通過した後、ニュースか何かで鋸山の登山道が被害多数で通行止めになっているという話を聞いていた。
今回の登山にあたって念のため再度チェックしたら、既に整備が済んで開通しているということだったので登りに来たわけだが、恐らく、台風通過直後は至る所がこんな感じだったのだろうと思う。
登山道の整備は基本的に地元の有志やボランティアが行っている。これだけの木を切り倒して除去するだけでも大変だったのだろうと思う。更に登山道で崩れているところや壊れているところがあれば修復もしなければならない。
そうした方々の尽力で、我々が安全に登山をすることが出来るのである。感謝をしながら進んだ。
地面に敷石をしているところもある。敷石には車輪の幅に溝が掘られている。レールとして予め掘ったものなのか、ここを行き来した台車によって自然に掘られてしまったものなのかは分からない。
車力道の路肩に苔むした石が積みあがっている。敷石に使うつもりで持ってきて余ったものなのか、何らかの事情で投棄されたものなのか、やはり分からない。
やがて、車力道だった道が終わって、山頂へ向かうための登山道となった。勾配が急になり、ようやく登山道らしさが出てきた。
1月の登山ではあるが、歩いているうちに体がポカポカしてくるので、ダウンは脱いでしまった。こんな薄着でも全然寒くない。
登り始めて1時間ほどで石切り場の跡地が見えてきた。
ここは「吹抜洞窟」と呼ばれているそうだ。
石切り場を見るといつも思うのだが、どうしてこんな風に洞窟状に掘ったり、中途半端に掘り止めたりしているのだろうか。
まさか現場監督の美意識の発露ではないだろう。その時その時の判断によってこの形になったに過ぎない筈だが、何かしらの意図をもってこのような形になっているようにも見える。
実は神様によって作られた設計図あって、この形になることが必然となるように導かれているのではないか、などと妄想してみると、また味わい深いものである。
洞窟の中をアップで撮ってみた。
すでに一度切り出されたものと思しき石材を積み直して、柱状にして天井をささえているのが見える。
その上に載っている岩塊の大きさを考えると、何とも心もとない感じだが、掘り進めていくうちに地盤が不安定になって急場しのぎをした痕跡なのだろうか?
当時、この現場でプロジェクトxのネタに匹敵するような壮大がドラマがあったのかもしれない。そういう証言みたいなものは残っていないものだろうか。あったら聞いてみたい。
石切り場の跡は鋸山の見どころの一つだが、まだ頂上ではない。
ひとしきり休憩してさらに進む。
稜線の直前は傾斜が急で、階段もまた急だ。鋸山と呼ばれる所以だ。
流石にチビも少しへこたれ始めている。
で、登りきると、急に見晴らしがよくなる。
絶景!
ここは「東京湾を望む展望台」である。その名の通り、遮るものが一切なく遠くの方まで見晴らせる。
パノラマ写真をどうぞ。
が、そんな場所だけに風が強い。今日は特に強風が吹き荒れていて、じっとしていられないほどだ。
穏やかな日だったら、ここでランチと行きたいところだが、こんな強風ではだめだ。
少しだけ休憩して退散。来た道を少し戻ったところで何組かの人が昼食を取っていた。その辺りは山が壁になって風を避けることが出来ている。我々も空いている場所を見つけてそこでランチにした。
いつもの登山では山頂のカップ麺が定番なのだが、今回は自宅からおにぎり持参。たまにはおにぎりもいいものだね。