茨城・千葉のローカル私鉄巡り(2007/03/25)

社会人になってからも鉄道ファン属性はあまり人前では出さないようにしていた。カミさんと結婚してからもそのスタンスは変えておらず、殆ど鉄道車両の撮影はしていない。旅先でたまたま出会った車両を撮ったりする程度で、腰を据えた撮影旅行はとんとご無沙汰だった。

そんな中でも、鉄道関連の情報はチマチマチェックし続けていたのだが、ある時、鹿島鉄道が廃止になるというニュースを見つけた。
少し前に都内の下町の方に引っ越してきていて、縁遠かった千葉・茨城方面にアプローチしやすくなっていたこともあり、ちょっと撮影しに行ってみたくなった。

どうせ行くなら周辺の他の鉄道路線もチェックしておきたい。その場合、車で行かざるを得ない。地方の鉄道は接続が悪いことが多く、いっぺんにあちこち欲張って撮影するような場合は鉄道での移動は非効率なのである。じゃあ、何度かに分ければいいじゃないか、という話もあるが、カミさんの手前、そう頻繁に1人であちこちほっつき歩くわけにもいかない。

とはいえ、車でやってきて写真だけ撮影してそのまま立ち去る、というのは自分のポリシーに反する。という訳で、行った先々で記念切符や入場券などを購入することにしている。免罪符にはならないかもしれないが、多少の罪滅ぼしになってくれていることを願いつつ。。。


2007/03/25

鹿島鉄道は茨城県の石岡と鉾田の間を結ぶローカル私鉄である。鹿島臨海鉄道と名前が似通っているが全く別の会社である。
2007年3月31日限りで全線廃止となっており、自分が訪ねたのはその6日前。その日はカミさんが別件で外出するというので、1日時間を貰って訪ねて回った。

k_20070325_02_01

石岡のホームに上がると列車に乗ろうと訪ねてきた人が鈴なりになっていた。やっぱり、廃止間際ってこうなるんだね。自分もその1人だが。

20070325_093959

駅の留置線にはキハ431とキハ432が停まっていた。この車両は既に廃止になった東武熊谷線のキハ2000形と同様の設計になっている。湘南型フェイスのかなり古い車両だが、手入れが良いのか実際の車齢を考えるとかなり綺麗に維持されている。

20070325_094056

ホームには最新鋭のKRー500形が停まっている。こちらの車齢はまだ10年程度なので、廃止後はどこかに引き取られるだろう、と思っていたのだが、譲渡先が見つからないまま廃車となり、今は個人に引き渡されて保存されているという。

20070325_094933

そのKR-500形が出発したのち、ほどなく、留置線に停まっていたキハ431・432のペアが入線してきた。

20070325_094658

車内はこんな感じ。板張りの床が懐かしい。
乗車する時間は取れないので、発車していくのを見送って、常磐線ホームに移動。

20070325_100050

丁度ホームから車庫に停まるキハ601を見ることが出来た。コンパクトカメラのズーム利用での撮影なので画質が粗いのが残念だが、撮影できてよかった。
この車両は前面がシンプルなデザインになっているので、ぱっと見あまり古さを感じさせないが、サイドビューを見ると国鉄のキハ04であることが分かる。
実は当時日本最古のディーゼルカーと言われていた。

 

さて、石岡での撮影はここまで。次は関東鉄道竜ヶ崎線の写真を撮りに行ってみることに。
携帯をチェックしたらメール着信があった。見てみると地震通知メールで、石川で地震があったと書かれている。
それはのちに能登半島地震と呼ばれることになった大地震だった。

弟が金沢に住んでいるので、心配になってメールを送ったら、少しして返信があった。金沢は震度4程度で特に被害なしとのこと。それを聞いて一安心。そのやり取りに30分ほど費やしたが、とりあえず無事が確認できたので、撮影の旅続行。

k_20070325_04

で、竜ヶ崎にやってきた。
竜ヶ崎線も特徴的な路線だ。常磐線の佐貫(現:龍ヶ崎市)から分岐して僅か2駅、ほんの数kmほどの短い路線である。経営成り立つのだろうか。

20070325_113853

まずはホームに停まっていたキハ2000形。竜ヶ崎線専用なので、行き先表示部分は固定になっている。

20070325_114111

車庫の中に停まっていたキハ532。

 

それから関東鉄道つながりで常総線の車両も見に行くことにした。
鹿島鉄道や、既に廃止された筑波鉄道もかつては関東鉄道の1路線だった。当時は大手私鉄とも引けを取らない路線長を誇り、日本最大の非電化私鉄と称されていたが、後に再度分社化され、現在は常総線と竜ケ崎線の2路線のみが関東鉄道の路線として存続している。

竜ヶ崎線は短い路線なので、ほぼ常総線が全てと言ってよい。その常総線は取手から守谷、水海道を経由して下館との間を結んでおり、取手から水海道の間の市街区間と守谷から下館のローカル区間に分けられる。その両者で沿線の雰囲気は大きく異なり、車両もそれぞれの需要に対応する形で多数在籍している。自社製造の車両もあるが、国鉄から譲り受けた車両も多く、関東地方では数を減らしつつあるキハ30系なども在籍している。

 

それらが羽を休める車庫は水海道の近くにある。ということで訪ねてみたら、日中の閑散時間帯のせいか多くの車両が停まっていた。

20070325_130045

まず、キハ0形。旧国鉄のキハ20系の機関を流用して車体を新製している。

20070325_130719

それから、キハ300形。キハ0形とよく似たデザインとなっているが、こちらは国鉄キハ10系が元になっているとのことだ。この車両は既に廃形式となっていて存在しない。

20070325_130100

そしてキハ350形。元国鉄のキハ30/35系列である。キハ10・20系を導入した時は車体新製が行われたが、キハ30/35系列は元から通勤形だったので、国鉄時代の車体のままで入線している。
映画の撮影のため京浜東北線をイメージしたスカイブルーに塗られている。が、これを京浜東北線の電車、というにはかなり無理がある気がするのは、自分が鉄道ファンだからだろうか。。。
この車両も近年の2000系列の増備により既に全廃されてしまっている。

 

さて、まだまだ行きますよ。

k_20070325_05

続いて訪れたのは千葉県の流山駅。総武流山電鉄(現:流鉄)の駅である。
総武流山電鉄は馬橋から流山の間、僅か5.7キロを結ぶ路線である。15両編成の列車が行き交う常磐線の線路の片隅に2両か3両の電車が小ぢんまりと停まっている様はとても都心から数十分で来られる場所のそれとは思えない。

ここもかつては自社発注の車両が見られたが、数十年前から一貫して西武鉄道のお下がりが走っている。

20070325_140136

3000形。もと西武の101系か701系辺りと思われる。

20070325_140155

こちらは2両編成の2000形。モーターが付いている車両は4桁、付いていない車両は2桁の番号になっている。
それぞれ、編成ごとに車両の色が変えられており、愛称が付いていることは有名である。

 

さて、次。佐倉市に存在するモノレール、ユーカリが丘線を見に行ってみよう。

20070325_152323

途中、八千代市にある東葉高速鉄道の車庫へ寄り道してみたが、留置線に停まっていたのは東京メトロの05系だった。

 

で、やってきたのは公園駅。近所のスーパーに車を置かせてもらい、歩いてやってきた。今日はこのユーカリが丘線の撮影を持って終了である。到着時間次第、と思っていたが、着いてみたらまだ日が暮れるまでに少し時間があったので、乗車することにした。

k_20070325_10

しかし、公園駅である。このユーカリが丘線は、ユーカリが丘駅を出ると、地区センター、公園、女子大、中学校、井野、と進み再び公園駅に戻ってくるコースになっているのだが、駅名のラインナップを見よ。井野以外はどこの土地にあるのか一切分からないような無味乾燥な名前である。そのうえ、女子大に至っては駅の近くにあるのは女子大のセミナーハウス、という羊頭狗肉状態。路線が地元で完結しているから地元の人が分かればいい、ということなのだろうが、もう少しどうにかならなかったものだろうか。

 

この路線は、山万という不動産会社が運営している。ユーカリが丘の住宅地を開発する際に地域内の公共交通手段として建設された路線だ。
開業して25年ほどの路線だが、リニューアルなどは最小限にとどまっていて、施設は開通当時の雰囲気を良く残している。駅の券売機もちょっとレトロなものが未だに使われていて懐かしい。更にはICカード乗車券にも対応しておらず、定期客以外は切符を買う必要がある。

さて、昭和50年代の質実剛健さの雰囲気がある階段を登ってホームに出てみると、ほどなく列車がやってきた。

20070325_161233

1000形。開業当初から運用されている車両で、こあら号という愛称が付けられている。
ご覧のとおりいわゆる新交通システムに属しており、線路に相当する案内軌条と呼ばれるものが路面の中央に設けられている。このタイプの路線は日本ではここにしかないという貴重な路線だが、逆に(記事公開時点で)開業から40年以上が経過していおり、車両も含めた更新時期に差し掛かっている。だが、他に類を見ない規格故、更新の際のコストが問題になるかもしれない。

20070325_161654

車内はこんな感じである。路線延長が僅か4キロ余りなので、このサイズで事足りるのだろう。自分が乗った時には誰も乗ってなかったし。
車両は撮影当時で製造から25年ほど経過していたが、手入れが行き届いていて、車体の汚れもなく、また車内も綺麗に維持されている。不動産会社が運営する鉄道と言えば和歌山にある紀州鉄道も有名だが、紀州鉄道のややおざなりな運営と比べると、しっかりとした維持が為されているように感じた。

もとより山万の鉄道参入については様々な紆余曲折の末に認可されたという経緯があり、鉄道専業の会社じゃなくてもちゃんと鉄道の運営ができることを証明しなければならないという使命を常に意識しているためか、開業以来鉄道事故ゼロを続けている。

 

一周してきて再び公園駅に戻ってきた。地元の人にとってどのくらい便利に使える路線なのかは分からないが、自分みたいな人間とっては、住まう街にこんな路線があるというだけでとても羨ましく思う。
しかも都市間輸送ではなく、あくまでニュータウン内でクローズしたコミュニティバス的な位置づけの路線である。オンリーワン感が凄くて悶えそうだw

 

という訳で、今回の旅はこれでおしまい。

(おわり)

Posted by gen_charly