富士山リベンジ【7】(2013/08/24)
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御殿場口から下山を開始する。相変わらずどこかから雲がひっきりなしに流れてきて、下界がくっきりと見えたかと思うと次の瞬間雲の中である。雨もなかなか止まず、気分的に盛り上がらない。
粛々、淡々と下山を続ける
雲が切れた隙に写した静岡方面。
富士山と同時に世界文化遺産に登録された三保の松原がある、三保半島の特徴的なカーブが見える。
あそこの海岸沿いでデルソルの写真を撮ったことを思い出す。
そして、意外にも登山道からは山中湖を見ることが出来た。
早く下山して、腹いっぱいご飯が食べたい。そんな気持ちは沸いてくるが、体の準備はまだのようだ。
相変わらずテンポを速めるすぐに息が上がる。しかも浮石が多く転がっているので、気を抜くと足を持っていかれる。なので、一歩ずつ足元を確かめながらの下山である。
七合九勺の赤岩八合館へと向かう途中で、昨日宝永山の辺りで抜きつ抜かれつしたグループとすれ違った。彼らは予定通り赤岩八合館に泊まったようだ。これから頂上を目指すとのこと。頂上付近は比較的天気が荒れてることを伝えて彼らを見送った。こちらは淡々と下山。
その赤岩八合館まで降りたところで小休止。
風や雨が収まり始めたので、手袋やレインコートを脱ごうと思ったのだが、脱ぎきる前にまた雨が降ってきたので、もう少し着ていることに。。。
山頂から六合目までは行きと同じコースで、特に目新しいものもないので省略。
下山中、時折遠雷のような音が聞こえた。頂上は荒れているのだろうか。避難する場所もろくにないような登山道で、雷に遭遇したら身を守るすべがない。さっきのグループは無事登れるかな、と心配したが、実はこの遠雷、麓の演習場で大砲などの火器を使用した演習の音だということを下山後に知った。
砂走館、わらじ館と逆に辿って日の出館に到着。標高が低くなったせいか、体調もほぼ元通りになっておなかも空いてきたので、持参したシリアルバーを食べることに。
昨日の昼食以来、ロクに何も食べていないので、胃袋に落とすたびに体に沁みいる感じがする。
病人のようにゆっくりと食べて、ダメ押しでキャラメルをひとつ口に放り込んだ。
この辺りでは、すっかり雨も上がり、雲も切れた。もう降られることはなさそうだったので、レインコートを脱いで、ついでに手袋も軍手に変えた。
乾いた風がとても心地よい。
日の出館の先で道が登山道と下山道に分かれる。下山道を降りること数分で、登るときに通った宝永山方面への登山道が見えてきた。ここまで降りればほぼ安心である。
このまま宝永火口方面へ進めばプリンスルートを逆戻りする形でほどなく富士宮口五合目まで戻ることが出来るだろう。でもせっかく御殿場口を下山しているからには、やはりこの先の砂走りを体験しておきたいところ。
砂走りは、七合目から五合目にかけて広がる、宝永山から噴出した火山灰で覆われたエリアを下山するルートである。他の登山道とは異なり、クッションのような柔らかくキメの細かい火山灰の上を歩くので、まるでマットの上かなんかを歩くような感触を楽しむことができる。
スピードを出しても足の負担にならないし、万一転倒しても大きな怪我をする心配が少ないので、小走りで一気に駆け下ることもでき、とにかく爽快だそうだ。
砂地のエリアになるので、いよいよスパッツの出番だ。
最初のうちは小石に交じって人の頭大の岩もゴロゴロと転がっているので、ペースを上げるのはもう少し進んでから。
ずっとここまで九十九折に下ってきたが、ここから先は一直線だ。周りに障害になるような岩も山も崖もないので、無遠慮にまっすぐだ。見晴らしは最高。
これまで腰や首に負担がかからないように、つま先と膝を使って衝撃を吸収しながら歩いてきたので、ひざから下が疲れてしまったが、ここから先は足元が非常に柔らかいのでだいぶ歩きやすくなった。
初めて経験なので、一応、最初のうちは足元を気にしながら進んだが、プリンスルートの分岐の少し先からは、ほぼ火山灰メインとなり、大きな岩も少なくなった。道幅もだいぶ広くなって更に歩きやすい。
登り慣れている人は、もうこの辺りで軽快なステップを刻んで降りていく。
この辺から先は大砂走りと言って、砂走りのメインステージである。1歩で3mずつ進めるというキャッチフレーズがあるほどだ。1歩で3mって月面移動か。そのキャッチフレーズどおり、多少ルーズに歩いてもケガをする心配がない。
とはいえ、荷物を担いで1歩で3mずつ進むには、かなりの勢いでホップステップしないとならなさそうだ。比喩的表現なのだろうが、ちょっと盛りすぎじゃなかろうか。と思った。
そこで1歩でどのくらい進めるのかちょっと試してみたくなった。リュックやストックをすべて置いて、身一つで走れば、1歩3m行けるのか?
カミさんに荷物を預け、大きく踏み出してみる。2歩目でスピードが乗り、1歩3mとは言わないまでも2mくらいのホップで体が進んでいく、これはテンションが上がる。
R・田中一郎のように「あはははは」と能天気に笑いながら進む(例えが古すぎる。。。)。
でも、そういうことを思いついた時点で、多分まともな思考回路が働いていなかったんだろうな。。。
ここまで登下山の疲れが足腰に蓄積していることも、走り出したあとどうやって止まるのかも、全く考えないで走り始めてしまった。
加速する体にすぐに足が追い付かなくなる。そうなるとブレーキをかけることもできない。
ヤベ。。。と思うがもうどうすることもできない。このまま平たくなるところまで走り切るわけにもいかない。行くわけがない。
大ケガする前に転ぶしかない、と思い、転ぼうとしたら、よりによって視界の先に人の頭位の石が落ちているのが見えた。
もう体のコントロールは不能。成り行きに任せて転ぶのを待つだけの身である。が、石への直撃だけは避けたい。体のどこかの筋肉の力で軌道修正をしたのか、案外最初からぶつからない位置だったのかよく分からなかったが、次の瞬間頭から一回転して気が付くと体が停まった。
暫く自分に起こったことを頭で整理するのに時間を要したが、とりあえず意識はある。無事なことは分かった。
坂の上の方からカミさんの大丈夫!?という声と笑い声がだんだん近づいてくる。笑うでない。
自分のもとに駆け寄り、例の石に気づいて血相を変えた。自分でもどうなっているか分からなかったが、カミさんのチェックで、流血しているところもなく、幸い石は避けることが出来たようだ。
カミさんも安堵の表情を浮かべた。
この衝撃の瞬間ってどこかで味わったことがあるな、と思ったら、幼稚園の頃にオートバイにはねられた時の感じと同じだった。
膝に力が入らなくて、路肩でしばし放心状態になったが、数分で落ち着きを取り戻したので、立ち上がって下山を続けた。
もちろん慎重に。
道は新五合目まで直滑降状態だ、粗忽がなければもっと景色を堪能して下山できたのに、と思うと残念だ。