鹿児島へ【1】(2006/08/11~08/12)

— 鹿児島の北海道 —

この年の6月に結婚式を済ませたのですが、グアムで式を挙げた関係で、身内と極近しい友人のみで挙式を行って東京に戻ってくると、少ししてカミさんのご両親の親戚関係から、「一度は挨拶にいらっしゃい」とお声がかかったので、ご挨拶を兼ねて出かけてきました。
メンバーは原付夫妻+カミさんの両親の4人。

どこかのエントリでも書いた気がしますが、カミさんの親戚関係は九州南部(主に鹿児島)に多くいるので、今回の披露宴も鹿児島でやることになったのですが、流石に4人で飛行機に乗って鹿児島まで行くと相当痛い出費になってしまうので、マイカーを使う事になりました。

全員免許を持っているのですが、高速を運転できるのは、原付と、カミさんのお父さん(以下お父さん)のみ。
そんな訳で2交代制で行く事になったのですが。。。

高速を使って鹿児島までは片道およそ1600キロ。あちこち出かけている原付も未経験の距離です。
一抹の不安もあるのですが、まぁ、何とかなるでしょうw

という事で、出発日。
例によって、夜出発が基本なので、両親には8時ごろ集合してもらい、10時ごろ原付の車(スパイク)で出発。
東京から名古屋まで順調に走り、岐阜に入る辺りで夜が明けてきました。
それまで両親はリアにしつらえた寝台で仮眠。

養老サービスエリアで力尽きてドライバ交代。
リアに移動して布団にもぐるといつの間にか爆睡していました。
途中目が覚めると、吹田ジャンクションの辺りで渋滞に嵌っていました。
渋滞をお父さんに運転させちゃって申し訳ないなぁ、という気持ちも有りつつ、そのままもう一眠り。。。

20060811_173029

再び気が付くと宮島サービスエリアに到着した所でした。
結構長時間爆睡していたようで、おかげですっかり疲れも取れました。
サービスエリアで夕食を食べて再び原付にドライバ交代。
この辺は初めて運転するエリアで気分が高揚してきます。

福岡を通過して熊本に入る頃、女性軍が温泉に入りたいと言いだしました。
確かにそろそろ風呂に入りたいところです。

熊本で高速を降りて、ナビで近所の温泉を検索し、何軒かヒットした所に電話を掛けると、一軒だけ営業中の温泉がありました。
見つけた温泉は熊本は植木温泉の「藤ノ瀬」
ナビの案内で無事到着。

こじんまりとした小綺麗な建物で、家族風呂があるというので、二つ申し込んで浴室へ向かうと、家族風呂らしいこじんまりとした浴室で浴槽も3人入れば一杯の小ささ。
一行が訪れたときは他の客がおらず、貸しきり状態だったので、思いの他快適な風呂でした。

で、ここで再びドライバチェンジ。
風呂上りだったので、布団に入るとすぐに眠りに付いてしまいました。

・・・・・・

「オイっ!窓開けんかコラッ!!」

突然外から怒鳴り声が聞こえて目を覚ますと、トラックドライバーらしき兄ちゃんがエラい剣幕で窓越しにお父さんに詰め寄っています。
助手席に座っているお母さんが慌てて窓を開けようとするのを「開けなくていい!」と言ってお父さんが静止します。

事故でも起こしたのかと不安になりながら成り行きを見守っていると、

「テメェ!ふざけんなよ!!」

挑発する運ちゃんに、お父さんも窓を小さく開けて、

「そっちが悪いんだろうが!!」

負けじと応戦。
カミさんとお母さんは恐怖で顔が強張っています。
一触即発の緊張状態が続きます。。。

1分ほどにらみ合いが続いた後で、相手は舌打ちしながら窓を強く小突いて車に戻って行きました。
#ガラス割れるっちゅうねん!(><)

相手が走り去ると同時くらいに信号が青に変わって、お父さんが発車。

何が起こったのか一同分からぬままお父さんに何事か尋ねると、はっきりとは分からなかったのですが、どうやらお父さんの車が遅かったのに腹を立てた後ろのトラックがウチの車を煽りだして、お父さんが意識的か無意識にかその挑発に乗ってしまい、スピードを上げたり下げたりを繰り返したためにドライバがキレたらしい、という経緯だったようです。
とりあえず、車が事故った訳ではなさそうだったので、とりあえず一安心。

・・・というか普段はおとなしいお父さん、独りになるとアグレッシブになるタイプなのかしら。。。

そんなちょっとしたハプニングを交えつつ、午前4時過ぎに田舎のある大口という街に到着。
いくらなんでも家に訪ねるには早すぎるという事で、途中のパーキングで一同仮眠。
9時ごろ起床し、目的地までのラストランで、無事にお父さんの実家に到着しました。
都合30時間のロングドライブ。。。
なかなかハードな行軍でした。

— 婿殿は思いがけず鉄分補給 —

実家のおばあちゃんと先に到着していた親戚の皆さんに迎えられご挨拶。
お茶を頂いてひとしきり休憩した後、一服を兼ねて周りの景色を見てみようと外に出ると、家の前から鉄道の線路跡風の構造物見えました。

20060812_094807

原付は大口という街の土地勘が無かったので、この辺で廃止になった鉄道路線が有ったかどうか、全く想像が出来ず、もしかしたら貨物線でも通っていたのかなぁ、くらいに思って、家に戻って親戚のおばさんに聞いてみると、

「あそこには昔、山野線が通っていたのよ。すぐ脇が駅だから見てきたら?」

というので、カミさんを引き連れて散策してみる事に。
強い日差しの照りつける中、てくてく歩いて、線路の盛土の脇までやってきました。
この辺にあったという駅の構造物はそこからは見つけられず、駅への入り口となる通路も見つかりません。

20060812_095456

仕方ないので、脇から盛土に登って見ると、すぐにホームが見えました。
ホームの構造物はありましたが、ホーム上の構造物は何も見つかりません。

20060812_095758

線路やバラストは撤去されていて、ちょっとした獣道のようになっています。
地元の車が通行する事があるのか、轍のようになっていました。
軽くうろついて見ましたが、それ以外にこれといって発見できるものも無く、とりあえず下に降りる事に。

ホームに立つと、下へ降りる路地が見つかったので、そこから降りてみると、途中の民家に、

20060812_100027

朽ち果てた西山野駅の駅名票がありました。
ここは昭和63年に廃線になったJR山野線の西山野駅の跡地でした。

ちなみに東京に戻ってからWikiで調べてみると、山野線は熊本県の水俣から鹿児島県の栗野を結んでいた路線で、途中の薩摩大口からは同様に廃止となった川内へ向かう宮之城線が分岐していて、薩摩大口には機関区も設置されていたそうです。
大口はちょっとした鉄道の街だったようです。

JRの路線名は一般に始発駅と終着駅の頭文字を取った路線名が付けられる事が多く、それで行くと「栗水(りっすい)線」「水栗(すいりつ?)線」となりそうなものです。
あるいは、沿線の大きな町の名前を取って「大口線」となってもおかしくないのですが、なぜか、途中駅に過ぎない山野の名前が使われています。
これは当初開業した区間が栗野~山野間で路線名を「山野軽便線」と言った為のようです。

少し話が逸れますが、この大口という街、鹿児島県の西北部に位置し、比較的標高が高く盆地になっているので、夏は暑く冬は寒い気候なのだそうです。
冬には雪もよく降り、およそ鹿児島らしくない気候とのこと。

親戚の方は、それを「鹿児島の北海道」と比喩していました。

#大口市は2008年に隣の菱刈町と合併して「伊佐市」となりましたが、このエントリでは便宜上大口市で表記します。

思いがけず鉄分補給が出来て満足して戻ってくると、長旅で疲れているだろうから少し休みなさい、と奥の和室に案内されました。
開け放された窓から南国九州とは思えない涼しい風が吹いてきて、すぐに爆睡してしまいました。

一時間程で起こされると、なんだかみんな出かける準備をしていました。
どこに行くのかと思ったら、ご近所に挨拶回りに行くと言っています。
こちらの人たちは、ご近所の皆さんにもご挨拶するのかと思いきや、どうもご近所に沢山居る親戚への挨拶らしいです。

玄関から声を掛けると、そこの家の奥様やお婆様が奥から出てくるのですが、女性陣はみんな一様に正座して三つ指付いて恭しく頭を下げてくるので、なんとなく畏まって緊張してしまいます。。。

で、お母さんが二人を紹介してくれるのですが、その時の言葉が気になる。。。

「この人は○○(カミさんの名前)のお婿さんです。」

その時は婿養子に入ったつもりは無いんだが。。。と、言われる度に気持ちの隅っこの方が引っかかっていたのですが、後で聞いてみると婿養子という意味は無く、こちらでは娘の親から見て、その夫のことを大概「婿」と呼んでいるらしいです。
ちょっとした文化の違いに早速戸惑っています。

— これが鹿児島の流しそうめんじゃぁ! —

そんな訳で、一通り挨拶を済ませて家に戻るとお昼時で、食事に行く事になりました。
この辺の人たちがよく利用しているという流しそうめんの店に行くのだといいます。

店の名前は奈加夢羅(なかむら)」 といい、流しそうめんのほか炭焼き料理なども出している店なのだそうです。
席に案内されると、店の脇を流れる川の上に張り出したテラスで、キャットウォークのような網目の下には流れる川が見えます。

流しそうめんと聞いて、半分に割った竹を流れるそうめんを想像していたのですが、その竹が全く見当たらず、いつ出されるのかなと思っていると、おもむろに目の前の溝に水が湧き出して、ぐるぐると回転し始めました。

いやいや、これはなかなか風流な演出だなぁ、と変な感心をしていたら、そうめんが運ばれてきました。
竹はまだかー!と思っているとみんなはおもむろにその水にそうめんを流し始めました。

20060812_125327

なんと!

鹿児島で流しそうめんといえばこれを指すらしく、どこでもこういう仕組みなのだそうです。
確かに、竹に流していたら、麺を取りそこなうと下に落ちてしまうので、こちらの方が合理的です。

炭火焼きも頼んでもらいました。
それとは別に鳥刺しなるものも出てきました。
その名の通り鳥の刺身で、そのまま食べられるといいます。
これも九州地方で多く食べられているそうで、にんにく醤油で食べます。

新鮮な鶏肉じゃないと刺身に出来ない、という事なのですが、ひとくち口にしてみると、しっかりとした歯ごたえでこれは旨い。
にんにく醤油の醤油も九州地方では割と一般的らしい甘い醤油になっています。

甘い醤油といいますが、甘口醤油のことではなく、関東ではモチや団子などに付ける甘辛醤油のような甘い醤油で、刺身の醤油として食べるのは新鮮な驚きです。

おばあちゃんはお達者で結構いいお年を召しているから、ということで料理には手を付けず、家から持ってきたおにぎりと梅干を食べていました。
このおばあちゃんが、なかなかのおとぼけっぷりでお茶目さんです。

そんなこんなで、家まで戻ってきて晩御飯済ませて風呂入って。。。
おばあちゃんはしきりに昔話をしてくれて、それは面白いのですが、同じ話を何度も繰り返すのが玉にキズw

いわく、
「山野まで汽車に乗って(学校の?)先生がやってきた時、こんな猿が出るような田舎によくお越しになった。(意訳)」 と。

多分山野線の跡地を見てきた事を話したからだと思うのですが。。。

おばあちゃんは寝る時間になったという事で寝室へ。
親戚の一人がエステの資格を持っているとかで、カミさんも披露宴の前に施術してもらう事に。

一時間程で作業が完了して、ツルツルになった肌にご満悦の様子。
そんなこんなで就寝の時間に。

明日はいよいよ披露宴だ。

Posted by gen_charly